西部ガスの株価から見えるもの

4月1日に西部ガスHD発足

　西部ガス（株）は2019年12月24日に開催された取締役会で、21年4月をメドに純粋持株会社体制への移行と地域に根差した事業体制への移行を主な内容とする、西部ガスグループ新体制への移行について検討を開始することを決議。それから1年3カ月を経て、今年4月1日に西部ガスホールディングス（以下、西部ガスHD）が発足する予定となった。

　今年1月2日現在で東証1部上場のエストラストを含む連結子会社33社は、分野別に集約されて傘下企業となる。西部ガスHDは持株会社として引き続き、東証（1部）上場を維持する予定。グリーンランドリゾート（株）（旧三井グリーンランド）と（株）マルタイ（マルタイ棒ラーメン）の2社は持分法適用会社となる予定だ。

　【表1】、【表2】を見ていただきたい。西部ガスと子会社エストラストの経営成績推移表である。

～これらの表から見えるもの～

　◆西部ガスの21年3月期第3四半期（12月期）の:売上高、営業利益、経常利益は新型コロナウイルスの影響を受けて前年比マイナス。四半期純利益は▲3億8,400万円の赤字となっているものの、21年3月期（通期）の当期純利益は15億円の黒字予想となっている。

　◆エストラストの21年3月期第3四半期（11月期）の売上高は前年比マイナス。営業利益は▲2億8,100万円、経常利益は▲4億700万円、四半期純利益も▲2億8,500万円の赤字に転落している。ただ、21年2月期（通期）では売上高、営業利益、経常利益、当期純利益とも前年比で大幅なプラスを予想している。

　【表3】を見ていただきたい。エストラストと西部ガスの株価推移表である。

～この表から見えるもの～

　◆エストラストの2月17日の株価は前日比＋2円の713円（同＋0.28%）。一方、西部ガスは同▲34円の2,996円（同－1.12%）となっている。

　◆17年1月23日、西部ガスはエストラストに対して、友好的なTOBにより子会社化することを発表。

　・買付価格はTOB公表前営業日（1月20日）の675円×18.52％（プレミアム）＝800円。
　・買付予定数の上限は314万5,200株（所有割合51％）で、買い付け予定額は25億円。
　・エストラストの筆頭株主だった笹原友也代表取締役社長（現会長）は所有株式195万株（31.62％）のうち、193万株（31.30％）についてTOBに応募。15億4,400万円（193万株×800円)を手にしている。

　◆エストラストの主要株主（20年2月末現在）は西部ガス 51.0％、岡部産業4.3％、笹原友也2.8％、松川徹1.7％、山口銀行1.6％、福岡銀行1.4％となっている。

笹原社長の「1人勝ち」

　【表3】を見ていただきたい。エストラストの2月17日の株価は713円。17年2月に笹原社長がTOBに応じて株式売却してからの4年の間、800円を超えることは1度もなかったことがわかる。株価から見れば、3年前に西部ガスと経営統合し、エストラストの株式売却を決断した笹原社長の「1人勝ち」と言っても過言ではないのではないだろうか。

【（株）データ・マックス顧問　浜崎　裕治】