2024年04月29日( 月 )

「3密」回避で高まるアウトドア需要~インスタントハウスでグランピング(後)

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 コロナ禍で「3密」を避けられるグランピングやキャンピング宿泊の需要が伸びている。春から夏にかけてアウトドアシーズンが本番を迎える。新たな生活様式が浸透するなか、新たなニーズが生まれようとしている。

無人駅をグランピング施設に

 (株)VILLAGE INC.はJR東日本から出資を受けて、群馬県の無人駅である土合駅で「インスタントハウス」4棟が並ぶグランピング施設「DOAI VILLAGE(どあいヴィレッジ)」を昨年から運営している。

「DOAI VILLAGE」(群馬県利根郡みなかみ町)の
インスタントハウス

 土合駅は1日の電車の本数が10本弱で、平均利用者数は20人ほどであるが、百名山の谷川岳への登山客に利用され、「日本一のモグラ駅」として鉄道ファンに知られている。同社のCAMP事業部マネージャー・國部龍太郎氏は、「旅行には行きたいが、アウトドアで宿泊したいという人によく利用されています。便利な場所ではなく、人が少ないことも安心材料になっているのでしょう。屋外でのアクティビティを楽しみに訪れるカップルや家族、友人同士の利用が多いです」と話す。

 「DOAI VILLAGE」に設置されているインスタントハウスは、(株)LIFULLが名古屋工業大学・北川啓介教授、VILLAGE INC.と提携して開発した約半日で施工できる「家」だ。「DOAI VILLAGE」にはベッドが備わっていて、暖房も完備されている。

 設置方法はシンプルだ。まず、ポリエステル生地に空気を入れて大きく膨らませると、ドーム型のテントの外観が完成。その後、内側からウレタン材を吹き付けて、しばらく乾燥させると、生地とウレタン材が定着するという仕組みだ。ウレタン材は断熱性があり、オイルヒーターを使えば冬も暖かい。

インスタントハウスの設置の様子

 インスタントハウスは、設置時には風で飛ばされないようにペグで地面に固定するが、ペグを外すと大人4人で持ち運べる重さで、「不動産」ではなく「動産」に該当。見た目は「家」のようだが、扱いとしてはテントに近い。内部は、ベッドを2つまたはベッドとソファを置ける約15m2の広さで、高さは最大4.1m。価格は148万円(税別、施工費込み)。

 耐用年数は現在算定中だが、國部氏は「メンテナンスは必要ですが、『REN VILLAGE』では2019年10月に設置してから1年半使い続けています」と耐久性の良さを指摘している。

インスタントハウス内観

 「DOAI VILLAGE」は、ストーブに薪をくべるだけで使えるサウナ小屋を楽しむために利用する人が多いという。このサウナは、(株)Libertyshipが地産地消の国産材を利用してつくったものだ。また、近くには駅舎を改修したカフェもあり、地元の利用者も多い。

 「地元に根付いた施設を目指し、地元の人々との関係を築くことを大切にしています。さらに今後は、グループの貸し切り利用も見込んで、インスタントハウスを増やす予定です」(國部氏)。JR東日本の無人駅でのグランピング宿泊施設について、拠点を拡大する予定だ。

旅行やキャンプなど「非日常」の楽しみが「日常」に

 國部氏は、コロナ禍の下での消費者行動について次のように説明する。

国産材でつくったワンサウナ(バレルサウナ)

 「コロナ前は、旅行やキャンプなどの『非日常』の楽しみは普段の生活から離れていましたが、コロナで家のテラスでのバーベキューや自宅の食事をおいしくする調理器といった巣ごもり家電などがはやり、日常のなかに『非日常』な体験が溶け込むようになりました。そのため、広い庭や山をもっている人なら、普段の生活の範囲で非日常を楽しみたいとインスタントハウスを設置したり、テラスがある人なら、セルフビルド方式で素人でも半日で建てられるパーソナルサウナを利用したりするのではないでしょうか」。

 「VILLAGE INC.」は今年4月以降、インスタントハウスやサウナ(予定販売価格:約120万円)の一般向けネット通販を開始する予定。國部氏は「現在は開発段階ですが、将来は誰もが手軽に買える価格を目指しています」と打ち明ける。普段の生活で気軽に「非日常」を体験したいという潜在ニーズの大きさに着目しているようだ。

(了)

【石井 ゆかり】

(前)

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