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2020年10月27日 10:45

【大阪都構想=大阪市廃止】二重行政解消後も他府県より低い成長率 都構想の不都合な事実

公明・山口代表、大阪入りの背後に菅首相の影

 大阪都構想(大阪市廃止)の「住民投票」(11月1日投開票)が終盤戦に突入した10月26日、反対派の猛追を報じる新聞記事が相次いだ。読売新聞は「『大阪都構想』賛否拮抗 本社世論調査『反対』先月より増」という見出しで、世論調査結果を紹介。1カ月半前には賛成派が「14%」も上回っていたが、23~25日には「3%(賛成44%・反対41%)」となったと報じた。

 一方、同日の毎日新聞は「都構想『反対』が逆転」と銘打って、9月上旬の10%弱の差が僅差ながら逆転、反対(43.6%)が賛成(43.3%)を上回った結果を発表した。報道機関によって多少の数字の違いがあるものの、全体の傾向としては、「反対派の猛追でほぼ横一線に並んだ。最終盤にかけて抜き去る勢い」ということでは一致しているのだ。

 17、18日調査のABC朝日放送の世論調査では、賛成派のリードが3%から7.5%(賛成47.9%、反対40.4%)にまで広がったことから、維新関係者は「18日の公明党の山口那津男代表の大阪入りの効果が出た」と安堵していた。しかし1週間で情勢が暗転、維新が再び焦りまくっているのは確実だ。

 住民投票の結果を大きく左右する要因の1つは、公明党支持者(創価学会員)の動向だ。約1万票差で否決された2015年の住民投票で公明党は反対、都構想が争点となった昨年春の大阪ダブル選挙でも維新と戦ったが、今回は自民党と袂を分かち都構想賛成に転じた。それでも政党支持者別の世論調査で公明党支持者は反対が多い結果となり、国政選挙のような一枚岩の状態とはほど遠かった。山口代表の大阪入りは、賛否が割れる公明票へのテコ入れでもあったのだ。

10月18日に大阪入りした公明党の山口那津男代表。
市内3カ所でマイクを握り、反対から賛成に方針変更した理由を説明、​​​
​賛成を呼び掛けた

 18日の、維新と公明党の合同街宣に駆け付けた創価学会員は「『維新が公明党本部に頼んで山口代表の大阪入りが実現した』と聞いている。山口代表の話を聞きにきたが、反対の考えは変わらない」と語った。そこで維新代表の松井一郎・大阪市長と維新副代表の吉村洋文・大阪府知事に21日と22日の会見で、この“維新依頼説”をぶつけたが、2人とも「公明党が決めたこと」と維新からの働きかけを否定した。

 しかし時事通信は「公明の山口代表、一転大阪入り、都構想賛否拮抗で維新要請か」と銘打った19日の配信記事で、現地入りに慎重だった山口代表が方針転換したことを指摘、公明党内の動きをこう紹介した。「党内からは『焦りを強める維新から強い要請があった』(関係者)との声が漏れる」。

 山口代表が一転して大阪入りしたのはなぜか。すぐに思い浮かぶのが、維新と蜜月関係にある菅首相と懇意の佐藤浩・創価学会副会長コンビによる働きかけだ。「大阪都構想で菅首相『沈黙』 維新と蜜月」と銘打った25日付の産経新聞も、2人の関係に注目していた。

 「首相は公明党の支持母体・創価学会と太いパイプをもつ。学会の選挙実務を事実上、差配する佐藤浩副会長と頻繁に連絡を取り合う関係だ。佐藤氏と松井氏も『本音で話し合える間柄』(維新幹部)だが、2人をつないだのが首相だった」

 維新代表の松井氏が、蜜月関係の菅首相と佐藤副会長と一緒に山口代表の大阪入りを依頼した可能性は十分にあり得る。産経が「水面下では、間接的に維新支援のように見える動きもある」と菅首相の維新支援を示唆したのはこのためだ。同じ見方をしていた私も、22日の松井市長(維新代表)会見で、「佐藤浩創価学会副会長と蜜月関係の菅首相にもお願いしながら(山口代表の大阪入りが)実現したのではないか。何らかの働き掛けをしたのか」と聞いたが、即座に否定した。

 「それは推測でしょう。公明党本部が本気で都構想を賛成多数にするためにさまざまなかたちで活動をいただいている」(松井氏)。

 公明党側の動きであって、維新側からの働きかけを否定したのだ。しかし菅首相が政権補完勢力の維新を支援する理由はいくつもあるように見える。先の産経の記事はこう続けていた。「(菅首相は)カジノを含む統合型リゾート施設(IR)や、25年大阪・関西万博の誘致など維新肝いりの政策も支援してきた。維新幹部は『首相は維新に自民党の本来あるべき姿を重ねているのだろう』と語る」。

 今回の住民投票が否決された場合、維新代表の松井氏は引退すると表明。菅首相にとって“盟友”である松井氏が政界から去ることも、カジノや万博で支援してきた維新が大打撃を受けるのも何としても回避したいと考えているのは確実だ。大阪入りに慎重だった山口代表が一転して方針変更したのは、菅首相と佐藤副会長コンビの関与抜きには考えにくいのではないか。

平然と嘘をつく維新勢力

 反対派の猛追は、都構想のメリットが不明瞭であるのも一因だ。先の創価学会員は「(維新になって)大阪が成長したとも、生活が豊かになったとも思わない」と、11年に始まった維新の府市一体行政を一刀両断にしたが、このことは19日公開の本サイト記事「【大阪都構想】公明・山口代表が大阪入りも学会員は二分」と一致する。11年から16年の大阪府の成長率は「0.58%」で全国平均の「+0.95%」を下回ることを紹介していたからだ。維新の都構想のキャッチフレーズ「大阪の成長を止めるな!」は、間違い(デマ)だったのだ。

 都構想の必要性が瓦解したともいえる。大阪府知事と大阪市長が維新のツートップとなって二重行政は解消、大阪は成長に転じたが、「制度的に定着させるためには都構想が不可欠」と維新は主張している。しかし、二重行政が残る全国平均よりも大阪の成長率が低ければ、都構想(=大阪市廃止と特別区移行)をする必要性は消え去るのだ。22日の会見で、記者は松井氏を再び問い質した。

 ――二重行政を解消した強力エンジンを積んだ大阪のバーチャル都構想と、二重行政を積んだぽんこつ車が競争したら、なぜかぽんこつ車のほうが勝った。維新の強力エンジンがいかさま、まがい物で、詐欺的商法をやっているようなイメージにも思えるが、これをどう理解すればいいのか。成長率が(地方を含む)47都道府県の平均よりも下回っていた。

維新のキャッチフレーズ「大阪の成長を止めるな!」。
二重行政を解消した大阪府の成長率が、
二重行政を残す他府県の全国平均よりも低い事実は、
都構想の必要性を根底から崩す

 松井氏 地方の平均(成長率)を上げているのが宮城、岩手です。当時、震災復興で公共工事がすごいお金が投入されて、これが宮城で+13.9%、岩手は+7.6%。これで平均すると、地方平均がぐっと上がった。

 東日本大震災の復興特需で全国平均の成長率が引き上がり、大阪を上回ることになったというのだ。しかし、この“復興特需牽引説”も説得力は皆無に等しい。宮城も岩手も震災の翌12年に高い成長率となったが、13年以降は右肩下がりに転じ、両県の6年間の平均は2%台。宮城と岩手除く全国平均は「0.88%」で、両県で全国平均「0.95%」を0.07%引き上げたにすぎなかった(福島県を入れても同様の結果)。「地方平均がぐっと上がった」(松井氏)は嘘八百であり、“復興特需牽引説”は大阪府の成長率が全国平均以下であることを逆転させる要因ではなかったのだ。

 復興特需と無縁の「二重行政付ポンコツ車」と成長スピード競争をしても、二重行政解消エンジンの“維新バーチャル都構想号”は負けてしまったことになるのだ。松井氏の弁明を聞くほど、維新がいかに平然と嘘をつき、紛い物の都構想に大金を投じさせる詐欺的商法をしているかを確信することができる。投開票日の11月1日までに、どれだけ多くの大阪市民が維新のいい加減さに気が付くのか。すでに残り1週間を切っている。

【ジャーナリスト/横田 一】

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