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2020年10月23日 07:00

【凡学一生の優しい法律学】日本学術会議推薦無視事件(3)

2. 高橋洋一氏の詭弁(つづき)

(3)具体的批判

1:「裁量的人事をしないとの政府答弁も、政府の裁量的判断」という主張

 前回の記事で掲載した高橋氏の論文を見ると、高橋氏は内閣のすべての答弁には内閣法制局が所轄事項として答弁の適法性、合憲性を担保しているという事実を完全に無視し、国民に嘘の説明をしていることが明らかである。

 「裁量的人事をするか、しないかも内閣の裁量である」という主張の根拠は法令上一切存在しない。
 内閣が裁量的人事をしないと答弁したのは、裁量的人事は法令上できないと判断したことが背景にあり、そのことを内閣法制局が認めているという事実がある。

2:「条文を読めば裁量的な任命権がある」との主張

 条文には、「学術会議の推薦に基づき任命する」(学術会議法17条および5条2項)とあり、裁量的任命権、つまり普通の任命権とは明らかに異なる。読者が普通は条文まで読まないこと見越して、完全な虚偽を主張している。

3:「政府は事情変更により1983年の国会答弁を変更した」との主張

 高橋氏の主張は、氏が法律論を語るには法的素養があまりにも欠けていることを示して、経済学の専門家であることに対してさえ疑義を呈したくなるほどの暴論である。

 この主張は学術会議法の推薦と任命の関係に関する法律解釈であるため、第一義には立法者意思、つまり国会が立法したときの解釈の遵守がある。それを形式的任命権であると確認したのが、83年の国会答弁である。

 その後、何らかの事情に変更が発生したとしても、法文が改正されなければ解釈も変更されることはない。高橋氏の主張は、民法の契約の解釈において事情の変更により契約条項の遵守が免除されることを生半可に本事例に適用したものであり、あまりにも馬鹿げた法律論であるため、法律学者であれば行うはずがない解釈である。

4:「政府の人事であるため、任命しなかった理由を明らかにできない」との主張

 一般の人事では、「被推薦人6名を任命しなかった理由」が問題となることはないが、この理由はそもそも「任命されるべき被推薦人」など存在しないためであり、本件を「一般の人事の場合」と前提すること自体が論理に反している。

 一般の人事の場合、任命権者は固有の判断により任命するため、その理由を開示する義務もなく、「任命拒否」ないし「推薦拒否」という事態そのものが存在しないが、本件事件は明らかに一般の任命の問題ではない。

5:学術会議が政府機関との断定

 学術会議は法律の規定で設立された内閣が所轄する公的団体である。純然たる政府機関ではなく、内閣から独立した学術研究団体である。会員の地位も特別職公務員であり、職務も行政行為や行政処分行為ではないため、総理大臣から業務執行権限を委任される関係にない。つまり、学術会議は総理大臣から任命される関係にないのだ。そのため、内閣が主に所轄するのは、学術会議への国家予算の投入に関係することとなる。

6:民営化のうそ

 学術会議には、極めて公共性の高い役割をはたすことが期待されている。その研究、考察、助言、提言の範囲は行政のみならず司法、立法の国権全般を網羅する。学術会議は、この広範な範囲について、その時々の内閣の在任期間を超えて継続的に研究、検討する。

 そのため学術会議には、当然のこととして可能な限り予算の手当てを行い国家機関としての存在を保障することが必要であり、単に一内閣の行政事務を執行する政府機関であってはならない。

 政府に対して自由な批判をするためや総理大臣の形式的任命権を理由にして学術会議の民営化を勧めるとは、まったくもって理解しがたい論理である。とくに民営化とは現実には公的支出の拒否であるため、「いうことを聞かなければお金は出しませんよ」という脅すことに等しく、下品きわまる恫喝論法である。

 また、高橋氏のいう民営化とは公益法人化を含むようであるため、国家予算の投入を認めるものであれば、結局は何の意味もない。法人格を付与するためだけの議論であり、当面の議論とはまったく関係がない。

(つづく)

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