2024年03月29日( 金 )

コロナとトランプの先に潜む新たなデータ覇権争いと人体への影響(前)

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 NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」の記事を紹介する。今回は、2021年2月26日付の記事を紹介する。

 アメリカで行われたバイデン新大統領の就任式は前代未聞であった。なぜなら「影の主役はコロナ」といっても過言ではなく、何から何まで“異例づくめ”の展開となったからだ。首都ワシントンDCの中心部は3万人もの警察、州兵で固められ、道路、橋も地下鉄も閉鎖。国軍からは生物兵器や電磁波攻撃へ備える特殊部隊までもが配備された。というのも、「中国軍がワシントン攻撃を準備中」といった偽情報までもが飛び交ったからであろう。

 通常であれば、全米から数十万人が集まり、新大統領の門出を祝うのが習わしとなっていた。しかし、今回は「コロナの感染阻止が最優先」となり、一般聴衆の参加は一切認められなかった。その代わり、20万本のアメリカ国旗が連邦議事堂とリンカーン記念堂を結ぶ広場「モール」を埋め尽くした。人の代わりを国旗が演じるという演出に頼らざるを得なかったわけだ。

 バイデン新大統領は「国民の融合、団結」を訴えたが、力で抑えるしか分断のリスクを回避できず、前途は厳しいと言わざるを得ない。政権が交代する際には、各省庁の幹部約2,000人が交代するのだが、新たな政治任命者への挨拶も「ズーム」で行われた。俳優のトム・ハンクス氏が司会役を務めた祝賀コンサートもバーチャルで実施された。その意味では、1月20日の大統領就任式典はバーチャルとデジタル時代を象徴するものになった。

 一方、Qアノンや過激なトランプ支持者らは「トランプ再選を勝ち取る最後のチャンス」と息巻いていたが、新大統領の就任式の妨害や乗っ取りは実現せず、各州の州都で警戒された抗議デモもないままであった。いわば「腰砕け」の反バイデン運動で終わったのである。直前まで危惧されたが、連邦議事堂が一時占拠された1月6日のような騒乱の再来はなかった。

 トランプ前大統領は結局、史上最低の支持率を置き土産に、ホワイトハウスを明け渡すことに。1月20日のバイデン新大統領の就任式にも参加せず、アンドリュー空軍基地で200人ほどの支持者を前に、自分勝手な退任式を行うのが精一杯という有り様だった。この退任式の場で「カムバック宣言」を行ったが、具体的な展望は明らかにされず、フロリダ州の別荘に向かい飛び去った。

 もちろん、慣例化していたホワイトハウスでの新旧大統領夫妻による歓談もせず、慌ただしくワシントンを後にしたのである。最後の言葉は「戦いは始まったばかりだ。別のかたちでカムバックする。それまでしばしのお別れだ」というもの。先の大統領選挙では共和党候補としては過去最高の7,400万票を獲得したことをバネに「4年後を目指すのでは」といった観測も出てはいた。そのため、「Patriot Party」(愛国者党)と銘打った新党結成の噂も飛び交ったが、その後も中身のある動きは見えない。

 いずれにせよ、新党結成などの噂が盛り上がったのは1月6日の連邦議事堂の占拠事件が起きる前の話。過激なデモを扇動したというわけで、在任中に2度目の弾劾裁判の訴追を受けることになり、「すでに現職の大統領ではない」という理由で訴追は免れたものの、4年後の再選という可能性は限りなくゼロになった。

 その後、フロリダを拠点に「前大統領トランプ事務所」を立ち上げたものの、展望は見えず、本人は相変わらずゴルフ三昧の日々を送っている。一時期まで、「間違いなく大勝していた」と大見えを切っていたトランプ前大統領だが、逆転劇のためのカードを次々と切ったものの、すべてが裏目に出てしまった。

 本人を含め、周辺には「先の大統領選挙は不正行為が行われ、トランプと書かれた投票用紙がバイデンにすり替えられた。ドミニオンと呼ばれた票の集計機に事前に組み込まれたソフトが外部から操作された。また、コロナのせいで郵便投票が実施されたため、民主党のバイデン陣営が大量の偽郵便投票用紙を印刷し、開票所に持ち込んだ。選挙に勝っていたのはトランプだ」と「選挙無効」を騒ぎ立てる声が響き渡った。

 とはいえ、各州議会や州知事もほとんど聞く耳をもたなかった。その上、最高裁も不正選挙訴訟を門前払いに処する決定を下した。大半の判事が共和党による指名で任命されていたにもかかわらずであった。

 要は、選挙結果を覆せなかった最大の理由は「各州、とくに接戦州の共和党議員団や知事らを説得できなかった」わけで、「自分ファーストへ固執」したトランプ前大統領による個人的パフォーマンスの限界を露呈したに過ぎないのである。いうまでもなく、すべては「身から出た錆」に他ならない。

 それでなくとも、共和党の主流派からも“トランプ離れ現象”が拡大する一方である。そうでなければ、共和党が主導権を握る接戦州の議会で「バイデン票の見直し」が議決されたはずである。ところが、すべての州で、トランプの思惑は覆されてしまった。法廷闘争にもちこもうとしたトランプ陣営の動きは州レベルに止まらず、頼みの最高裁からも門前払いを食わされた。

 すべての原因はトランプの自己中な言動にあるのだが、本人はまったく気付いていないようだ。起死回生を期して、最後はペンス副大統領を脅かし、連邦議会での採決を中止させようとしたが、それまで“トランプ命”のように忠実な僕(しもべ)を演じてきたペンス氏に、「そうした権限は与えられていません」とはっきり拒絶されてしまった。これではトランプの自尊心は丸つぶれだったろう。

 実は、トランプに三下り半を突きつけたのは、共和党の議員だけではなく、これまで政治献金を重ねてきた大手の金融機関や国防産業が一斉に距離を置き始めたので、トランプも真っ青で、思えば、退任式の発言にも元気がなかった。


著者:浜田和幸
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