【異色の芸術家・中島氏(36)】アトリエメモランダム「モナド、我が胸の内なる炎」

 福岡市在住の異色の芸術家、劇団エーテル主宰の中島淳一氏。本人による作品紹介を共有する。

モナド、我が胸の内なる炎
モナド、我が胸の内なる炎

 深淵は内側へと開かれている。外界は影にすぎず、真実の光は魂の奥に潜む聖域にのみ、微光として燃えている。紫の殻、藍の層、天穹の膜は、天使たちが織ったヴェールのように心臓の泉を守り、覆い、密封する。その中心には、名なき一点がある。ディオニュシオスが「超本質」と呼んだ核、エックハルトが「魂の火花」と言った根源の微粒、アウグスティヌスが「内なる神殿」と呼んだ光の聖堂。その火は、炎であるが熱をもたず、光であるが眼には見えず、声であるが言葉をもたない。

 それは、沈黙のうちに立ち上がる「呼吸」であり、創造の起点に置かれた「第一の震え」であり、魂がまだ肉体に宿る前に聞いた「天上の記憶」の残響である。詩人はその火を忘れた。世界の雑音に紛れ、外側に意味のすべてがあると信じ込んでいた。街に降り、人々の歓声と嘆きのあいだを彷徨し、虚飾と欲望の宴に長く身を置いた。だが、そこには何もなかった。あったのは「空虚な輝き」と「忘れ去られた祈り」だけ。

 詩人は再び沈黙へ戻らなければならなかった。呼吸を深くし、心臓の鼓動に耳をあて、紫の洞窟の中心へと降りてゆく必要があった。そこに、火はまだ燃えていた。傷つけられたことはあった。弱まったこともあった。しかし、火は消えなかった。詩人が自分自身を見失っていた時でさえ、火は詩人の魂を見失わなかった。

 モナドは窓なき存在である。しかしそこには宇宙が宿る。星辰は内側から輝き、天球の調べは血潮のなかに響いている。人間は宇宙の外側に立つのではない。人間は宇宙の中心として、その内奥に宇宙を抱いている。この火は、その証である。内なる聖殿の灯は、外の太陽よりも崇高にして穏やかである。魂の中心は、すべての言語よりも深く語り続ける。沈黙は空虚ではなく、最も純粋な充満である。モナド、それは胸の至奥で燃える、消えることのない炎。

< 前の記事
(35)

関連キーワード

関連記事