2022年05月27日( 金 )
by データ・マックス

拡大を続ける電子たばこ市場(後)

日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

 たばこの製造業界は非常に保守的で、世界で数社が業界の主導権を握っている。世界最大手は米国のフィリップモリスで、2位はブリティッシュ・アメリカンたばこ、3位は日本の日本たばこ産業(株)(JT)である。

 1つの国のたばこ製造企業は基本的に1社。ライバルの存在しない珍しい業界でもあり、1兆ドルという巨大市場を世界の数社がコントロールしてきた。

 一方、紙巻たばこの需要は近年減少し、たばこ市場の需要は電子たばこへとシフトしつつあるため、業界に大きな変化が起こることが予想される。各企業の電子たばこへの対応によって、市場シェアが大きく変動する可能性が十分ある。

 世界の電子たばこ市場は現在、226億ドル(2兆5,000万円)規模といわれている。わずか5年前には42億ドル(約4,300億円)規模であり、その市場が急速に成長していることが良くわかる。

 電子たばこの市場は米国が他国を大きく引き離して1位、日本が2位、イギリスが3位であり、この3カ国が電子たばこの大きな市場となっている。人口の多い中国やインドでは、電子たばこの販売が禁止されているためだ。

 電子たばこがこのように消費者に受け入れられている理由は、世界的に健康志向が高まるなかで、紙巻たばこの代替策として生まれた加熱式たばこの技術が発達し、従来の紙巻たばこの味に近い喫味を実現できるようになったことが挙げられるだろう。

 しかし、電子たばこ市場では、規制が成長阻害の大きな要因となっているのも現状である。米国FDA(米国食品医薬品局)は2020年1月に、香料を使用したフレーバー付電子たばこ製品に関する規制の枠組みを発表した。米国で電子たばこ製品の使用による急性肺疾患の報告が急増しており、2,500人が入院して50人が死亡したという。

 専門家の間では、電子たばこの長期的な使用による人体への影響はまだわからないこと、電子たばこの液体に含まれるニコチンが有害()であること、フレーバーによってどれほど人体に影響があるのかまだわからないことなど、懸念材料が残るとされる。

 一方、世界最大手のフィリップモリスは日本市場に「アイコス」という加熱式たばこを投入し、大成功を収めている。現在は安定的な供給が確保されているが、発売当初は品薄状況になるほど、市場の反応が良かった。紙巻たばこから電子たばこに移行しようとする利用者層のニーズにうまく合致した結果と考えられる。アイコスの成功に刺激されて、ブリティシュアメリカンたばこは「グロー」、JTは「プルームテック」、インペリアルタバコは「パルズ」などを市場に投入し、各社がしのぎを削っている。

 電子たばこが世界たばこ市場に占める比率は現在、1~2割にすぎないが、今後、紙巻たばこが減り、電子たばこが増加すると見込まれ、各社の対応に注目が集まっている。たばこの味を楽しめるようにしながら、ニコチンやタールなどの有害物質をいかに減らしていくのか、たばこの加熱効率の改善、洗練されたデザインのたばこの開発など、各社は今後、技術の腕を競い合うだろう。

 今後、電子たばこの技術をもっている企業が、大手たばこ企業に買収されるケースも発生するだろう。潤沢な資金にものを言わせて大手企業が躍進するのか、それとも市場に変化が訪れるのか、今後の動向に高い関心が集まっている。

※:日本国内で販売されている電子たばこには、ニコチンは含まれていない。 ^

(了)

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