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2020年05月18日 16:34

【縄文道通信第32号】危機とサバイバル~縄文道と自然尊重

(一社)縄文道研究所

 NetIBNewsでは、(一社)縄文道研究所の「縄文道通信」を掲載していく。今回は第32号の記事を紹介。

 世界を危機に陥れているパンデミックを、人類的に捉えると今までの市場原理主義、経済万能主義、過度な競争により、人間の命を奪い、さらに自然を破壊してきた、すべての負のツケを精算するための試練を人類に課しているのではないかとの見解を示す識者もいる。

 人類が原点に立ち返り、今までのシステムの根本的点検を強いられていることから「世直しコレラ」と表現する人もいる。またコロナの問題が収束した後の来たるべき時代を、「post corona」や「after corona」で、どのような時代が到来するか予測する未来予測も出始めている。中には「post」や「after」は過去のシステムの延長で未来を予測しているが、このパンデミックは人類が経験したことのない現象で、先が不透明だが、まったく次元の異なる世界を見つめてゆく展開なので「beyond corona」 が適切な表現ではと示唆する識者もいる。

 縄文道の観点からは、「beyond corona」の世界は、人類の原点回帰、自然尊重、平和尊重、母性尊重の時代に転換するのではと予感させる。
 縄文時代がなぜ、長期に安定した社会を形成できたのか、さまざまな学者の見解を1つの言葉にまとめると「自然と共生し循環の思想の基に生活を形成してきたからだ」との結論だ。

 日本の考古学者で、多くの著作を著し、世界的にも著名な、国学院大学名誉教授・小林達雄先生は食料の循環論が四季に従って確立されてきたことを挙げている。『縄文文化が日本人の未来を拓く』(徳間書店、154ページ~190ページ参照)

 それは食糧事情を安定的に導いた「縄文カレンダー」という考えだ。縄文人は哺乳動物、鳥類、昆虫類・海獣、魚類、貝類・海藻、植物、その他、塩と実に多種多様な食材を獲得し、加工して食していた。
 常に食材の四季、旬を理解して、四季の循環で賢く生き抜いてきた。
春に ノビル、ワラビ、ゼンマイ、トド、アザラシ、貝類
夏に イワシ、カツオ、ふぐ、タイ  魚類
秋に 野ぶどう、くるみ どんぐり、 サケ
冬に イノシシ、たぬき、ムササビ、うさぎ
と実に多種多様な食材を獲得し、食してきた。

 土器を制作し、貝塚を形成、アク抜きをして、可食植物の管理、イノシシの飼育など、知恵も働かせて長期に安定的に食材を確保してきた。
 人間にとって最重要な食の確保において、いわば自然の摂理を知り抜き、共生してきた循環思想が、長期にわたって形成された。

 さらに縄文人の自然への畏怖は、多くの地震、台風、洪水、火山噴火などにも遭遇したことから、自然への畏敬、尊重は、現代人よりも強かったかもしれない。このことは、縄文人の死生観に現れている。

 『日本人の自然観』(河出書房新社、1995年出版)の書籍で故・梅原猛先生は以下のように述べている。

 アイヌ人に死んだらどこに行くのかと聞くと、「それはわかっている。あの世にゆくんだ。あの世は天のところにあるらしい。あの世にゆくと死んだ人が待っているらしい。死んだおとうさんや、おかあさんがそこで待っている。いいことをした人も悪いことをした人もあの世にゆける。そしてあの世から又帰ってくる」
 梅原猛先生は、縄文人の遺伝子が約60%残っているアイヌ人の死生観は「生きている人は死ぬけれど、又世の中に帰ってくる」という再生の考えを継承してきていると述べている。

 縄文人の世界観を整理すると、まさに自然との共生による循環思想、自然への脅威への畏怖、尊敬の念、そして命の再生ということになる。

 日本人は縄文的考えを源流として、又基層にもちながら神道につながり、仏教を取り入れ、自然観、死生観を形成してきた。30号で述べた母性尊重の文化も根底に流れている。
 大陸文明の父性文明とは大きく異なることは、前述の梅原猛先生や小林達夫先生も指摘しているところだ。

 狩猟文明でも、日本は海に囲まれていたために外敵がなく安全であった。また、そのために肉類の摂取量より魚類、貝類、海藻類、堅果類、植物の摂取量が多く、魚と肉のバランスを取っていた。

 さらに小林達夫先生は縄文人の空間認識が大陸文明と異なると分析している。
 それは「ムラ=ムラのウチ」「ムラのソト=ハラ」で、さらにその先にソラとウミが展開する。ハラはドングリ、クリ、クルミなどの採集にあたって、四季の循環に従い大事に育て、採集してきたのでハラを大切にしてきた。
 ところが大陸文明は移動型の狩猟文明で父性型である。大陸主要文明は土地を侵略し、略奪してきた。さらに森林を燃料使用のため伐採し、自らの文明を破壊したのだ。要するに縄文人は空間認識も自然との共生を重視していた。

 日本は四方・海に囲まれ、現在も国土の約70%が照葉樹林を中心とした森林を有し、そして四季に恵まれた山紫水明の国だ。
 この風土が1万4000年にもわたる縄文文化を生み出し、自然との共生、循環、再生 といった、自然観を形成してきたと思う。

 国連がSDGsで17か条のなかで謳う環境保護にはもっとも適した自然観が日本人には自然尊重の考えが根源的に宿っていると考える。新型コロナウイルスも、ウイルスは撲滅できず、人間が免疫をもつことで、ウイルスと共生することで、人類は生き延びていくのだと、多くの感染症の学者が述べている。

 市場原理主義の競争激化による地球環境破壊は、ウイルス同様、いかに自然、人間、ウイルスが共生、共存できるかにかかっている。
 縄文道の自然尊重による共生思想は、今後新型コロナウイルスの問題や地球環境問題解決の為にも重要な道標となろう。


Copyright Jomondo Kenkyujo

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