2024年04月20日( 土 )

公園まちづくり制度で芝公園はどう変わるか?(後)

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 芝公園(東京都港区)は、1873年に開園した日本最古の公園の1つ。もともとの芝公園の敷地は徳川家の菩提寺である増上寺境内だったが、戦後の政教分離、西武グループの創業者堤康次郎氏の策謀などにより、未供用区域である増上寺や東京プリンスホテルが公園の中心に立地し、公園がその周りを取り囲むユニークなカタチの公園になった。都は今年2月、そんな芝公園の再生に向け、「芝公園を核としたまちづくり構想」を策定。公園の将来像として「江戸の杜」を掲げ、「公園まちづくり制度」を活用し、民間事業者を主体とした新たな公園、都市空間づくりを進めようとしている。

芝公園のための制度

 歴史的建造物や自然、現代的なホテルが混在する芝公園は、その点においてユニークな存在である反面、公園としての一体性には欠ける。公園のど真ん中を民有地が占め、その周りを公園が取り囲むゾーニングも不自然だ。民間ホテルのために周りに公園があるような印象は拭えない。増上寺、プリンスホテルが立地するエリアなどは、都市公園としては未供用区域のまま。その面積は約15haにも上る。

 未供用区域とは、都市公園としての都市計画決定はなされたが、民有地のままで一般に開放されていないエリアを指す。東京都は未供用区域の整備促進のため、13年に「公園まちづくり制度」を創設。民間活力の導入により、公園と周辺まちづくりの両立(公園の一体性の確保)に乗り出した。同制度の対象となるのは、センター・コア・エリア内(首都高速中央環状線の内側)にあり、都市計画決定から50年以上が経過した未供用区域面積が2ha以上の公園。制度の運用は、民間事業者による提案を基本とし、必要に応じて、都市計画などの変更も行うことになる。同制度は、芝公園のために設置されたのではないかと思えるほど、適用要件がピッタリ合致する。実現すれば、同制度初適用となる。なお、明治神宮外苑でも同制度の活用準備が進んでいる。

 ちなみに、公園まちづくり制度は都市計画法上の制度であり、周辺のまちづくりと公園を一体的に整備するための制度だ。Park-PFI(公募設置管理制度)は、都市公園法に基づく制度であり、公園のみを対象とし、周辺のまちづくりは関係ない。

 西武グループでは、27年のリニア中央新幹線開業を1つのメドにしているようだが、施設規模や機能、スケジュールなどは今のところ未定だ。ただし、公園全体とその周辺までも巻き込んだ大規模リニューアルの流れのなかで、単なるホテル建替えを行うとは考えにくい。同制度の基本方針には、「公共施設等の都市基盤整備と優良な建築物等の一体的整備により、土地の合理的かつ健全な高度利用が図られる計画であること」との文言があるからだ。民間事業者――つまり西武グループが、商業やオフィス機能などを備えた複合ビルを提案する可能性はある。どのような案が出てくるか楽しみだ。再び民間事業者の“エゴ丸出し”の上モノができることもないだろう。

まちづくり方針図(構想より引用)

(了)

【大石 恭正】

(前)

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