2024年04月25日( 木 )

「コロナ恐慌革命」以降どうなるのか(5)~中洲の復興はあり得るか(前)

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 前号に付記する。三越伊勢丹ホールディングスは、20年3月期決算の見通しについて、当期利益70億円の黒字予想だったが、一転して110億円の赤字になる見込みだと発表した。日本経済新聞によると1月から3月までの最後の四半期で50~100億円の赤字になった模様。売上は前年同月比で1月7%、2月16%、3月は40%近い減収となっていると報じている。この情報に基づいて予想すると4月の売上は半減し、5月以降、3カ月位は前年同期比50%減で推移するのではないだろうか。

家賃が払えない

 「コロナ恐慌」が始まりだした3月から中洲で重点的に取材を行ってきた。取材の過程において、コロナの蔓延が収まった時、「中洲は復活するのか?」という議論が沸騰した。中洲で長きにわたり従事している人ほど、「中洲は不滅、再生できる」と断言していたが、本音は「不安を払拭するために自らに言い聞かせているのだな」と感じた。

 結論を下そう。「今年12月の売上は前年同月比で、健闘したとしても50%程度である」それを見越したうえで対策を練ることが賢明と思われる。

 戦後(1945年8月以降)、中洲界隈において、テナントが家賃を払えないという最悪の事態があっただろうか!なかったはずだ。今回は自粛・自主規制による営業ストップとなったのである。収入がなければ家賃を払うことは不可能なのは「自明の理」だ。
 管理会社の仲介により、貸主と借主の交渉を行う。家主の反応はマチマチで「よっしゃ!半額にしよう」という剛毅な家主もいれば、「うちは20%の値引きが限度」と泣きをいれる業者もいる。

 「20%が限度」とうろたえる業者は、おそらく「倒産予備軍」といえる。「中洲でビルを持っている家主が倒産する」など、誰も想像できなかっただろう(お金持ちとみられていたから)。あるビル管理会社の経営者は最悪の事態を想定していた。「5月までは持ちこたえられると思うが、6月まで自粛が続いたら、家賃の支払いが不可能になる。また、『夜逃げ』が続出するだろう。そうなると我々、管理業者も収入がなくなり、『アウト』になるだろう」と想像を絶する事態の発生を予想している。

 加えて老齢化し、これまでの“蓄え”がある中洲の「ママ」たちは、「この際」と考え、引退の道を選ぶだろう。「成功の第一人者たち」が去った後、ポストが空く。しかし、そこに割って入ろうとする気迫を持ち、世代交替を促すような「強い女性」が存在しない。現代社会の風潮として、独立しようとする野望を持った「ママ予備軍」は減る傾向にあるので、一度、空き家になった店は簡単には埋まらないのでは、と懸念される。借主・貸主・管理業者とも、それぞれが運命共同体なのだ。「中洲が復活してこそ共に繁栄できる時代」には容易に戻れない。

「色恋のドラマ」が一転、砂漠の「ハゲタカ」化へ

 中洲で働く女性たちの数は定かではないが、一説では2万人くらいいるという。美女たちにとって、「稼ぐ」という意味では、中洲は魅力的な社交場と言える。“色恋”を求め、男たちは中洲に足をのばす。「迎え撃つ」女性たちは、男の心をつかむべく「アプローチ」する。その“色恋”で勝利した女性たちのなかには正妻の座をつかんだ者もいるし、クラブのママになるための資金を得た者もいる。

 しかし、これら成功者の数よりも、失敗した女性たちの方が当然多い。色恋に狂い、破産した男たちも枚挙にいとまがない。九州一の企業で社長候補といわれていた男は、あるママにほれ込み、正妻と離婚して再婚した。この「汚点」により、彼は社長候補から外れてしまう。こうした悲喜こもごものドラマが毎晩、展開される場所が中洲であった。

 ところが営業ストップになり、中洲で働く女性たちの収入が途絶えると、卑しい男たちが“ハゲタカ”のごとく、食事に誘いにくる。賢明な女性たちは、男の「いやらしい魂胆」を見抜いて断る。一方、金に困った女たちは、食事の後、はした金で身を売る。「色恋のドラマ」ではない。“ハゲタカ”にいいようにあしらわれているに過ぎない。中洲は一晩にして「砂漠化」してしまった。

 中洲の女性たちを救済できる男はどんな人物か、中洲の関係者たちに聞いてみた。「一人の女性にマンションの家賃と月の『お手当代』30万円を払える男たちは2,000人位いるかね?」と質問を投げかけてみたところ、「600~700人位だろう」という厳しい答えが返ってきた。

 中洲の女性たちには本当に「厳しい現実」が立ちはだかっている。「中洲よ、早くよみがえれ!」と叫んでも好転する可能性は薄い。

(つづく)

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