都心の利便性と居住性が魅力、福岡市「薬院・平尾エリア」(2)
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2020年12月01日 07:00

都心の利便性と居住性が魅力、福岡市「薬院・平尾エリア」(2)

下級武士らの居住区・薬院、人里離れた山村・平尾(つづき)

平尾八幡宮

 慶長の始めの1600年前後には、平尾の産土神(氏神・鎮守の神)として地域住民に今も親しまれる「平尾八幡宮」が、創建の地である高宮村から平尾村の北の小高い現在の場所に遷座された。この平尾天満宮の境内には「平尾天満宮」という神社もあるが、こちらは別名を「容見天神(すがたみてんじん)」ともいい、前出の水鏡天満宮と同じく、菅原道真公との縁がある神社となっている。

 幕末期に平尾の地は、勤王の志士たちが集った日本史の舞台として登場する。当時の女流歌人であり勤王家の野村望東尼(ぼうとうに)は、自身が隠棲していた「平尾山荘」に勤王の志士をたびたび匿うほか、密会の場を提供。長州藩士の高杉晋作や福岡藩士の平野国臣、月形洗蔵などが彼女に便宜を図ってもらったとされる。このころの平尾はいわゆる山村であり、人里離れた平尾山荘は潜伏や密会などにはもってこいの場所だったようだ。

 なお、望東尼は後に捕縛され、糸島の沖に浮かぶ姫島に流されたとされるが、翌年には晋作が指揮する福岡脱藩志士らの手引きで脱出。さらにその後、病に倒れた晋作の臨終を看取ったとされている。その際、著名な辞世の句「おもしろき こともなき世を おもしろく」と晋作が詠んだところ、続けて望東尼が「住みなすものは 心なりけり」と詠んだという逸話が残っている。

平尾山荘

 なお、現在は周囲が公園として整備されて園内には望東尼の銅像が屹立し、茅葺き屋根の山荘が復元・一般公開されている。

 明治期に入ると、1889(明治22)年4月の町村制施行にともない、薬院村、下警固村、庄村、今泉村が合併して那珂郡警固村が誕生するとともに、高宮村、野間村、若久村、屋形原村、平尾村が合併して那珂郡八幡村が誕生した。その後、1912年10月に薬院を含めた警固村が福岡市に編入され、26年4月には平尾を含めた八幡村が福岡市に編入された。福岡市への編入時の人口はそれぞれ、警固村4,932人(12年編入時)、八幡村3,514人(26年編入時)とされている。

鉄道網が整備され戦前には軍施設が集積

西鉄平尾駅

 晴れて福岡市の一地域となったことで、薬院および平尾の周囲にも少しずつ都市化の波が押し寄せてくることになる。

 24(大正13)年4月、九州鉄道(現在の西日本鉄道の前身の1つ)によって、福岡~久留米間の鉄道路線(現在の西鉄天神大牟田線の一部)が開業した。このときに開業した「八幡駅」が、後の「西鉄平尾駅」だ。25年6月には八幡駅から約300m東に、北九州鉄道(後の国鉄・筑肥線)の「新柳町駅」(後に筑前高宮駅に改称)が開業し、それぞれの乗り換えが可能となった。一方で、27年6月には、九州鉄道の「薬院駅」も開業。この薬院駅も、九州水力電気(株)(現在の九州電力の前身の1つ)が27年3月に開業した路面電車「城南線」(渡辺通一丁目~西新)の「城東橋電停」に接続するなど、2つのエリアは早くも交通結節点の様相を呈していた。

 さらに、遡ること23年12月には、福岡市初の浄水場として「平尾浄水場」が完成。現在の浄水通りの地下に埋設された給水管によって、市の中心部への給水が開始され、交通インフラだけでなく、生活インフラも次第に整っていった。しかし、福岡市の中心部である天神などに比べると、薬院や平尾はそれほど都市化が進まず、薬院の辺りにはレンゲ畑や菜の花畑が広がり、前述の路面電車・城南線も田んぼや畑のなかを走っているような状態だったという。

 その後、日本において第二次世界大戦などの戦争への機運が高まっていくにつれて、薬院や平尾界隈には軍関係の施設が集積していった。たとえば、平尾3丁目の現在は県立福岡中央高等学校になっている場所には、旧陸軍省の「福岡連隊区司令部」が置かれていたほか、薬院4丁目の以前は「九電記念体育館」があった場所には、生還した特攻隊員を次の出撃まで収容および再教育していたとされる施設「振武寮(しんぶりょう)」があったという。このため、45年6月19日から20日にかけての深夜に福岡のまちを襲い、罹災戸数約1万2,700戸、死者・行方不明者数1,000人超という甚大な被害を出した「福岡大空襲」では、主な標的となった天神や博多だけでなく、薬院や平尾にも多数の焼夷弾が投下され、大きな被害を受けたとされている。

(つづく)

【坂田 憲治】

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