2024年03月29日( 金 )

19億円のリースバック資産を流動化、インテリックスの「あんばい」とは

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まだまだ伸びるリースバック市場

(株)インテリックス
執行役員・リースバック事業部長
能城 浩一 氏

 自宅を売却しても、賃貸借契約を結ぶことで、賃料を払いながら住み続けられる「リースバック」。自宅を売ったときには、引っ越しして転居する場合がほとんどだが、リースバックサービス「安住売却(あんばい)」を展開する(株)インテリックスの執行役員・リースバック事業部長・能城浩一氏は、「市場参入して以来、反響が多く、まだまだ伸びる市場と実感している」と話す。

 不動産は、家計資産の大きな割合を占める。「あんばい」の主な利用者は、老後に備えて資金を残したいが、年金や退職金、貯金などの手元資金のみでは不安があり、引っ越しせずに資金を確保したいという60~65歳。リースバックのターゲット層は、自宅を担保に貸し付けをする金融機関などのリバースモーゲージと同じだが、「多くの人にとって、リースバックのほうが資金を確保しやすい」(能城氏)という。

 リバースモーゲージは、一般的に自宅を担保に融資を受け、毎月の返済は利息のみとなるサービス。契約時に所有権は移転しないが、資金用途に制限があることが多い。借入金の返済には、所有者が亡くなった後に担保である土地・建物を売却した資金が当てられることがほとんどだ。不動産を担保に60代に貸し付けるときは、多くの場合、建物の築年数が古いため、会計上の資産価値としては高い評価を得にくい。そのため、リバースモーゲージは利用者の年齢や所得、評価額の最低基準が決められていることも多い。

 資産価値を高く見積もるためには中長期的な中古住宅市場動向を把握することが必要だが、金融機関では市場価値が下落した場合も見込んで査定することが多いため、融資時の不動産評価を低く見積もりがちだという。リースバックは、不動産の所有権は移転するが、一般的に利用できる不動産の幅が広く、資金用途に制約がないのが大きなメリットとなる。

リースバックサービス「あんばい」の仕組み

リノベーションで中古住宅の流通へ

 能城氏は、「自宅の売却後もそのまま住み続けたいというニーズはある」と話す。たとえば、子どもの実家としてお盆や年末年始に迎え入れるために住み続けたいというケース。長年暮らしているまちで、慣れ親しんでいる近所の人々との付き合いもあり、住み続けたいというケース。とくに高齢者にとっては、引っ越しによる生活環境の変化はストレスとなるだろう。また、子どもは実家に戻ることがないため、住んでいる家を売却したいというケースもある。

 「あんばいは定期建物賃貸借契約を結ぶときに、『2~3年ごとに再度契約する』という覚書を取り交わす。第三者に又貸しするなど利用上の問題がなければ、基本的には利用者が望む期間、ずっと住み続けられる」(能城氏)。

 しかし、現実問題としては、入院や介護施設の入居、子どもの住居への転居など、人生の岐路で自宅を手放すことも多い。あんばいでは、自宅の売却時に利用者の年金、退職金などの手元資金を把握し、無理のない家賃を設定しているという。インテリックスの主軸事業はリノベーションであり、築年数が古くなっても、利用者の退去後にリノベーションで再生した住宅を売却することで事業として成り立たせることができるため、家賃を低めに設定できるといった仕組みだ。

 インテリックスが保有するリースバック物件は396件、総額は62億円(2020年8月末)だが、リースバックによって取得した資産を流動化するため、不動産ファンド・(同)あんばいLB1号(ALB1号)を設立。9月30日、インテリックスが所有していた首都圏・近畿圏を中心とする戸建やマンション(68件)からの賃料収入などの配当を受け取る権利(信託受益権)を19億4,100万円でALB1号に譲渡した。

【石井 ゆかり】

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