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2020年08月27日 10:21

ストラテジーブレティン(259号)~ファーウェイへの「死刑宣告」、その意味するもの~ハイテク市場で予想される地殻変動(2)

 NetIB‐Newsでは、(株)武者リサーチの「ストラテジーブレティン」を掲載している。今回は2020年8月25日付の記事を紹介。


 米国は8月に入り、以下の苛烈な対中ハイテク企業バッシング政策を相次いで打ち出した。
 (1)ファーウェイに対する半導体供給完全遮断。
 (2)中国・中国共産党を世界のインターネットから完全に排除する、クリーンネットワーク構想の提起。
 (3)動画掲載アプリTikTokの米国事業禁止。
 いずれも、7月23日のポンペオ・スピーチで表明された中国敵視戦略の遂行のために打ち出されたものであり、これまでの対応とはレベルが異なっている。

米国は力ずくで5G基地局からファーウェイ排除

 次に5G基地局ビジネスについて。これまで技術的に先行し価格も圧倒的に安いファーウェイが、次世代ネットワーク5Gのメインプレーヤーとなる、という見方が世界の常識であった。しかし半導体の調達が困難になり、ファーウェイの製品供給が維持できなくなると、ファーウェイを軸とした5Gネットワーク構築を根底から見直さざるを得なくなり、米国によるファーウェイ排除要請に抵抗を示していたドイツのメルケル政権も、路線転換を余儀なくされるだろう。

通信機市場に新たな空白が

 従来はコア基地局の仕様が各国の通信企業ごとに異なるため、メーカーは個別に対応せざるを得ず、実績が豊富で高シェアをもつファーウェイが有利だった。しかしファーウェイに代替する企業の参入を容易にするための米国国防省による呼びかけもあって、O-RAN(Open Radio Access Network)と呼ばれる汎用的規格がつくられようとしており、より小規模の企業の新規参入が可能になりつつある。

 いち早くファーウェイ排除を決めた英国は、コア基地局でのシステム仕様をオープン化して、5Gの代替サプライヤーの参入を求め、日本政府に協力を要請している。こうしてNTTドコモと後発のNECや富士通(世界シェア1%未満)にも、チャンスがめぐってきたのである。

 しかし、ほとんどの関係企業は、情勢の急変に対応できていない。ファーウェイを5G基地局のサプライヤーと決めている多くの欧州通信業者はsuper painful(大きな痛手だ)というのみで、ファーウェイ破綻という不測の事態にまったく対応できていない(FT・8月22日付)。しかし他方で、スマホと基地局という世界の通信機市場で圧倒的プレゼンスを誇ったファーウェイが衰退するとなると、巨大な市場の空白が生まれ、関連企業にとっては大きなビジネスチャンスとなる。地政学が世界の産業地図を塗り替えていく、といえるだろう。

(2)クリーンネットワーク構想

あからさまな対中インターネット封鎖

 米国務長官は8月5日、新たなプログラム「Clean Network」を発表した。Clean Networkプログラムは悪意のある攻撃者(中国および中国共産党)から市民のプライバシーと企業の機密情報を守ることが目的とされ、中国・中国共産党をネットワークの各分野から排除することを意図している。

 究極的にはファーウェイのみならずOPPO(オッポ)など中国のスマホメーカー、およびBATなどのインターネットプラットフォーマー、移動体通信事業者などは、すべて国際的なインターネット空間から遮断されることになるかもしれない。中国国外では、アリペイやウィーチャットペイなどの電子決済もできなくなるだろう。

 Clean Networkプログラムには5つのカテゴリーがあり、各インターネット分野からの中国の追放を目的としている。

(1)クリーンキャリア
 信頼できない中国の携帯電話会社(キャリア)が、米国の通信ネットワークに接続することを禁止。

(2)クリーンストア
 米国のアプリストア(Google PlayストアやApp Storeなど)から信頼できない中国製アプリケーションを排除。

(3)クリーンアプリ
 信頼できない中国のスマートフォンメーカーがアメリカなどの信頼できるアプリをプリインストール(内臓)すること、あるいはダウンロードすることを禁止。

(4)クリーンクラウド
 アリババ、バイドゥ、テンセントなどの中国企業が提供するクラウドサービスに米国のデータを保存することを禁止。

(5)クリーンケーブル
 グローバルインターネットに接続している海底ケーブルが、中国による超大規模な情報収集のために侵害・破壊されないようにする。

 米国は同盟国や協力国の企業に呼びかけ、クリーンネットワーク(中国排除のグローバルネットシステム)を強化していく。

(つづく)

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