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2021年02月22日 07:00

世界平和の基盤としての経済~コロナ後の世界経済と平和の構築(中)

名古屋市立大学22世紀研究所・特任教授 中川 十郎 氏

 政治、文化、平和の基盤は経済である。平和の基盤である世界経済がグロ-バル化した世界で急激に感染拡大したコロナ・パンデミックにより、世界は戦後最大の経済不況にあえぎつつある。コロナ後の世界経済をいかに立て直し、格差のない社会と世界平和を希求すべきか。格差拡大をもたらしつつある資本主義の再構築も含めて、経済の視点から平和問題を論じる。

(3)世界平和と経済発展

 政治、社会、文化、平和構築の基盤は経済である。従って、平和希求のために、まず基盤である経済の強化が肝要である。

 イタリア・ルネサンスはフローレンス(フィレンツェ)の金融財閥メディチ家の財力が基盤にあった。ローマ帝国は領土内の経済基盤を固め、パクス・ロマーナ(ローマによる平和)をもたらした。産業革命で世界の7つの海を制覇した英国はパクス・ブリタニカの下、世界を制覇した。2つの大戦に勝利した米国は戦後、世界のGDPの50%近くを押さえ、20世紀後半にはパクス・アメリカーナの下、世界の軍事、経済、政治を押さえた。

 しかし、21世紀に入ると世界の経済発展の軸がアジアに移動しつつある。アジアと中国が中心のパクス・アシアーナ、パクス・シニカの世紀が到来しつつある。アジアの世紀、とくにポスト・コロナの世界は、これまでの大量生産、大量消費、大量環境破壊、利益追求1点張りの古い資本主義から、利害関係者すべてが恩恵を受ける格差の少ない社会、平和な世界の構築にアジアが主導して尽力すべきと思われる。世界の平和構築には政治、文化、平和のための基盤である世界経済を発展、強化し、世界を豊かにすることが必須だ。

 地政学的には、21世紀に発展するアジアから平和を構築する努力が肝要だ。東アジアでは発展しつつあるASEAN(東南アジア諸国連合)10カ国からなるAEC(アセアン経済共同体)、さらに2020年11月に締結された画期的なRCEP(東アジア包括的経済連携)がカギとなる。RCEP は、ASEAN10カ国に豪州、ニュージーランド、日本、韓国、中国を加えた15カ国が参加しており、インドは脱退したが、人口22.6億人(世界の30%)、GDP26兆ドル(世界の30%)に及ぶ。

 英国も参加を申請したTPP(環太平洋経済連携)などで経済基盤を強化し、世界の経済発展と世界の平和構築に向けてさらに努力することが望まれる。TPP の加盟国は11カ国。その人口は5.1億人(世界の6.7%)、GDPは11.3兆ドル(世界の13%)だ。

 一方、中国、ロシアが主導し、タジキスタン、キルギス、カザフスタン、ウスベキスタン、インド、パキスタンの8カ国が加盟するユーラシアの広域経済圏SCO(上海協力機構)、ロシア、カザフスタンが主導し、ベラルーシ、キルギス、アルメ二アが加盟するEEU(ユーラシア経済連合)に加え、21世紀に発展が見込まれ、世界の陸地面積の40%を占めるユーラシア大陸を中心とした中国が注力する広域経済圏構想「一帯一路」などがアジア、ユーラシア、アフリカなどで、ポスト・コロナにおいて大きな影響力を発揮するものと思われる。

 日本もこれらのアジア、ユーラシアの広域経済圏構想に、世界平和の観点からも参加を真剣に検討すべきと思われる。

(つづく)

主要参考文献:
1.『ファクトで読む米中新冷戦とアフター・コロナ』近藤大介、講談社現代新書、2021年1月
2.『人新世の「資本論」』斎藤幸平、集英社新書、21年1月
3.『菅政権と米中危機』手嶋龍一・佐藤 優、中公新書ラクレ、20年12月
4.『地政学』奥山真司、新星出版社、20年10月
5.『シルクロード世界史』森安孝夫、講談社選書メチエ、20年9月
6.『スーパー大陸 ユーラシアの地政学』ケント・E・カルダ、潮出版社、19年11月
7.『最新 世界情勢地図』パスカル・ボニファスほか、ディスカヴァー・トゥエンティワン、19年3月
8.『人間の経済』宇沢弘文、新潮新書、17年4月
9.『茶の本、日本の目覚め、東洋の理想』岡倉天心、ちくま学芸文庫、12年6月
10.『ユーラシアの地政学』石郷岡 建、岩波書店、04年1月


<プロフィール>
中川 十郎(なかがわ・ じゅうろう)

 鹿児島ラサール高等学校卒。東京外国語大学イタリア学科・国際関係専修課程卒業後、ニチメン(現:双日)入社。海外駐在20年。業務本部米州部長補佐、米国ニチメン・ニューヨーク開発担当副社長、愛知学院大学商学部教授、東京経済大学経営学部教授、同大学院教授、国際貿易、ビジネスコミュニケーション論、グローバルマーケティング研究。2006年4月より日本大学国際関係学部講師(国際マーケティング論、国際経営論入門、経営学原論)、2007年4月より日本大学大学院グローバルビジネス研究科講師(競争と情報、テクノロジーインテリジェンス)

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