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2021年03月29日 15:58

韓国電池メーカーにフォルクスワーゲン発ショック

日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

既存自動車メーカーも電気自動車へシフト

 世界の電気自動車販売台数は2019年の210万台から30年には2,580万台と、市場が10倍以上に成長することが予測されている。今までの電気自動車業界は、イノベーションを旗印に新規参入したテスラがリードしてきたが、最近では既存の自動車メーカーも電気自動車の開発、生産に力を入れ始めている。そのため、早ければ22年ごろにはテスラの独走は終焉を迎え、電気自動車販売で2位につけているフォルクスワーゲンと競合することが予想されている。

 フォルクスワーゲンは電気自動車分野で覇権を取るため、25年までに電気自動車およびハイブリッド車に約460億ユーロを投資することを明らかにした。今年度の販売目標は昨年の42万2,000台の2倍以上となる100万台に設定し、ヨーロッパでは、電気自動車の割合を70%に引き上げるという強気の計画も発表した。

 業界のアナリストは、フォルクスワーゲンが25年まで260万台の電気自動車を生産し、目標は無事達成されるだろうと見ている。加えて、フォルクスワーゲンは既存の自動車工場を電気自動車工場に転換すればよいため、テスラのような新規メーカーに比べてコスト的にも有利であり、スピーディーに対応できるというメリットもあるという。

 このような点を考慮すると、フォルクスワーゲンが電気自動車業界をリードする日も遠くないと思われるが、テスラが自動運転などのソフトウェア面の開発で2~3年ほど他社をリードしているようだ。フォルクスワーゲンだけでなく、GM、現代自動車、トヨタ自動車なども遅れを取らないように電気自動車へのシフトを加速させている。そのなかでも、フォルクスワーゲンは電気自動車業界2位の座に就いているものの、今後、1位に躍り出る可能性が高いとされている。

価格競争力を左右する電池

 各メーカーは、電気自動車の価格競争力を左右する電池の価格をいかに下げるかということに命運をかけている。

 業界のレポートによると、昨年のリチウムイオン電池の価格は1KWhあたり132ドルであったが、30年にはその半分である61ドルになると予想されている。電池の価格は需要が拡大することによって、これまでも大きく低下しており、10年から19年の10年間で約8分の1となっていることがわかる。今後、需要が増加して技術開発が続けば、価格がさらに下がるのは間違いない。電池価格の下落は、電気自動車の普及という好循環をもたらすだろう。

 車載電池は、円筒形、パウチ形、角形とさまざまなタイプがある。韓国の電池メーカーであるLGエナジーソリューションとSKイノベーションはパウチ形の生産が主力である。世界最大の電池メーカーである中国のCATLやBYD、スウェーデンのノースボルト、韓国のサムスンSDIは角形、パナソニックは円筒形がメインである。中国企業は角形に力を入れている反面、韓国企業はパウチ形に強い。

 このような状況のなかで、今まで韓国の電池メーカーから電池を購入していたフォルクスワーゲンが、これからは電池の生産を内製化して23年から角形電池の適用を開始し、30年までに角形電池を搭載した電気自動車の割合を80%まで高める計画があることを発表し、韓国の電池メーカーに衝撃が走っている。この計画によると、26年までは今主流となっているパウチ形を使うが、26年以降は角形が主流になるという。

 角形電池はパウチ形や円筒形に比べ、構造的に安全性が高いというメリットがあるようだ。安全性もさることながら、フォルクスワーゲンが角形を選択した背景には、今後、電気自動車の最大市場となる中国市場を意識した決定ではないだろうかと推測されている。

 加えて、フォルクスワーゲンは米国と中国で販売される自社の自動車のうち、半分以上を電気自動車にする意図があることも明らかにした。ヨーロッパで6カ所に電池工場を設立して電池生産を内製化するだけでなく、その年間生産量を韓国の電池メーカーの最大手であるLGエナジーソリューションの世界生産能力である120GWhの2倍以上の240GWhにすると発表した。

韓国電池業界への大きな波紋

 今までのフォルクスワーゲンの電気自動車プラットフォーム「MEB」は、ヨーロッパではLGエナジーソリューションが最大の納品会社で、SKイノベーションはそれにつぐ電池の供給会社であった。

 ところが、フォルクスワーゲンが今後、パウチ形から角形に電池を切り替える計画を発表したため、数年後には上記の2社のフォルクスワーゲンからの受注が減少することが予想される。

 一方、角形電池を主力としてフォルクスワーゲンに電池を供給してきた中国のCATLは今まで以上に世界市場シェアが伸ばすことが予想されている。CATLは世界最大の電気自動車市場である中国市場でシェアを確保し、17年から4年連続で電池生産の世界1位の座を占めている。

 CATLの主流となる角形のリチウムリン酸鉄電池はエネルギー密度が低いが、価格が安いというメリットがある。CATLは価格を武器に世界で需要を伸ばしているだけでなく、技術革新にも尽力している。

 中国市場を考慮すると、フォルクスワーゲンはCATLと提携し、またCATLが採用している角形電池を利用するのが良い戦略になるだろう。今回のフォルクスワーゲンの発表が電池業界への大きな波紋になるのは間違いなく、電気自動車市場はこれからますます競争が激しくなると予想される。一方で、車載電池は近い将来に次世代電池である全固体電池に移行するため、電池業界の動向からこれからも目が離せない。

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