2024年04月28日( 日 )

中国経済新聞に学ぶ~結婚したくない、出産望まない若者

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

仕事に専念できない

 最近第一子を出産した冉さんはここ数カ月、夜もぐっすり眠れない日が続いており、「娘が笑っているときはとてもうれしい気分になるけど、それ以外のほとんどのときは苦痛」と話す。2年前に冉さんを取材した当時、彼女はまだ結婚しておらず、「子どもはいらない」とはっきり話していた。

 その理由は、ローンの返済や家賃の支払いなど経済的負担が大きくて、自分も夫も(当時は恋人)いっぱいであると同時に、当時は仕事を見つけたばかりで、「子どもを産むと、前後3年は仕事に専念できない」からだとしていた。そして、「今とても幸せで生活も充実しており、子どもはいらない」と話していた。

 冉さんは30歳になった昨年、夫と婚姻届を出した。そして、今年3月9日、陣痛開始から約12時間かけて第一子を出産した。出産のときは叫び声を挙げるほど激痛で、生まれた赤ちゃんの性別を確認させるため、助産師が抱き上げてきた時も、彼女はすでに痛さのため意識がもうろうとしていた状態で、「複雑な気持ちで、(赤ちゃん)を見る気になれなかった」と振り返る。分娩室から出てきた後、冉さんは少しずつ意識がはっきりし、生まれてきた我が子を見て、「母親になるのは本当に大変なことだ」と実感。「命がけで生んだ娘なのだから、今後はしっかりと守ってあげたい。幸せで、楽しい一生を過ごしてほしい」と思うようになったという。

 冉さんが出産する前に感じていた「育児が怖いという心理」は、今の若者の間では決して珍しいものではない。中国国家統計局の統計によると、2019年、中国の出生数は1,465万人で、出生率は1.048だった。1949年以来、もっとも低い出生率だった。

中国人は依然として「結婚→育児」願う

 中央民族大学・社会学部の楊菊華教授は、19年の出生率が下がった主な原因について、「出産可能年齢(15~49歳)の女性が約500万人減少し、出産適齢期(20~29歳)の女性が約600万減少したから」と分析。出産可能年齢の女性が減少しているため、必然的に出生数も減少するという。

 そして、「中国の出生率は、16年にやや上昇してから19年までは3年連続で下降している。今後も右肩下がりになるだろう」と指摘する。そして、出生率のほか、2019年の出生数のうち、第二子の割合が57%を占めているという数字にも注目し、「人々の2人目の子どもを産みたいという願いは比較的強い」との見方を示す。

 その他、ネット上では 「育児が怖いという」書き込みが多く見られることに関して、「私自身の長年の研究・分析と実地調査などからすると、中国人は依然として結婚し、子どもを産みたいと考えている。ただ、結婚や育児をめぐる観念が変わっただけ」との見方を示す。

 これまで中国には「老後のために子どもを育てる」という観念があったものの、現在は社会保障体系が中国全土のほとんどの人口をカバーするようになっているため、子どもをたくさん産んで老後に備える必要はなくなっており、さらに、養育費も高騰しているため、人々が生む子どもの数も減っている。中国では、高等教育を受ける人が増加し、とくに女性も高等教育を受けるようになっているのを背景に、北京や上海などの大都市では、30歳を過ぎてから結婚し、出産するというのがすでに一般的な現象となっている。

 また楊教授によると、年齢によって、人の考え方も変わり、学生時代の考えは、社会に出て仕事の経験が変化するについて変わるものだとし、「私自身、大学生のときは『独身はとても自由だ』と考えていた。でも、今は結婚して家庭を築き、子どもを2人育てるというのが理想の生活スタイルと考えている」と率直に語る。

育児をしながら自分も成長

 90後(1990年代生まれ)の梁子さんも昨年、第一子を出産した。しかし、冉さんと違って、「子どもを育てるのは大変だけど、幸せという気持ちのほうが強い」と話す。

 梁子さんと夫は2人とも、北京出身ではないが、北京の大学に通い、卒業後も北京で就職した。2人は現在、借家に住んでいる。子どもが生まれる前、梁子さんは「今の状態では、良い環境のなかで子どもを育てられないのでは」と心配になったものの、子どもをもつほかの女性の意見を聞いたり、ネット上で資料を調べたりして、「子どものために基本的な生活必需品を備えてあげることに問題はない。完璧な条件や環境を整えてあげる必要もない。大事なのは健康的で、楽しい雰囲気づくりをしてあげること」と考えるようになったという。

 陣痛開始から約15時間かけて第一子を出産した梁子さんは、「痛くて死にそうで、なかなか生まれなかった」というものの、生まれてきた男の子を見た瞬間、「かわいい!」と感じたという。

 子どもを産む前、梁子さんは、大ヒットスマホ向けMOBA(マルチプレイヤーオンラインバトルアリーナ)ゲームの「王者栄耀」にはまっていて、「毎晩、3時間以上遊んでいた」という。しかし、子どもができてからは、「王者栄耀どころか、携帯を見る時間もない」とし、「生きがいができた」と、気持ちが大きく変化したことを語る。

 梁子さんは、「子どもというのは、今日は物をつかむことができるようになったかと思えば、次の日には『ママ』と呼んでくれるようになるなど、毎日がサプライズ」とし、「自分が世話する人間が、少しずつ成長していく」ことに育児の最大の達成感を感じるという。「息子は今は真っ白な紙のようで、今後どんな性格になるのか、どんな価値観をもつようになるのかは、すべて私の影響を受ける。だから、私もちゃんと自己管理しなければならない。最高の教育はまず両親から始まり、その後、自分の行動を通して子どもを教えなければならない。育児の過程で自分も成長できる」と充実感を漂わせる。

 梁子さんは、「『母親』というのは、昔のように単に偉大で、何の文句も言わずに子どもにすべてを捧げるという存在というよりも、子どもと一緒に成長できる存在だ」との考えを示した。


中国経済新聞を読もう

<連絡先>
(株)アジア通信社
所在地:107-0052 東京都港区赤坂9-1-7
TEL:03-5413-7010
FAX:03-5413-0308
E-mail:china@asiahp.net
URL:http://china-keizai-shinbun.com

関連記事