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2021年01月15日 07:00

日本のメガバンクにおけるみずほ銀行グループの「駄目さ加減」研究(後)

国際金融ジャーナリスト 桐生 直行

 (株)みずほフィナンシャルグループがほかのメガバンクになぜ劣後し、これほど脆弱な組織になってしまったのかを見つめ、さらにグローバル金融市場での競争に直面する「メガバンク」と呼ばれる企業集団の将来について、予測したい。

 次に、銀行業務のコスト削減の努力について、改めて述べたい。銀行は、民間企業である一方、重要な社会インフラでもある。社会インフラの機能を疎かにすると社会、経済に大きな影響をもたらすが、社会インフラの維持、向上に資する領域は付加価値が低く、それだけでは生産性が低い。そのため、この分野は、民間企業として考えるとリストラ、合理化の対象であるが疎かにはできない、いわば、「社会的使命」ともいえる分野でもある。

 社会インフラを維持、向上しながら経営の合理化を進めるためには、社会的コンセンサスが重要で、金融機関の自己都合だけでは合理化を進めることができない。そのような制約を受けつつも、店舗数の削減、預金通帳の削減・撤廃、審査機能のAI化など、具体的に一定の成果は上がりつつある。しかし、メガバンクは、この分野でも残念ながら欧米の金融機関の後塵を拝している。

 多くの欧米の銀行は、事務部門を子会社化し、人件費の安い国(欧州では旧東欧諸国、アジアでは南アジア)、地域に事務部門の子会社を設立することで、単純事務の効率化、人件費の削減を図っている。子会社であるため、その運営に合わせた報酬体系で設計できる。

 加えて、ITを活用した徹底的な事務効率化による事務ミスの削減、人件費のカット、銀行固有業務の不正予兆管理により、安定した社会インフラを低コストで提供するべく、日々、尽力している。一方、日本のメガバンクでは、このような割り切った運営はまだ行われていない。このため、欧米の金融機関に比べて、高コスト体質にとどまっている。その結果、欧米の金融機関のリテール業務の経費率は50~60%であるのに対し、メガバンクは80%を上回っている。

 一方、専門職を必要とする分野に関しては、ますます金融手法が高度化し、グローバル競争が激しくなっている。富裕層の投資エリア、M&Aの対象、株や債券の投資家も、グローバルな競争にすべてさらされている。すべての人材を経営層に送り込む人材育成を目指すメガバンクの総合職の人事制度では、専門職のニーズをカバーすることは到底できない。10年を越える同一部署での勤務を許されず、転勤を余儀なくされる専門職人材は、築いてきたキャリアを維持、向上させたいがために、メガバンクから外資系金融機関に転職していく。

 また、優秀な中堅専門職銀行員は、転勤に直面しなくても、メガバンクの硬直した報酬体制に嫌気が差し、成果次第で高収入を約束する外資系金融機関に自発的に転職してしまう事例も頻発している。この分野では、日本企業の特徴である「融和」「均一」を良しとする制度では、グリーバルな金融競争を勝ち抜くことはできない。

 今回は、みずほフィナンシャルグループがほかのメガバンクになぜ劣後してしまい、さらに日本のメガバンクは世界の金融機関に比べて何が欠けているのかを考察してきた。テーマは異なるものの、それぞれの原因は、社内の融和と均一性の保持に起因しているといえる。「融和」「均一」は、日本では称賛され、日本企業の強みでもあるのだが、グローバル競争では、弱点ともなる。そのなかでは、ともすれば忌諱(きい)されがちな報酬の格差を前提とした人事制度の導入も避けて通れない。

 報酬の格差を前提とする人事制度の導入で先行するサッカーや野球界を鑑みれば、回答は自明の理だろう。一流選手は、続々と日本を離れ、あるいは、離れようとしている。この選手らは、海外に移住していくため、ある意味、わかりやすい。しかし、金融機関の優秀な人材は、外国資本の銀行の日本拠点に留まることになる。本来、日本の金融機関のグローバルな存在価値を高めることに貢献できる人材が多く流出している

 今回述べてきた改革を怠ると、日本のメガバンクの将来は、世界のなかの「日本地域銀行」として、欧米の有力銀行の日本語下請機関としてのみ価値を重宝がられる存在になることであろう。

(了)

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