2024年05月03日( 金 )

別府市のマンション設計偽装~住人の安全を一顧だにしない大分県の対応(4)

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 大分県だけではなく、福岡県や福岡市も同様に「建築確認済証が交付されているから、当時の建築を満たしている」という趣旨の回答をしています。

福岡市内のマンションに関する、福岡市建築指導部長からの回答

 「確認申請書は保存年限を超えており廃棄されているが、建築確認当時の建築基準法の規定について審査を行い、適合を確認のうえ建築確認済証を交付したものと思われる」。

福岡県大野城市内のマンションに関する、福岡県建築指導課長からの回答

 「当該建築物の確認申請書は保存年限を超えており廃棄されておりますが、建築確認申請時の建築基準法関係規定に基づいて審査を行い、確認済証の交付を行っております」。

 どの行政庁にも共通していることは、「建築確認済証が交付されているから、基準に適合している」ということです。しかし、建築確認審査において、設計の偽装を見逃したまま確認済証を交付しているのですから、先ほど述べたように、確認済証は基準に適合していることの証明にはならないのです。

 行政庁がこのような見当違いの回答をする理由は、自らの審査ミスを隠したいからです。審査ミスが公になれば、他の多くの建築物が、審査ミスにより設計偽装が見逃されたまま建設されていることが世間に知れ渡り、これらの建築物の法適合性や安全性の検証のために社会が大混乱するからです。

 社会が混乱するからという理由で、耐震偽装の事実を隠蔽することは本末転倒です。行政庁が全国に潜んでいる耐震偽装の事実を認めないのであれば、私の指摘を法的・工学的な根拠をもって否定し、「法令規準に適合していること」「分譲価格に見合う耐震強度を有していること」を立証すべきです。

 これまでの大分県や福岡市・福岡県など行政庁の回答では 何も根拠が示されないまま、「確認済証が交付されているから基準に適合している」と、自らの審査ミスを棚に上げ、無責任極まりない回答をしています。

 大分県などと同様に、建築確認において審査ミスをして、設計偽装を見逃した建物は全国に存在しています。これらの建物を再調査し、適法で安全な状態に是正すべきです。

 巨大地震発生の確率が高いと警告が発せられている現在、耐震性の強化が叫ばれています。その一方で、全国の行政庁が審査ミスを隠蔽するために設計偽装を放置するのであれば、これまでに実施された耐震診断・耐震補強などは、ムダ使いとなってしまいます。

 建物のもっとも弱い部分が崩壊すれば、それは建物そのものの崩壊となってしまうのです。審査ミスの隠蔽など姑息なことに走らず、建物の弱い部分を適切に補強し、大地震に備えるべきです。

 以下の図は、建物のもっとも弱い部分の崩壊が天体の崩壊につながることを示したものです。

▲クリックで拡大▲

 1つの階の崩壊により、建物全体の耐震強度が不足するという事態になります。

(つづく)
【桑野 健介】

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