2024年04月20日( 土 )

働く場所への脱皮を図る唐津市~「唐津コスメティック構想」実現に向けて(後)

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JCCの誕生と大手企業の参画

 唐津市は、仏コスメティックバレーの在り方を学ぶにあたり、コスメティックバレーの設立時から運営に携わるアルバン・ミュラー氏を招聘。13年11月に市、玄海町、佐賀大学、九州地場の化粧品原料・製造・販売会社で構成する産学官の連携組織「ジャパン・コスメティックセンター(JCC)」を唐津市役所内に立ち上げ、ミュラー氏が会長に就任。現在に至るまで「日本版コスメティックバレー」の推進を主導している。

 JCCの会員数は正会員152、支援会員26の計178会員(20年6月3日時点)。会員企業にはハリウッド(株)、新日本製薬(株)、(株)アルビオンといった有力企業のほか、久光製薬(株)、(株)バスクリンなど、県外の大手・有力企業も参画。大阪を拠点とする化粧品原料販売・受託製造の岩瀬コスファ(株)が唐津市浜玉町に倉庫を建設したほか、化粧品販売の(株)クレコスも同石志に工場を建設し、本社の奈良から生産拠点を移している。また、佐賀県神埼市に工場がある化粧品受託製造大手・東洋ビューティー(株)は、唐津市にも製造・物流拠点を置くことを検討中だ。

 JCCによれば、過去5年間で20社以上が起業、または誘致を受けて唐津市に拠点を置いたという。「唐津市は港があり、物流拠点としてアジア地域に近いという地理的な優位があります。周辺には目立った活断層の報告はなく、政府の地震調査委員会が公表している資料でも、震度6弱以上の地震が発生する確率は3%以下とされています。地震発生リスクが低い場所というのも特長であり、拠点を置く際の利点といえるでしょう。今後も、原料から製造、販売まで一貫した産業振興を進めてまいります」とJCC代表理事・山﨑信二氏は話す。

職住近接のコスメのまちへ

唐津コスメティック構想ロゴマーク

 「唐津コスメティック構想」は、唐津市では過去に例のない取り組みだ。市では企業誘致による産業集積と雇用創出、地場の特性を生かした化粧品開発が進む一方、コスメティックの町としての認知度はまだ低い。地域住民への周知徹底のための第一歩として、JCCでは「美と健康を」テーマにしたイベントを開催。地産素材を使ったオーガニック化粧品の紹介や肌の健康測定、参加型のワークショップのほか、美容や健康の有識者や専門家によるステージイベントも行っている。今後も消費者をつなぐ商談会やイベントを積極的に開催し、発信力がある有識者や著名な専門家にも協力をあおぎ、SNSによる情報発信による認知度拡大にも注力していくという。

 JCCの設立に尽力し、19年に急逝した前唐津市長・坂井俊之氏は生前、「まず、市場規模が約2兆円といわれる化粧品産業の100分の1にあたる200億円の生産規模を目指します。唐津市がコスメティック産業の集積地となるために必要な実績づくりのためです。やはり、地元から盛り上げていかないと」と話していた。JCCも「企業誘致や創業支援も続け、唐津市がコスメビジネスの中心地になるよう、企業との連携や地域との協力を通じて一緒に育てていきたい」(山﨑氏)としている。

 グローバル市場を見据えた、コスメの地産地消が生み出す循環型のコミュニティ形成。それは通勤者から定住者への移行を少なからず促進するだろう。コスメを起点に、唐津市は「居・職・住」が完結する職住近接エリアとして生まれ変わるのか。同市の今後のまちづくりに期待したい。

(了)

【代 源太朗/小山 仁】

(前)

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