2024年04月24日( 水 )

「幸先詣」や「オンライン初詣」!?~コロナ禍で変わる初詣のかたち

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 コロナ禍によって、新年の風物詩である「初詣」の在り方も変革を余儀なくされている──。

 大晦日の夜中から正月三が日を中心に、多くの人々が押し寄せるように神社やお寺にお参りする初詣は、例年ならば“三密”の温床ともなりかねない行事だ。そこで、全国約8万社の神社を包括する「神社本庁」では、新型コロナウイルス感染症拡大防止策の指針となる「神社における新型コロナウイルス感染症対策ガイドライン」を策定。神社庁(神社本庁の地方機関)を通じて、各神社に通達している。

 同ガイドラインは初詣だけを対象としたものではないが、具体的な感染症対策として「参拝者へのマスク着用の呼びかけ」「お守りやお札などの授与品は現物陳列ではなく見本を展示する」「手水舎のヒシャクを撤去して流水を用いる」「鈴緒(すずのお)やおみくじなどの際の手指消毒の呼びかけおよび消毒液設置」などを例示。各神社の実情に応じた対策を講じることを呼びかけている。各地の神社でもそれぞれの実情に照らし合わせながら、神社本庁の例示する対策を実践するほか、授与所の増設や授与品の郵送対応、神事への一般参加の取り止め、昇殿人数の制限、露店の出店数制限もしくは中止など、感染症対策に向けたさまざまな取り組みを行っている。

 こうした境内での対策のほか、密を避けるために初詣期間を例年より長く設定したうえでの「分散参拝」の呼びかけなど、“withコロナ”時代の新たな初詣の在り方を模索する神社も増えている。

 その代表例が、年が明ける前の12月から前倒しでの参拝を呼びかける「幸先詣(さいさきもうで)」という取り組み。これは「幸先よく新年を迎えられますように」という願いが込められた新年に先んじた参拝を意味する造語だといい、“年が明けてから初めての参拝”という初詣の基本的な概念からは外れている気がしなくもない。ただし、正月三が日に集中しがちな参拝客を分散させる効果が期待できる点では、“withコロナ”時代に即した初詣の在り方の1つだといえ、この幸先詣を取り入れている神社も多い。

 また、コロナ禍でリモートワークなどのオンラインでの遠隔勤務を取り入れる企業が増えたように、寺社での参拝にも“オンライン化”の波が押し寄せている。たとえば、ともに毘沙門天を本尊とする「天台宗根本山 神峯山寺」(大阪府高槻市)と「信貴山真言宗総本山 朝護孫子寺」(奈良県平群町)の2寺では、「毘沙門天オンライン初詣2021」として、新年の祈祷・祈願をオンラインで無料ライブ配信する取り組みを実施する。「鳥飼八幡宮」(福岡市中央区)でも「オンライン初詣」を実施。こちらは、参拝から賽銭、おみくじ、絵馬奉納、お守り授与までのすべてを手元のスマホから行える仕組みだ。

 コロナ禍での生活様式の変化にともない、初詣にも新たなかたちが生まれてきている。だが、大事なのは形式ではなく、真摯に神さまに向き合うという心のもちようだ。2021年は良い年でありますように――。

福岡県内の主な神社の初詣方針

太宰府天満宮(福岡県太宰府市)

 3月末までを「初参り」の期間として分散参拝を呼びかけるほか、正月の縁起物の授与期間も3月末まで延長。また、門外にも御朱印所とお守り授与所を設置。

宮地嶽神社(福岡県福津市)

 正月三が日を避けた分散参拝を呼びかけ。仮設の授与所などを増設。

筥崎宮(福岡市東区)

 正月三が日の密集・密接を避けるため、1月1日から2月3日までを初詣期間として分散参拝を呼びかけ。1月3日の玉取祭「玉せせり」では、競り子による玉の争奪戦は行わず、神職らによる神事のみを執り行う。新春鳩みくじは中止。

宗像大社(福岡県宗像市)

 混雑緩和を図るため、「幸先詣」として12月1日から2月28日までの3カ月間の期間を設定。また、境内ではお守り授与所および福みくじ授与所をそれぞれ増設する。

住吉神社(福岡市博多区)

 破魔矢・熊手・縁起物は12月から授与。1日の「歳旦祭」および3日の「三日恵比須神社例祭」は神職らで神事のみ執り行い、福引行事は中止。

香椎宮(福岡市東区)

 初詣期間を1月中として分散参拝を呼びかけ。また、「幸先詣」として、12月26日から正月縁起物の授与を開始。

高良大社(福岡県久留米市)

 「幸先詣」として12月中からの参拝を呼びかけ。12月3日以降、新年のお神札、お守、破魔矢・熊手などの縁起物を授与している。

【坂田 憲治】

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