2024年04月19日( 金 )

「コロナ恐慌革命」以降どうなるのか(6)~中洲の復興はあり得るか(後)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

「コロナ蔓延」前には戻れない

 少なくともこの3年という時間軸においては、これまでのような「中洲の魅力」復活はあり得ない。理由(1)コロナ蔓延によって「中洲離れ」が強く定着した。ゼネコンの営業売上トップの佐賀は、しみじみ語る。「いやぁ、夜の中洲に行くという生活パターンから解放されて“サバサバ”した。家で時間を費やすことの大切さを味わうと中洲通いが億劫になった。今後、自粛が解けたとしても、もう中洲には行かない。出かけるとしても『居酒屋どまり』だろう」。

 中洲で月に300万円を支払っていたのが“ストップ”した平尾は、20年間で7億円を遊興に費やした。しかし、会社はいまでも盤石である。コロナに「飲みこまれる」こともないが、平尾は「いやぁ、若さを維持できたのも“中洲通いのおかげ”と感謝している。しかし、『成仏間近』となり、寿命に関する勉強も必要だなと悟りだした。さらば!中洲」と語る。このように「志向の大激変」が第一の理由。

 志向と経済力が絡んだ理由(2)。前回、「中洲の女性たちが野心をもって独立するケースが少ない」と指摘した。中洲を訪れる客も客層が若返らなければいけないのだが、その傾向は弱い。若い世代は中洲に魅力を抱かないようだ。また、中洲に通うには「財力」が必要なのは明白。利益を出している若手経営者の企業が少ないことが最大の理由(福岡にITなど、利益をあげるベンチャー企業がたくさんあれば話は別)

 (3)中洲の常連客を業種別にみると建設業と不動産業が多い。しかし、これらの業界は、これから「冬支度」に突入する。だから、これまでのような気前の良い金づかいは期待できなくなる。(4)地場のトップ企業も業績が極端に落ち込み、交際費の削減が進むだろうから、幹部たちの「中洲通い」は減るだろう。(5)東京からの客も同様の理由により、中洲通いの増加は期待できない。上記の理由から、今年12月の中洲全体の売上は前年対比50%が限度であると見通すのである。

中洲の名門企業の没落・倒産の可能性あり

 戦後(1945年8月以降)、中洲の復興が始まった。当初は食の確保に精一杯だったため、中洲は食市場からスタートした。その牽引者の一人が辛子明太子の「ふくや」だった。ご飯に「めんたいこ」を添えて「1日の生」を保ったのである。

 「色恋・遊興の場」・中洲へと変貌しだしたのは昭和25(1950)年ごろからだと言われる。朝鮮戦争による特需がきっかけだった。

 それ以降、中洲を代表する勝利者たちの顔ぶれは変遷していく。最近の例では2014年12月、山本観光が破産開始決定を行った。そのビルを買ったのが新日本製薬のオーナーだった。

 中洲1丁目を中心とした「ソープランドゾーン」がある。この場所の「ドン」たちの栄枯盛衰も激しい。コロナ恐慌により、中洲のクラブの廃業・倒産という淘汰だけが進むのではない。中洲のあらゆる業種に消滅の可能性がある。「えっ、あの会社がなくなったの」という驚くべき事態に今後直面するであろう。

 筆者がお世話になったAという経営者がいる。中洲の名を全国に轟かせた貢献者の一人として認知されている。このAの成功伝をまとめようと計画を練っているのだが、現在の状況を考えると、残念ながら「コロナにつぶされてしまった」という否定的な評価で固まる確率が高まっている。それを食い止めるには、Aが「最後の現場復帰」するしか方策がない。

 Aの関連会社の社長がコロナに発症したと聞き、4月2日、「明日、昼間お会いできる時間はございませんでしょうか。コロナの取材でございます」とメールした。回答は下記の通り。「すみません。実は私の父、妻の母を2月に亡くしておりまして、四十九日などの関係でお休みを頂いており、福岡にはおりません。私の実家が松山で妻は京都です」。

 長年、取材していれば、このコメントが「ウソ」であることは一目瞭然である。こちらは「カチン」ときて、大いに“燃えて”取材に突入することにした。仮にAに連絡するとする。Aは必ず「すぐに会いたい」という申し出をしてくるであろう。「実はこういうことで社員にコロナ感染者がでた」という率直な説明から始まり、次第に相手のペースに引き込まれていく。結果的に話を聞くことで終わってしまう。「大物の人たらし」とはこういう人物のことだ。小物は「ウソ」で固めて逃げようとする習性がある。

 話は続く。前述の関連会社社長は25日の土曜日、ゴルフに興じていた。Aの場合、社員であれ己であれ、コロナに感染していたならば、世間体を意識してゴルフ場に行くのを中止するのは間違いない。

 「Aオーナー、あなたの有終の美を飾る勝負の時期ですぞ!」最後の陣頭指揮をとられることを進言いたします。

※登場人物はすべて仮名です

(この項、了)
(つづく)

(5)
(7)

関連記事