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2021年02月24日 07:00

世界平和の基盤としての経済~コロナ後の世界経済と平和の構築(後)

名古屋市立大学22世紀研究所・特任教授 中川 十郎 氏

 政治、文化、平和の基盤は経済である。平和の基盤である世界経済がグロ-バル化した世界で急激に感染拡大したコロナ・パンデミックにより、世界は戦後最大の経済不況にあえぎつつある。コロナ後の世界経済をいかに立て直し、格差のない社会と世界平和を希求すべきか。格差拡大をもたらしつつある資本主義の再構築も含めて、経済の視点から平和問題を論じる。

(4)和をもって貴となす

 世界平和構築のためには、まず、ポスト・コロナを見据えた21世紀の構想を構築すべきである。新型コロナの世界的流行は人々の生活様式を変えるのみならず、世界経済や国際秩序の在り方を一変させた。二大国の米中対立は貿易から先端技術、人権問題、安全保障へと拡大し、米中が対立を深めるなか、我が国はこれまで以上に外交手腕の発揮が求められている。21年以降のポスト・コロナ時代を見据えて変化する世界情勢を見極め、欧州を含むユーラシア地域やインド太平洋の動向を把握し、21世紀のアジアの時代に備えて、とくに域内の大国、中国とインドとの関係を強化しつつ米国、欧州との関係強化も図る必要がある。

 そのためにはコロナ危機を絶好の機会としてとらえ、デジタル・トランスフォーメーション、リモートワークを含めた新たな働き方を希求することが必要だ。コロナで世界のグローバリゼーションは減速したが、各国は地球温暖化という21世紀の地球人類の難題への解決に向けて動き出しつつある。

 米バイデン新政権はパリ協定への復帰を宣言。世界最大のCO2排出国の中国の習近平・国家主席は2020年9月の国連総会で60年までにCO2排出量を実質ゼロにすると表明した。日本も50年にCO2排出量をゼロにすると確約。協力なしには解決できない環境問題に各国が取り組み出したことは国際協調、世界平和構築のためにもすばらしいことである。日本、中国、インドが相協力して、まずアジアからCO2排出量ゼロに向けて協力すべきであろう。

 聖徳太子は1400年前、「和をもって貴となす」と喝破された。格差のない21世紀という新たなる万人の幸せを目指し、平和を希求する新資本主義の構築に日本が率先して尽力すべきだ。それが広島、長崎で原発の「洗礼」を受けた日本の使命でもあろう。

 『南洲翁遺訓』で「敬天愛人」「天から与えられた道を実践せよ」と喝破した西郷隆盛、『論語と算盤』の渋澤栄一の儒教思想、「アジアは1つ」とアジアの結束を唱えた岡倉天心、国際主義を早くから標ぼうした新渡戸稲造、禅の思想を喧伝した鈴木大拙、平成に著書『人間の経済』などで「富を求めるのは道を開くためである」「資本主義の暴走を止めよ」と唱え、ノーベル経済学賞候補にもなった宇沢弘文・東大名誉教授などの思想を世界平和の基盤として活用すべきである。

 ユーラシア大陸のシルクロードから日本文化の源流を受け入れた日本はポスト・コロナの21世紀の世界経済再構築、世界平和希求に向けて今こそ尽力すべき時である。

(了)

主要参考文献:
1.『ファクトで読む米中新冷戦とアフター・コロナ』近藤大介、講談社現代新書、2021年1月
2.『人新世の「資本論」』斎藤幸平、集英社新書、21年1月
3.『菅政権と米中危機』手嶋龍一・佐藤 優、中公新書ラクレ、20年12月
4.『地政学』奥山真司、新星出版社、20年10月
5.『シルクロード世界史』森安孝夫、講談社選書メチエ、20年9月
6.『スーパー大陸 ユーラシアの地政学』ケント・E・カルダ、潮出版社、19年11月
7.『最新 世界情勢地図』パスカル・ボニファスほか、ディスカヴァー・トゥエンティワン、19年3月
8.『人間の経済』宇沢弘文、新潮新書、17年4月
9.『茶の本、日本の目覚め、東洋の理想』岡倉天心、ちくま学芸文庫、12年6月
10.『ユーラシアの地政学』石郷岡 建、岩波書店、04年1月


<プロフィール>
中川 十郎(なかがわ・ じゅうろう)

 鹿児島ラサール高等学校卒。東京外国語大学イタリア学科・国際関係専修課程卒業後、ニチメン(現:双日)入社。海外駐在20年。業務本部米州部長補佐、米国ニチメン・ニューヨーク開発担当副社長、愛知学院大学商学部教授、東京経済大学経営学部教授、同大学院教授、国際貿易、ビジネスコミュニケーション論、グローバルマーケティング研究。2006年4月より日本大学国際関係学部講師(国際マーケティング論、国際経営論入門、経営学原論)、2007年4月より日本大学大学院グローバルビジネス研究科講師(競争と情報、テクノロジーインテリジェンス)

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