都心の利便性と居住性が魅力、福岡市「薬院・平尾エリア」(1)
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2020年11月30日 07:00

都心の利便性と居住性が魅力、福岡市「薬院・平尾エリア」(1)

薬院駅

「住みたい街」ランキング上位常連エリア

 (株)リクルート住まいカンパニーが福岡県内に居住している人を対象に実施したWEBアンケート形式での「SUUMO住みたい街ランキング2020 福岡県版/福岡市版」の集計結果では、福岡県版の2位に「薬院」、13位に「西鉄平尾」がランクイン。また、福岡市版では同じく2位に「薬院」、12位に「西鉄平尾」がランクインした。

 一方で、(株)LIFULLが企画・運営を行う住宅・不動産ポータルサイト「LIFULL HOME'S」が発表した「<九州圏版>2020年LIFULL HOME'S住みたい街ランキング」では、「買って住みたい」カテゴリーの1位に「西鉄平尾」、5位に「薬院」、10位に「薬院大通」がランクイン。また、「借りて住みたい」カテゴリーでも3位に「西鉄平尾」、16位に「薬院」がランクインしている。集計元によって順位に変動はあるものの、「薬院」と「平尾」はいずれも“住みたい街”としての人気ランキング上位の常連エリアだ。

 それぞれのエリアに住みたい理由としては、薬院に対しては「交通利便性が良い」「隠れ家的なカフェやレストラン、雑貨店などが路地に点在していて楽しい」「歩いて天神に行けるので買い物に便利」「注目の店も続々とつくられ、住んでいて飽きないまちだと思う」というような意見が寄せられている。一方の平尾に対しては、「天神・博多へ徒歩圏内なのに落ち着いた雰囲気で、スーパーや青果店、鮮魚店なども充実している」「おいしい飲食店が多い」「中心地に近いのに閑静な住宅街で、公園もあり緑にも近いのが良い」といった意見がある。

 都心部の利便性を存分に享受できる「薬院」と、都心から適度な距離にありながら閑静な住宅街の「平尾」。この隣り合いながらも少しずつ異なる個性をもった2つのエリアは、いかにして生まれ、今日に至っているのか――。

下級武士らの居住区・薬院、人里離れた山村・平尾

 今でこそ居住区として人気の高い薬院や平尾のエリアだが、歴史的には長らく、それほど重要な地としては扱われてこなかった。

 まず「薬院」は約1300年前の奈良時代に、遣唐使である吉備真備(きびの・まきび)が大宰府に赴任した際に、病人の施薬治療を行う施設「施薬院」をこの地に開設したことがその名の由来とされている説がまず1つ。もう1つが、飛鳥時代から唐・新羅と相互に親善使節が往来し、その迎賓館として「筑紫の館」(平安期に鴻臚館と改称)が設置され、滞在する外国使節や貿易商人の病人治療のために、一帯に薬草園を設け、「施薬院」を建てたことが由来だとする説だ。

 いずれにせよ、この地に「施薬院」なる施設があり、それが今の薬院の地名の由来になっているとされているが、実は当時の薬院村は、現在の天神2丁目や大名1丁目界隈にあったとされており、江戸期の福岡城建設にともなって、現在地に移転したとされている。

姿見橋

 なお余談だが、菅原道真公が京から大宰府に左遷される途中に博多に上陸した際、現在の薬院新川(当時の名称は四十川)の水面に自分の姿を映したところ、その自身のあまりのやつれ具合に嘆き悲しんだという逸話が残っている。その場所が、薬院駅の北西に位置する薬院1丁目の「姿見橋」付近だとされており、アクロス福岡前の「水鏡天満宮」の名前もその逸話に由来するものだという。

 前述のように元々の薬院は今の天神2丁目や大名1丁目界隈など、現在地よりも北にあったとされている。江戸期に現在地に移って以降は、一部が武家町だったとされているが、家老級の重鎮が住む城内に、上級家臣が住む大名町、中級の馬廻りの家臣らが住む荒戸一帯ときて、それより下級の武士らが唐人町界隈と薬院付近に住んでいたとされ、さらに下位の足軽などが地行や春吉に住んでいたとされている。

 また、江戸期には薬院界隈に多くの医者が住んでいたとされているが、当時の医者には国家試験も医師免許もなく“なろうと思えば誰でもなれた”ため、現在の医者ほどの地位はなかった模様だ。やはり城から距離が離れるほど土地としての重要度が下がっていったとみられ、江戸期の薬院界隈はそれほど重要な場所ではなかったようだ。事実、江戸期の古地図などを見ると、城の周囲や町人のまちである博多などには多くの地図情報が書き込まれているが、薬院やその南側に位置する平尾の界隈は、ほぼ空白の状態であり、この一帯がそれほど特筆すべき場所ではなかったことを示している。

江戸期の福岡の古地図。薬院や平尾エリアは空白になっている

(つづく)

【坂田 憲治】

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