2024年05月02日( 木 )

別府市のマンション設計偽装~住人の安全を一顧だにしない大分県の対応(5)

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 問題点は、もう1つあります。姉歯事件の後、国交省の指示により全国の自治体が公費を投入し、マンションなどの構造検証が(一社)日本建築構造技術者協会(以下、JSCA)に委託され、安全を確認できた建物について安全証明書が発行されました。

 しかし、この構造検証では、私がSRC造について指摘している偽装については、ノーチェックだったのです。そのために、「ライオンズマンション春日公園」などの安全証明が発行されているマンションにおいても、設計の偽装が発覚しているのです。

 行政庁は 2度の過ちを犯しています。1度目は、建築確認の審査において、設計の偽装を見逃したこと。2度目は、耐震偽装事件を受けて実施された構造検証においても、設計の偽装を見逃したJSCAの検証結果に対して「安全証明書」を発行したことです。これは、行政庁とJSCAによる巨大隠蔽事件といえます。

 JSCAによる構造検証において、私が指摘しているSRC造における設計偽装を明らかにすれば、大半のJSCA会員が設計に関与した建物における偽装が発覚したはずです。JSCAがそのような事態を避けたいと考えることは容易に想像できます。そして、行政庁はJSCAに忖度したのかどうかはわかりませんが、結果として巨大隠蔽事件を引き起こしたのです。私のようなJSCAに所属していない構造技術者でなければ、このことを指摘できません。

 同様の隠蔽事件として、東京都豊洲市場の設計偽装が挙げられます。日本最大手の(株)日建設計による悪質な設計偽装を、計画通知の審査で見逃した東京都は、日建設計の擁護に終始し、仲卸業者が豊洲市場の使用禁止を求めている裁判においては、東京地方裁判所が東京都に忖度し、実質的な審理を行わないまま結審という暴挙を行いました。

 このような行政庁を中心とした偽装隠ぺいの犠牲となっているのは、一般市民であり、マンションの区分所有者です。なぜ、価値のないマンションの住宅ローンや税金を払い続けなければならないのでしょうか。区分所有者の方々は憤りを感じないのでしょうか。

 設計偽装により価値が棄損されたマンションは、売却することができません。棄損された価値は取り戻すべきではないでしょうか。

 私も区分所有者の1人として、大分県知事や県税事務所に対して声を挙げました。もし共感される方は、ご自分のマンションについて声を挙げられてはいかがでしょうか。


(了)

【桑野 健介】

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