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2021年01月24日 07:00

【長期連載】ベスト電器消滅への道(5)

 かつて家電業界で日本一の売上高を誇ったベスト電器がヤマダ電機に完全に吸収された。なぜ、このように消滅するという事態になったのか!当社は長期にわたってベスト電器に関する記事を連載してきた。まず、ベスト電器がかつてビックカメラと合併しようと画策を講じたが、破談となった当時のことを報告する。

ベスト電器の再生を阻む過去のくびき(5)

(2012年3月12日掲載)

 ベスト電器は2010年1月、有薗会長、濱田社長が経営責任をとって退任し、深澤政和副会長が代表取締役社長に、井澤信親氏が代表取締役専務となる新人事で年を明けた。しかし、わずか2カ月で深澤、井澤両代表取締役が辞任。小野浩司現社長体制となったが、実はこの事業構造改革の舞台裏はあまり知られていない。約2年経った今、詳らかになったことを以下記しておきたい。

ベスト電器 事の発端は、3期連続の当期欠損という過去に例を見ない業績悪化が確実となったからだった。同月に300億8,000万円の借り換えをシンジケートローンで行なう話があったが、メイン行で代表金融機関だった西日本シティ銀行(以下、西シ)は「今の状況では応じられない」とした。

 そこで、デューデリジェンス(詳細な資産調査)を行なうことになる。不動産資産の再評価ほか、経営者以下の組織、業績回復の戦略・戦術面まで具体的に踏み込んだ。調査はKPMGジャパンに委託し、調査費用はベストが支払った。

 デューデリジェンスの評価結果が、(1)拡大戦略の失敗(全国・海外展開の負担)、(2)経営者の責任(有薗、濱田、深澤3氏の経営能力の問題)の2点。拡大戦略の縮小については、不採算店や現在有する社員や資産の合理化を図ることで解決を試みた。人事面では、指名解雇に近い退職金引当も必要になり、資産面に関しては、時価会計適用による減損問題が生じた。

 経営者の責任を問われたとき、3氏ともショックを受けたそうだ。ただし、この3氏が一度に辞めてしまうと経営が成り立たないという銀行の判断に基づき、以前から銀行対応の窓口で経理畑を歩んできた深澤氏を社長に推すことになる。

 ただ問題が1つあった。深澤氏は経営失敗の張本人の1人だったのだ。最たるものは、1946年に創業した家電量販店「さくらや」の買収だ。拡大路線の一環で深澤が肝いりで進めたM&A事業で、首都圏販売網の拡大を狙っていたとされる。しかし、結局は赤字が続き、10年2月期は売上高357億4,400万円に対し、当期純損失74億3,600万円を計上。同6月に解散した。

 では、なぜ深澤氏が社長に推されたのか。それは、西シからの指名があったためで、「同行のある人物と深澤との間に密約が存在した」とする関係者もいる。

 時は1月12日の役員会。デューデリジェンスによって指摘された懸案事項が議題として出され、資産のスクラップ、売却などの案件が話し合われた後、深澤社長就任の案件が審議された。有薗・濱田・深澤の3氏を除く役員による投票結果で決めることになったが、反対多数で否決。そこで濱田氏が推薦され、圧倒的多数で支持された。

 つまり、いったん深澤氏は不適任として否決されているのだ。ところが当時、会長だった有薗氏は銀行側から「深澤さんを社長にするように」ときつく言われていた。そこで、役員を説得するため、有薗氏(と銀行)の意を汲んだ濱田氏は条件として「深澤氏の社長は1年だけ」「対抗馬として別に代表取締役をつけること」を提案した。翌日、記者発表となった。

 深澤氏は、昔から社長のポストが悲願だったとされる。もともと有薗氏とは反・北田葆光の共同戦線を張っていたが、有薗氏が先に社長となったことで確執が生じた。さらに、その後は有薗氏の独断で濱田氏が社長となった。一枚岩に見える有薗、濱田、深澤の3氏だったが、実情は以上の通りだったと聞かれる。

(つづく)

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