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2020年05月29日 07:00

危機に直面し、自らをイエス・キリストにたとえる孫正義の自信と勝負魂(3) 未来トレンド分析シリーズ 

国際政治経済学者 浜田 和幸 氏

新たな販路を切りひらく絶好の機会

 この問いに対する孫正義の回答はこうである。「コロナ危機の次に飛躍する企業はフード・デリバリー、オンライン医療サービス、ビデオ・ストリーミング、オンライン・ショッピングといった業種から生まれるだろう」。おそらく、彼のアンテナには具体的な企業名が映っているに違いない。これまでの成功はスタートアップ企業への投資がもたらしたものである。実は、彼が指摘する業種にはすでにソフトバンクが関係する企業も多い。

 たとえば、メガユニコーンの分野で世界一とされる中国の「バイトダンス(字節跳動)」や「平安医療技術」などは注目株と目されているが、孫正義が得意とするスタートアップ企業ではない。また、韓国の電子商取引のリード役と目される「クーパン」も同様だ。彼が復活を賭けて投資しようと目論んでいる企業は意外な世界から登場する可能性があるだろう。冒頭に紹介したが、インドネシアの首都移転計画に欠かせないエネルギー、医療、教育インフラ事業に注力しようとする企業である。

 また、ブロックチェーン技術をこうした分野に活かすITやフィンテック企業も孫正義の関心を呼んでいるようだ。ソフトバンクはビットコインへの投資を重ね、2019年末にはデビットカードへの進出を決めた。しかも、この分野に関しては巨人「IBM」や「TBCASoft」とも提携している。実は、昨年10月に中国の習近平国家主席が「ブロックチェーン大国化宣言」を下したのだが、すでに孫正義は早い段階からアプローチを試みていたようだ。

 2019年12月、韓国のソウルで開催された「世界ブロックチェーン・ビジネスサミット」でも孫正義氏の影が見え隠れした。韓国の韓昇珠元総理肝いりの国際会議であったが、自然再生エネルギーの効率的な供給にブロックチェーン技術を応用しようとの提案がなされた。韓国のみならず中国からの参加者の間では、未来を変える技術に関心の高い孫氏への期待が感じられた。

 いずれにせよ、異端児であることは衆目の一致するところである。それゆえ、バッシングも受けやすい。一度つまずくと、投資家の見方は厳しくなる。「ウィワーク」の件が引き金となり、配車サービスの「ウーバー」や同業の中国の「滴滴出行」、インド発のホテルビジネス「オヨ」への巨額投資にも厳しい目が向けられるようになった。パンデミックの影響で世界的に観光業や旅行産業は大打撃を被っている。「オヨ」も例外ではなく、インド以外でのオペレーションは中止に追い込まれている。

 とはいえ、孫正義本人は一向にひるむ様子がない。それどころか、以前から仕込んできたAIやエネルギービジネスに一層拍車をかけようと意気込んでいる。なぜなら、世界のパワーバランスの変化に人一倍敏感に反応しているからだと思われる。

 なぜなら、これまでのアメリカ製品による独占体制が崩れ、中国との競争環境が生まれたわけで、世界にネットワークをもつソフトバンクとすれば新たな販路を切りひらく絶好の機会が到来したに等しいからだ。「マサ」こと孫正義は持ち前のソフトパワーを全開させ、アメリカや中国のコネクションを活かしながら、アジアに猛烈な食い込みを展開している。なかでも、AIとエネルギーに関する投資と市場開拓は目覚ましい。すでに述べたインドネシアの首都移転計画もその一例である。

(つづく)

<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ・かずゆき)

 国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。最新刊は19年10月に出版された『未来の大国:2030年、世界地図が塗り替わる』(祥伝社新書)。2100年までの未来年表も組み込まれており、大きな話題となっている。

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