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2020年06月18日 17:20

前駐ベトナム大使・梅田邦夫氏特別講演レポート「日本にとってのベトナムの重要性」(1)

 NetIB-Newsでは、DEVNET INTERNATIONALから提供いただいた前駐ベトナム日本国大使・梅田邦夫氏の講演レポート((公社)ベトナム協会)を紹介する。今回は「COVID-19対策におけるベトナムの成功」について。


前駐ベトナム日本国大使
梅田 邦夫 氏

 私は、2016年11月、ベトナムに着任し 、約3年5カ月間、勤務した後、今年 4 月下旬に外務省を退職しました。非常に恵まれたタイミングで勤務できたと考えています。理由は3つあります。

 1.現在、日越両国のリーダー間の信頼関係が非常に厚く、国民間にも深い親近感が存在していることです。

 2.現在のベトナムは、政治が安定し、経済成長のエネルギーに満ち満ちており、大きく飛躍する「歴史的チャンス」を迎えていることです。

 3 .ブラジル勤務2014年3月―16年11月)の後、3年ぶりにアジア業務に復帰して、もっとも驚いたことは、「安全保障分野」と「深刻な労働力不足問題」において、ベトナムが日本の最重要パートナーになっていたことです。

 この第3点目を中心にお話しさせていただきます。
 その前に、ベトナムの「COVID-19」対策の成功の背景について、少し触れさせていただきます。

COVID-19対策におけるベトナムの成功

 ベトナムは、今年1月下旬以降、「厳格な水際措置と感染拡大予防措置」を約2カ月半の間、実施しました。

 その結果、4月23日、「厳格な水際措置」を引き続き維持しつつも、社会隔離措置の緩和に一歩を踏み出し、学校や商業施設の再開も徐々に進め、5月24日時点で、経済社会活動は、ほぼ元に戻りつつあります。ベトナムは、COVID-19対策において世界でもっとも成功している国です。

 なお、5月24日時点で在ベトナムの感染者は324名、死者ゼロです。4月16日以降38日間(5月24日時点)、海外帰国者を除き、新たな国内感染者は出ていません。とくに、ベトナムの医療レベルを勘案すると、死者ゼロは画期的です。

 この点について、ベトナムは正直に発表していないのではないかと疑う方もおられますが、今回のコロナ・オペレーションの透明性は、当初から非常に高いものがありました。具体的には、陽性患者の氏名や住所を除き、感染経路、行動、濃厚接触者(隔離対象者)人数、重症患者数などが刻々と公表されていました。

 感染拡大を防ぐ観点から、情報開示が重要であることを、フック首相およびマイ・ティエン・ズン官房長官は、2月以降、繰り返し強調していました。この点もSARSの経験から得た教訓だと思われます。

 ベトナムの対応については、米国のCDC(米疾病対策センター)をはじめ、欧州諸国、WHOも高く評価しています。

 また、5月初めに実施された調査(英調査会社実施)ではベトナム人の97%が政府の対応を信頼しており、調査対象の26カ国・地域でもっとも高い信頼度を獲得しています。

 今後、経済の立て直し、ウイルスの第2波への対応と正念場が続きますが、ベトナムへの理解を深めるためにも、なぜ、ベトナムが1月末から「非常に厳格な水際措置と感染拡大予防措置」をとったのか、また、なぜベトナム国民の大半が政府を支持しているのかを見てみたいと思います。

 この点について、私は、3月末の帰国前に20名近いベトナム人指導者、有識者と意見交換しましたが、次の4点に整理できると考えます。

(1)発生場所が中国であったこと

 ベトナムは中国と陸上で1,400kmにわたって国境を接しており、日々、数万人が国境を往来しています。また、中国の公表内容に対する根強い不信感と警戒感があります。中国は、都合の悪い情報について、隠す、ないしは過少に公表するなど、常に情報操作していることをベトナムは熟知しています。
陸の国境封鎖は1月末、定期航空便の停止措置は2月初めに実施されました。

(2)SARSの苦い経験

 2002年11月、広東省でSARSが発生していましたが、中国の情報開示は今回以上に遅延しました。03年2月、香港からハノイに入国した感染者(アメリカ人)が、発症。ハノイ・フレンチ病院に入院し、SARS患者世界第1号となりました。院内感染が発生し、病院スタッフ12名が感染し、5名が犠牲となりました。
 当時、ベトナムは、WHO専門家を招聘し、専門家のアドヴァイスを受け入れて、さまざまな措置を次々と導入し、同年4月には「SARS感染地域リスト」からの除外国第1号になりました。今回の対策は、SARSの教訓を十分踏まえて、講じられています。

(3)ベトナムの高くない医療水準

 コロナ・ウイルスに感染した場合、ベトナムの医療水準からして満足な治療を受けることができない。自分や家族を守るために最善の策は、とにかく感染しないことであると多くのベトナム人が考えていました。

(4)「命と健康」を最重視する国民意識の存在

 学校の休校に関連し、あるベトナム人が、「コロナに起因して当分勉強できないからといって、1年ぐらい留年することは、命や健康を失うことと比較すれば、大した問題ではない。勉強はコロナが終息してからやればよい」とSNSで流したところ、多くの賛同者がありました。

 私が意見交換したベトナム人も、全員が同様の認識でした。「厳しい水際措置と感染予防対策」は、高い経済・社会的コストをともなうが、「命と健康」に勝るものはないとの考えです。「命と健康」を最優先するとのコンセンサスが、ベトナム社会に歴然と存在し、国民は、「厳しい水際措置、感染拡大予防措置」を支持しています。

(つづく)

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