【筑後川河川整備】恵まれた土壌と治水の歴史 「フルーツ王国」うきは市の取り組み
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2020年05月03日 07:00

【筑後川河川整備】恵まれた土壌と治水の歴史 「フルーツ王国」うきは市の取り組み

うきは市長 高木 典雄 氏

 水と自然に恵まれた福岡県うきは市は、経済や産業においても筑後川とともに発展してきたまちだ。耳納連山の山麓に広がり、「うきはテロワール」と称する独特の地形とその活用、防災への取り組みについて、国土交通省出身で2期にわたって市長を務める高木典雄氏に詳しく聞いた。

(聞き手:当社代表・児玉 直)

「うきはテロワール」

 ――防災を語るうえで、まずは地域の概要から教えてください。

高木 典雄 氏

 高木市長 筑後川は全長143kmの一級河川で、阿蘇の瀬の本高原に源流を有しています。大分県との県境に位置するうきは市は、古くは日本書紀に記述が出てくるほどの歴史があります。大分県日田市・夜明地区あたりを起点に、国道210号線が久留米から大分まで、県道52号八女香春線という主要地方道が南北に、香春町から小倉までは国道322号線が結んでいます。そのほかに、大分県中津市から熊本県阿蘇市を結ぶ国道212号線、大分県宇佐市を起点に熊本まで伸びる国道387号線が走ることからも、交通の要衝として栄えてきたことがわかります。また、昔はうきはから博多湾が見えるほど見通しが良かったようで、“博多の奥の院”とも表現できるでしょう。

 ――地形の特徴は。

 高木市長 うきは市は、耳納連山と阿蘇山を源流とする筑後川水系から良質な地下水が豊富に湧き出ています。この水の恵みが豊かな自然を育んで農業が発展し、とくに果樹栽培においては「フルーツ王国うきは」と呼ばれるほどになりました。その要因を科学的に証明するために、学術的な側面からさまざまな研究調査を実施しました。結果、地形や気候、土壌、風、水、雨、地理において世界でも稀有な土地であることが判明したのです。この7大自然要素に恵まれたうきはの土地を「うきはテロワール」と名付け、基幹産業である農業で「うきはブランド」を幅広く発信していきたいと考えています。

 地質学的には、火山活動や氾濫を繰り返し、筑後川は河道を変えながらミネラル豊富な豊かな土壌が生まれたといえます。耳納連山の麓には、降雨により山から運ばれてきた土砂が扇状に堆積してできた「複合扇状地」が約20kmにわたって続いています。日当たりが良く、水はけと保水性に優れたこの地形は国内でも珍しく、これほどの規模は全国的にも類を見ません。

筑後川治水の歴史

 ――過去の豪雨では、かなり大きな被害が出ました。

 高木市長 12年と17年、過去2回の九州北部豪雨では、市内を流れる巨瀬川や隈上川が氾濫危険水位を突破する危機的状況に陥り、全1万1,000世帯に避難勧告が発令されました。河川沿いでは護岸の崩落や道路損壊、橋梁の落橋などの被害が発生。山間部においては土砂災害や浸水が起こり、道路網が寸断されて甚大な被害が出ました。12年というと、実は豪雨発生日の翌日である7月15日が私の市長1期目の着任日。まさに混乱の最中の就任で、その期は災害対応と復旧事業に奔走した4年間でした。

 大雨・洪水警報発令後は、市民の安全確保のための交通誘導や避難誘導に徹しました。また、浮羽医師会管内10医療機関33名による医療チームを結成し、避難住民の健康調査を実施しました。山間部ではとくに被害が大きく、二次災害の防止と孤立集落解消のために151件の応急復旧工事を進めました。

 ――うきはは古くから治水事業が盛んだと聞きました。

 高木市長 1664年、地元の5人の庄屋が私財を投じて大石長野水道を開削したり、また1673年、大庄屋であった田代重栄・重仍親子が、同じく私財を投じて現在の浮羽町三春に全長約2kmにもおよぶ水路トンネル「袋野隧道」を掘り、筑後川の水を引き入れたのは有名な話です。その後、利水技術の発達によって水田が増え、うきはでは製粉・製麺業を主として農作物の加工・販売が広がりました。宿場町としても栄えていた吉井地区では、産業の発展に次いで金融業が盛んになり、日本銀行と時を同じくして吉井銀行が設立されます。このように、うきはの歴史は筑後川とその治水の歴史と深く結びついているのです。

ハザードマップの作成・配布

 ――今後、どのように防災対策を進める予定ですか。

 高木市長 過去の経験と調査研究によって集積した科学的データを基に、防災対策を進めることがこれからのテーマです。記録的豪雨による河川の氾濫や土砂災害に備えて、うきは市では15年4月に改訂したばかりの総合防災マップを、想定し得る最大規模に更新された浸水想定区域に改め、新たに指定された土砂災害警戒区域を追加し策定した総合防災マップに刷新し、昨年10月に全世帯に配布しました。

 今年4月には、過去の災害の記録を記した古文書や災害の記念碑を、冊子「災害は歴史に学び逃げ遅れゼロ」としてまとめて全世帯に配布し、“同じ場所で同じような災害が起こる恐れがある”として、市民に注意を喚起したところです。

 また、災害の軽減のためには、近隣自治体との協力も欠かせません。水害のリスクや防災対策についての情報を互いに共有し、災害時に備えて地域単位で対策を講じるとともに、広域的に連携して災害に備える必要があると考えています。

【文・構成:安永 真由】

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