2024年04月20日( 土 )

コロナ禍でキャッシュレス化は加速(後)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

 コロナ禍で引き起こされた経済低迷を防ぐためという名目で、数兆ドル規模のドル紙幣が発行され、それらが株式や暗号資産などに流れ込んでいる。今回はデジタル経済の台頭により進んでいるキャッシュレス化を取り上げてみよう。

各国の銀行は支店数やATM設置台数を削減

 キャッシュレス化によるメリットとは何か。現金には、製造、流通、保管の過程で膨大なコストが必要であり、日銀によると、日本の通貨の製造コストは、なんと年間約517億円に達するという。また、現金は流通や保管にもコストがかかる。現金は一般的にATMから引き出すことが多いが、ATMの維持・管理コストは年間約2兆円という。デジタル経済の発達により、電子マネーやクレジットカードが利用できる場所が増え、現金を使う機会が減少しているため、各国の銀行は支店やATMの数を減らしている。

 キャッシュレス化のもう1つのメリットは、すべての取引が記録されることにより取引の透明性が高まる点だ。一方、現金は匿名性が高いため、その流れを把握することは難しい。現金利用割合の高いスペインやイタリアでは「地下経済」が発達し、経済全体の30%近くを占めているため、キャッシュレス化は脱税やマネーロンダリングを防止しやすく、取引の透明性を高めるために有効な方法である。

各国の中央銀行は暗号通貨の発行を検討

 キャッシュレスにはこのようなメリットがあるため、スウェーデンやノルウェーは「2030年までにキャッシュレス社会を目指す」と宣言している。スウェーデンでは、12年からバスなどの交通機関を利用する際に現金がすでに使えなくなっている。イギリスでも、14年から2階建ての観光バスの乗車には現金が利用できない。

 このようにキャッシュレスが進むことによって少なからず不利益を被る人々が出てくる。たとえば、お年寄りはデジタル機器をうまく使いこなせる人が少ないため、現金がなくなると困るだろう。また、クレジットカードを発行してもらえない低所得層にとって、キャッシュレスで不便になる可能性がある。

 キャッシュレスと言っても、紙幣や硬貨が完全になくなるという話ではないが、時代の流れを見ると、確実にデジタル経済にシフトしている。各国の中央銀行が暗号通貨の発行を検討するまでに至っている。現金をもっていなくても、何の不便も感じない時代がすぐそこまできている。

(了)

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