2024年04月26日( 金 )

後世にすばらしい時代を残すために 学生と企業をつなぐ「Pando」

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

(株)クインテット

「やらせなし」を信条とする美容医療の口コミ広場

 ほとんどの情報がスマートホンを使って調べることができるようになった現代。コロナ禍の影響もあり、Eコマース事業の普及が急速に進んでおり、食事やサービスなど買い物以外では口コミが重要視されている。ほとんどの人が「食べログ」や「Hot pepper」などのポータルサイトを利用した経験があるだろう。この口コミサイトが始まったことで、人々は商品の質や金額とともに口コミを参考にすることを購買するか否かの1つの指標にしてきた。

 これらのサイトは一部、価格.comのように多種多様なカテゴリーを扱うサイトもあるが、医療業界や洋服、食材、旅行など専門サイトも数多くある。今でこそ、口コミには「サクラ」がいる可能性があると消費者の目は厳しくなりつつあるが、インターネットのが普及し始めた当初は疑うものが少なく、意図的に口コミを残す企業も多かったという。

 そのようななか、(株)クインテットが運営するサイト「美容医療の口コミ広場」は、立ち上げ当初からやらせなしを信念としている。約3,500億円市場とされる医療美容業界では、口コミの影響は大きい。食事や日用品の買い物と違い、一度の施術にかかる費用が高く、身体への直接的な影響を考え、慎重に医療機関を選ぶ消費者が多いためだ。多くの医療機関は、口コミの評価によって経営状況が左右されるといっても過言ではない。そのため、評価の低い口コミが投稿されると運営サイトに削除依頼を行う医療機関もある。

 一方、同社は顧客である医療機関に対して忖度をしない。それは正しい情報を発信することで消費者と良質な事業者が出会えるようビジネスを健全化し、業界そのものの発展を目指しているからだ。低い評価が付けられた医療機関には、専門のコンサルが打ち合わせを行いながらより良い医療機関になるための対策をとる。こうした消費者、医療機関への誠実な対応が評価され、美容医療業界でもトップクラスの業績となっている同社が、まったく違うジャンルの事業を開始した。

学生と企業を結ぶプラットフォーム「Pando(パンドゥ)」の誕生

プラットフォーム「Pando(パンドゥ)」
プラットフォーム「Pando(パンドゥ)」

 同社は10年の構想を経て17年末、情報交流サイト「Pando」を開発した。Pandoは、主事業である口コミサイトとはまったく違うジャンルのサイトであり、同社代表取締役社長・松下耕三氏の「後世にすばらしい時代を残す」一心で生まれたサイトだ。そのため、同サイトは学生が無料で登録することができる。

 松下氏の考える、次世代の子どもたちがより良く生きていけるための事業。では、人がより良く生きるとはどういうことなのか、どうすればいいのか。その答えの1つが、多種多様な生き方や考え方の情報を取得・発信できる交流サイトだった。松下氏は、「すぐに得ることのできる表面的な知識だけではなく、本当に大事なことを先人たちから学ぶことができるプラットフォーム」としている。

 現在、若者の主なコミュニケーションツールはSNSだろう。松下氏は、SNSによってコミュニケーションの回数は増えてきたものの、価値観や生き方、思想などを語り合う深い付き合いが少なくなっているのではないかと懸念している。Pandoは、SNSとは違うコミュニケーションツールを提供することで、人と人が「本気」で向き合える環境づくりを目標としている。

 Pandoには情報交換の他にも、より良く生きるために多くの機能を備えている。企業・学生の活動内容を発信する記事、クラウドファンディングの立ち上げ、自らの生き方を改めて考えるヒストリー・ビジョンの構築など。そのうちの1つに学生の就職活動がある。

一生懸命働くことができる企業へ 流される就職活動を止めたい

 厚生労働省が発表した「新規学校卒業就職者の在職期間別離職状況」によれば、高卒・大卒新入社員の3年以内離職率は、2004年の約40%をピークに落ち着きを取り戻しつつある。この2000年代前半に就職活動を行った学生は、就職氷河期世代だ。つまり、就職氷河期時代に苦労して就職した企業を、3年以内に退職する社員が多いということを示している。

 松下氏は、より良く生きるうえで、一生懸命働くことで得られる達成感や満足感が必要不可欠だと考えている。ただ就職するのではなく、ビジョンや目標をもち、自らの意思をもって就職することが重要なのだ。不況下になれば、内定取り消しや採用活動の停止などが起こるため学生が焦ってしまい、その企業で働き、どのような未来をつかむかではなく、就職がゴールとなってしまうこともあるだろう。しかし、こうした動機では、就職しても先が見えず退職してしまう人が増えてしまうのだ。就職活動の目的は、社会人になることではなく、社会人となって自らの人生をどう生きるか決めることにある。

 松下氏は離職者が出る原因について、大手採用サイトや人材紹介企業によって「流された」就職活動が背景にあると警鐘を鳴らしている。企業は学生が自社で活躍してくれる、ビジョンに賛同してくれることを希望しているが、学生はとりあえず内定先を探しているといった状況を素通りして、まずはマッチングを第一優先にしてしまっているのだ。これではお互いにうまくいくはずもない。また、今後はAIやITツールの普及によって人材不足が解消されていき、より「作業」力ではなく、人が生み出す力が必要となってくることは明白だ。

 Pandoでは採用活動を行う企業側にも採用活動の在り方を問い直している。これまで企業における採用活動は人事部が中心となり、何人採用し、どう育成するのかという「業務」の範疇にあった。それゆえ企業のビジョンを共有することは後回しとなりがちで、結果として採用人数ばかりに重点が置かれてきた。

 しかし、採用した人材が人財に成長するためには、経営者や先輩社員が抱くビジョンとのマッチングが欠かせない。人事部だけで採用活動を行っては意味がないのだ。そのため、Pandoを採用している企業では人事部だけでなく経営者や従業員も情報を発信している。大手マッチングサイトとは違い、1回の発信にとどまらずに都度更新することができるため、その会社の「リアル」を伝えているのだ。

 後世にすばらしい時代を残したいという強い思いから始まったPandoに賛同する学生・企業は増え続けており、登録団体は1317団体、登録学生数は2万888人(20年6月現在)に登る。人材業界に一石を投じた新事業・Pandoの挑戦はこれからも続いていく。


<COMPANY INFORMATION>
代 表:松下 耕三
所在地:東京都新宿区市谷本村町2-10-2F
設 立:2005年12月
資本金:1,620万円
TEL:03-6265-0364
URL:https://pando.life/qwintet


松下 耕三 氏<プロフィール>
松下 耕三
(まつした こうぞう)
1977年、福岡県生まれ。東京大学理科二類(農学部)に進学、大学卒業後の2003年、(有)TRCを設立。05年(株)クインテット設立し、代表取締役となる。18年からは新たなビジネスプラットフォーム事業を推進する。

関連記事