これからの工法・CLTパネル工法 メリットとデメリットは?(前)
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2020年06月30日 07:00

これからの工法・CLTパネル工法 メリットとデメリットは?(前)

 森林大国の日本では、林業の振興やCO2排出量を削減に向けて国産材の活用が期待されている。S造やRC造が主流の中大規模建築物でも利用できる、直交集成板のCLT(クロス・ラミネーティッド・ティンバー)で木造建築をつくる取り組みが進んでいる。CLTを使うと、どのようなメリットがあるのか。これから解決していくべきCLTの課題とは。その動向を見つめた。

CLTパネル-3m×12m原版(画像提供:日本CLT協会)

中高層建築の木造化で林業振興

 1995年頃から、欧州を中心にマンションや商業施設などの壁や床での利用が広まっている直交集成板のCLT(クロス・ラミネーティッド・ティンバー)。CLTはラミナを並べて繊維の方向が直交するように積み重ねて接着した木の建材だ。日本は、国土の約7割を森林が占める国。国産材の需要を高めて日本の林業を振興するためには、これまであまり木材が使われてこなかった事務所や店舗などの中高層非住宅建築物で、国産材を利用することが重要だ。

 内閣官房は林業振興や地方創生を目指し、中大規模建築物への国産材CLT利用の普及を推進している。また、県土の84%を森林が占める高知県では2013年に「CLT建築推進協議会」を設立し、CLT建築の普及や技術向上に取り組んできた。

 地球温暖化の原因と言われているCO₂(二酸化炭素)は、全排出量のうち約3分の1を建築関連が占めると推計されている。なかでも、セメントや鉄の製造に由来するCO₂排出量は多い。森林は木が成長する過程でCO₂を吸収して固定するため、木材利用拡大によるCO₂排出量低減に注目が集まっている。建築物に木材を使うと長期間CO₂を固定できるため、CO₂排出量を抑えられる。

RC造、S造は木造に置き換わるか

150㎜厚のCLTパネル(画像提供:日本CLT協会)

 S造やRC造が主流の中高層建築物や低層非住宅建築物の木造化を目指し、CLTパネル工法の普及を内閣官房は進めている。そのため今後はS造やRC造などの需要が木造に置き換わり、CLT市場が伸びる可能性がある。

 CLT工法は、工場でプレカット加工したパネルを1階床・壁、2階床・壁と現場で積み上げて建てる。木材を直交させた互いの層が変形を抑え合うため、CLTは寸法が安定しやすく、通常の木材より変形が少ない。「CLTパネル工法の建物は、コンクリートと同程度、耐力がある」と木材構造設計専門家の京都大学生存圏研究所教授・五十田博氏は話す。

 一般的には、低層建築物では金物やビス、中層建築物では引きボルトなどでCLTパネルを固定する。これは、柱梁構造に比べて技術的な難易度が低く、熟練した大工がいなくても建てられるということだ。しかし、「高層建築物において、CLTの現状の技術ではS造やRC造に比べて工期やコスト面でのメリットを引き出せていない」((一社)日本CLT協会・坂部芳平専務理事)ため、技術開発が進められているという。
 CLTパネル工法には、どのようなメリットがあるのか見てみよう。

(1)工期が短い

 RC造は湿式工法で、コンクリートの強度が出るまで1カ月近く固めるため、養生期間が必要だ。一方、CLTパネルは施工してすぐに次の作業に移ることができるため、養生期間が短くて済む。さらに、大きな面材で部品点数が少なく、工場加工のCLTパネルを現場で組み立てるため、外装に取りかかる期間を縮められる。
 「大規模な建物でなければ大きな差は出にくいが、シミュレーションでは、6階建の共同住宅で、RC造と比べて工期を3カ月程度短縮させた」(日本CLT協会)。

(2)凹凸のあるデザインの建物をつくりやすい

 マンションなどS造やRC造の中低層建築物は、箱型の建物が多い。CLTパネル工法は面材のパネルを組み合わせるため、庇が跳ね出した建物やバルコニーがせり出した建物、凹凸のある建物など面白いデザインをつくりやすい。また、木目が見えて木の温もりを感じる落ち着いた空間ができる。さらに、環境問題に取り組んでいる企業姿勢を見る人に伝えられることもメリットだ。

(3)軽く、熱や音を伝えにくい

 木の重量はコンクリートに比べて約5分の1と軽いため、基礎工事費や材料搬送費がRC造と比べて軽減される。「英国ロンドンでは、CLT工法の8階建建築物はRC造と比べて重量が約62%減少し、基礎工事費は約25%コストダウンした」と日本CLT協会・坂部氏は話す。軟弱な地盤に建てる際などに有利となり、コンクリートを使う場合よりも高い建物を建てられる可能性もあるという。

 木材の熱伝導率は、コンクリートの約10分の1、鉄の約350分の1だ。裏側で火が燃えている150mm厚のCLTパネルを手で触れても熱くないほどに、熱を伝えにくい。また木造の共用住宅では、音漏れが懸念されるが、「壁に使うときはCLTパネルに断熱材や石膏ボードを貼るため、既存のRC造などと比べてもほとんど差はない」(日本CLT協会)という。

 一方で、CLTパネル工法では、何が課題になるのだろうか。

(つづく)

【石井 ゆかり】

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