Reco(株)(福岡市中央区)は6月、美容師向け独立支援型シェアサロン「Reco(リコ)」の事業を、業界大手のサロウィン(株)(東京都渋谷区)へ譲渡した。Recoは福岡・天神エリアにてシェアサロン文化の先駆けとして知られ、地元に根付いたブランドとして成長してきた。
Recoは2020年4月に1号店をオープンし、現在までに4店舗を展開。創業者・黒木遼太氏が掲げたのは「フリーランスや独立志望の美容師が、低コストで挑戦できる環境の構築」だった。5年の間にRecoに登録した美容師は延べ240名、現在も130名が在籍しており、この間Recoから独立をはたした美容師は10名を超える。
黒木氏は今回の事業譲渡について、サロウィンが掲げる「美の多様性を支える仕組みの創造」というビジョンに共鳴したと語り、「より多くの美容師にチャンスと環境を提供するための前向きな決断だった」と述べている。
出店計画阻んだコロナ禍とコスト高

Recoは当初、短期間で10店舗以上の出店を計画していた。しかし、コロナ禍の影響に加え、内装工事費や物件賃料の高騰により、拡大戦略は見直しを余儀なくされた。黒木氏は「創業時から出店コストが1.5倍に上昇し、当初の成長戦略が困難になった」と振り返る。
シェアサロンは実店舗が必要なビジネスであり、スタートアップであるRecoにとっては出店費用が大きなハードルだった。そこで同社は、物件の賃借や初期投資を担う「テナントオーナー」を頼った。Recoが運営を担当し、テナントオーナーと収益を分配する事業モデルだ。
スタートアップのリアル、華やかさの裏側
21年、Recoは第三者割当増資による資金調達も実施し、シェアサロンシステムを全国の美容室経営者へ展開しIPOを目指した。しかし、黒木氏は「当時は資金調達をすることが事業に対する熱量より重要と感じていた」と述懐。「キラキラした起業家ストーリーに見えるかもしれないが、実態は地道な運営とリスクの積み重ねだった」と率直に語る。
また、事業譲渡に際して、テナントオーナーとの運営に関する権利関係や株主の対応に翻弄(ほんろう)され、今回の事業譲渡における反省もあったという。
Reco(株)は、24年7月に「(株)リョウ・キャピタル・コーポレーション」へ商号変更。今後は不動産活用事業に回帰し、まずはコンサルティング業務を中心に展開する予定だという。
「Recoの運営支援は継続しつつ、すでに新たなプロジェクトも動き出しています。今後は福岡と大分に拠点を構え、仲間たちと新しいステージに挑戦していきます」と黒木氏は語り、新たなビジネスフェーズへの意欲を見せている。
【永上隼人】