2024年04月20日( 土 )

【筑後川河川整備】「河川整備はまちの歴史」 久留米の水害対策と市街地開発

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

久留米市長 大久保 勉 氏

 大手銀行、外資系証券会社を経て、2004年から2期・12年にわたって参議院議員を経験し、そのなかで財務副大臣(12年)、参議院経済産業委員長(13・14年)を務め、18年1月に久留米市長に就任した大久保勉氏。筑後川の水害対策についてどう考えるのか。市長就任3年目を迎えた同氏に、これまでの実績や今後の展望、そして筑後川の水害対策についてどう考えているのか、話を聞いた。

(聞き手:当社代表・児玉 直)

ものづくりのまち

 ――最近のニュースといえば、(株)資生堂の工場誘致の成功でしょう。

大久保 勉 氏

 大久保市長(以下、大久保) 福岡市から見れば、久留米市は郊外の一地方都市ですが、東京からすると福岡市も久留米市も同じような地方都市です。空港や高速道路インターからのアクセス面を考えても、久留米市には十分な地の利があります。そうしたなかで、昨年決まった資生堂の工場誘致は、大きな成果だったと捉えています。従来は複数に分かれていた役所側の窓口を一本化するなど、企業の動きに合わせて市の体制を柔軟に変えた点については、とくに評価を受けました。

 ここ数年、製造業は「メイド・イン・ジャパン」へ回帰する動きが顕著です。長い歴史のなかで久留米市が培ってきたものづくりの精神は、そうした動きのなかでさらに大きな価値を発揮すると考えています。

 ――もともと「ものづくり」の文化が根付いた都市ですね。

 大久保市長 (株)ブリヂストンなどゴム3社に鍛えられた久留米には、非常に高い技術力をもった中小企業が集積しています。地の利に加え、国内回帰の動きは久留米市にとって有利だと捉えています。工場誘致のほか、人材派遣業界最大手のパーソルテンプスタッフ(株)など、コールセンター誘致も進んでいます。事務職系の求人の増加により、優秀な若手人材のマッチングが加速していくでしょう。

 中小企業の優れた技術力は、久留米市の大きな財産であり、これからのまちづくりにも重要な役割をはたすと考えています。久留米を代表するシューズメーカー・(株)ムーンスターは、「MADE IN KURUME」というブランド・プロジェクトで、久留米を世界に発信しています。市では、ゴム生産の歴史や企業の発展を1つのストーリーにまとめてポスターやパンフレットを作成し、小売店などで配布、掲示してもらいました。「スニーカーの街」「ウオーキングシューズの街」を商標登録するなど、ブランディングでまちの魅力を発信することが、ほかの都市との差別化につながり、価値を生み出すと考えているからです。

新たな避難基準を策定

 ――筑後川の防災については、いかがでしょうか。

久留米市役所

 大久保市長 久留米市は、河川の氾濫に頭を悩ませてきたまちです。平成30年7月豪雨でも、避難情報を出す前に中小河川の氾濫による床上・床下浸水、道路の冠水が相次いで発生し、とくに池町川、陣屋川、下弓削川では「内水氾濫」により多くの被害が出ました。

 それまで、大雨時に避難情報を出すための水位観測の対象は筑後川のみでしたが、災害後に市水防協議会を開き、筑後川に流れ込む12の中小河川の水位を避難情報の判断基準に追加しました。また、市全体を5つのエリアに分け、水害時の避難所を一部見直しました。緊急速報メールや防災ラジオ、SNSなどで避難情報を発信するほか、筑後川河川事務所の「防災ポータルサイト」では河川の水位や水門の開閉情報などを提供しています。

 さらに、国・県・市が管轄する河川では、土砂掘削や樹木伐採を実施し、下弓削川や池町川、金丸川においては、貯留施設や雨水幹線の整備を計画しています。

 昔から“暴れ川”と呼ばれてきたように、筑後川周辺のまちづくりは水との戦いの歴史です。河川の整備こそが、まちの歴史だともいえます。洪水をいかに抑えるかは、今後も非常に重要な課題だと考えています。

久留米ビッグバン

 ――これからのまちづくりについてビジョンを聞かせてください。

 大久保市長 「都市づくりプロジェクト」で検討した土地利用の行動計画では、JR・西鉄など11駅の周辺地域で規制緩和による居住促進を進めています。また、百貨店や商店などの物販店がメインだった中心街はオフィスビルが増加し、今まさに都市構造が変化しているといえるでしょう。そうしたときに重要になるのが、子育て世代の暮らしやすさや若い世代の働きやすさです。福祉政策はもちろん、企業と連携しながら、いかにして多様で柔軟な労働の場を提供できるかがカギとなります。

 北部九州の中核都市として、西日本の一拠点として、これからも企業誘致や総合的・戦略的な土地利用を進め、地の利を生かしたまちづくりを推進し、いわば“久留米ビッグバン”につなげていきたいと考えています。企業と連携しながら子育て世代や若い世代が求める労働環境を整備して、新しい久留米市を育てていきたいですね。

【文・構成:安永 真由】

関連記事