2024年04月26日( 金 )

新型コロナと労災認定

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 2021年1月30日には、福岡県内での新型コロナウイルス感染者が、累計1万6,000人を超えました。特定の施設や職場でのクラスター発生など、業務により新型コロナウイルスに感染した労働者は、労災の認定を受けられるでしょうか。

 労働災害(業務災害)と認められるには、「業務中に起こったことか(業務遂行性)」「業務と疾病に一定の因果関係があるか(業務起因性)」の2つの要素から判断されます。この認定は労働基準監督署が行い、個別の事案ごとに調査し判断することになっています。

 伝染病の場合、判断にあたっては感染経路の特定が重要となります。業務中に感染者と接触した可能性があったとしても、調査の結果、業務外での感染者との接触などが疑われ、感染経路が特定できなかったとされれば、業務起因性を否定される恐れもあります。新型コロナウイルスについても、潜伏期間の長さや症状がなくても感染を拡大させるリスクがあることなどの特性があり、市中感染が拡大しているため、感染経路の特定は相当困難です。現に、福岡県における1月末時点での感染経路不明者の割合は40%を超えています。

 そこで、厚労省はこの点について通達で、当分の間は調査により感染経路が特定されなくとも、業務により感染した蓋然性が高く、業務に起因したものと認められる場合には、労災保険給付の対象とするとしています。さらに具体的には、次の通りです。

1.
患者の診療、看護、介護の業務等に従事する医師、看護師、介護従事者等が感染した場合には、業務外で感染したことが明らかである場合を除き、原則として労災保険給付の対象となります。

2.
医療従事者等以外の労働者であって感染経路が特定されたものについては、感染源が業務に内在していたことが明らかに認められる場合には、労災保険給付の対象となります。

3.
医療従事者等以外の労働者であって感染経路が判明しない場合であっても、感染リスクが高いと考えられる次のような業務((1)(2))に従事していた場合には、ウイルスの潜伏期間内の業務従事状況、一般生活状況などを調査したうえで、医学的専門家の意見も踏まえて判断されます。

(1) 複数の感染者が確認された労働環境下での業務(請求人を含め2人以上の感染が確認された場合をいい、労働者のみならず施設利用者が感染している場合も含む)
(2) 顧客などとの近接や接触の機会が多い労働環境での業務(例:小売業の販売業務、バス・タクシー等の運送業務、育児サービス業務)

   以上のように判断の簡素化が図られたことで、労災の補償がより円滑に実施されることが見込まれます。事業者としても、事業継続と並行して感染した場合の補償がどうなるのかを把握しておき、万が一のときには、労働者の労災補償申請を支援することなどが望まれます。


<INFORMATION>
岡本綜合法律事務所

所在地:福岡市中央区天神3-3-5 天神大産ビル6F
TEL:092-718-1580
URL: https://okamoto-law.com/


<プロフィール>
岡本  成史
(おかもと・しげふみ)弁護士・税理士
岡本綜合法律事務所 代表
1971年生まれ。京都大学法学部卒。97年弁護士登録。大阪の法律事務所で弁護士活動をスタートさせ、2006年に岡本綜合法律事務所を開所。経営革新等支援機関、(一社)相続診断協会パートナー事務所/宅地建物取引士、家族信託専門士。ケア・イノベーション事業協同組合理事。

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