2024年04月19日( 金 )

公園まちづくり制度で芝公園はどう変わるか?(前)

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 芝公園(東京都港区)は、1873年に開園した日本最古の公園の1つ。もともとの芝公園の敷地は徳川家の菩提寺である増上寺境内だったが、戦後の政教分離、西武グループの創業者堤康次郎氏の策謀などにより、未供用区域である増上寺や東京プリンスホテルが公園の中心に立地し、公園がその周りを取り囲むユニークなカタチの公園になった。都は今年2月、そんな芝公園の再生に向け、「芝公園を核としたまちづくり構想」を策定。公園の将来像として「江戸の杜」を掲げ、「公園まちづくり制度」を活用し、民間事業者を主体とした新たな公園、都市空間づくりを進めようとしている。

ユニークな景観を形成

 芝公園は太政官布達により、上野恩賜公園とともに日本初の公園として開園した。もともとは増上寺境内の敷地を公園としていたが、戦後に政教分離の観点から寺社敷地は除却され、増上寺を取り囲むエリアが都市公園に設定された。現在、約33haの園内には、徳川家の菩提寺である増上寺とそれを取り巻く武蔵野崖線の豊かな緑、都内最大級の前方後円墳(芝丸山古墳)などの江戸時代などの遺構が残る一方で、東京プリンスホテルなどの現代的な建造物も立地する。公園近くにそびえ立つ東京タワーも相まって、ユニークな景観を形成している。

 都は今年2月、「芝公園を核としたまちづくり構想」を策定。芝公園を「江戸の杜」と位置づけ、江戸東京文化を体感できる空間に再生するほか、公園を核とした歩行者ネットワークなど、周辺のまちづくりを進めることを打ち出した。これを実現するためのスキームとして、都が2013年に創設した「公園まちづくり制度」の活用を予定している。まちづくりの方針では、江戸東京の資源の再生や活用などにより、国際的な観光・交流拠点の形成を目指す。具体的には、カフェの整備、蓮池の再生などを行うほか、ホテルや商業施設、オフィス、住宅などを導入する。

 市街地環境の向上も図る。公園を結ぶ参道空間や歩行者道路などを整備するほか、地下鉄とのアクセス向上、防災トイレなどを整備し、地域防災の向上も進める。増上寺や東京プリンスホテルを始め、東京タワーなどとも連携したエリアマネジメントが実施される予定だ。
 芝公園内のレガシーを再生しつつ、公園周辺との一体化を図る。構想が掲げる芝公園の将来像は、芝公園の魅力をさらに向上させる可能性に満ちたものだ。「すばらしい」としかいえない。ただ、気になるのは、“なぜこのタイミング”で、都は芝公園の再生に乗り出そうとしているのかだ。

芝公園(写真提供:東京都)

発端は東プリの老朽化

 結論からいえば、都が芝公園の再生に乗り出したのは、東京プリンスホテルの建替えの動きがあったからだ。

 東京プリンスホテルの開業は、東京オリンピック開催年の1964年。西武グループの創業者である堤康次郎氏が徳川家から増上寺境内の墓地を買収し、そこに建築された。なお、堤氏はホテル開業の数カ月前に他界している。

 ホテル開業から50年が経過し、設備の老朽化や陳腐化が問題になっていた。西武グループは16年にホテルの建替え、再開発する方針を公表。17年には、先行的にロビーやレストランの一部改修を行っている。ホテル建替え自体は不可能でも何でもないが、民有地とはいえ、都市計画上は公園内のため、着手するためには都市計画法上の許可が必要となり、規模や構造上の制限を受ける場合もあるのだ。

 05年には、都市計画法59条第4項に基づく特許事業により、やはり西武グループが東京プリンスホテルパークタワー(地上30階、高さ104m)を開業した。特許事業とは、都道府県知事の認可を受けた民間事業者が行う都市計画事業で、公園の整備方針の範囲内で、民間事業者に施行を委ねる制度。整備に際しては、建ぺい率が事業面積の「100分の20以内」、緑地などが事業面積の「100分の50以上」などの条件があり、管理運営に際しては、都との協議が必要になる。なお、別事業のため、今回の構想とは関係ない。

(つづく)

【大石 恭正】

(後)

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