2022年01月17日( 月 )
by データ・マックス

【BIS論壇No.339】国家安全保障局(NSS)経済班

 NetIB‐Newsでは、日本ビジネスインテリジェンス協会会長・中川十郎氏の「BIS論壇」を掲載している。
 今回は2021年4月2日の記事を紹介。

 政府の国家安全保障局に経済安全保障の司令塔を担う「経済班」が設置され、4月1日で1年が経った。政権内では国家安全保障戦略を改定し、経済安保を初めて盛り込む案が浮上しているという(『朝日新聞』3月31日付)。

 国家安全保障局は約90人、経済班は約20人で、総括調整班、政策第1、2、3班、戦略企画班、情報班につぐ規模だ。経済安保政策はその多くが中国を見据えたものだという。この経済班は新型コロナウイルスの水際対策も担っているという。

 政府の主な経済安全保障政策は (1)安全保障上重要な土地の取引の規制、(2)5Gやドローンなどの国産開発、(3)外資規制対象に医薬品と医療機器を追加、(4)ドローンの政府調達から中国製を排除、(5)政府が調査研究を民間委託する際の審査を厳格化し、米中が覇権を争う中、「安全保障」と「経済」の融合を目指すという(朝日3月31日)。

 政府は経済班を30人に増員するというが、コロナ対策も含めた多くの業務をわずか30人で行うなど不可能に近いのではないか。

 政府は増員にあたり、厚労省のほか、農林水産省や水産庁の職員を投入することも検討。食糧危機への対応や、尖閣諸島周辺海域での中国公船の領海侵入を踏まえた海洋権益保護も強化するという(『SankeiBiz』 2020年6月1日付)

 たかだか30人ほどの経済班でこのような広い範囲の対策を行うのは、人員的にも不可能だと思われる。そもそも、日本政府の情報戦略に対する認識があまりにもお粗末すぎる。

 米国では、CIA(中央情報局)を中心とする情報機関は2万1,575人を擁し、年間150億ドル(約1兆5,000億円)の予算をかけている。経済情報についても、当時のロバート・ゲーツCIA長官が1992年に業務の4割、予算の3分の2(1兆円)を経済分野に充てることを決定。さらに、当時のCIA長官のターナー海軍大将は「冷戦後は軍事情報(ミリタリーインテリジェンス)よりも経済情報(ビジネスインテリジェンス)が国家の命運を決める」と唱え、とくに日本およびヨーロッパの経済情報収集を開始した。

  日本では、内閣情報官による総理大臣への直接報告は週1回、20~30分といわれているが、米国ではCIA長官による大統領への世界政治・経済の報告は毎朝、1時間行われているという。ここでも日本政府の情報軽視の実態が表れている。

 コロナ対策での菅内閣の後手、後手の対応ぶりを見ても、情報の収集、分析、活用の初歩的対応が疎かになっていることが感じられる。日本の情報後進国ぶりは目を覆うばかりだ。


<プロフィール>
中川 十郎(なかがわ・ じゅうろう)

 鹿児島ラサール高等学校卒。東京外国語大学イタリア学科・国際関係専修課程卒業後、ニチメン(現:双日)入社。海外駐在20年。業務本部米州部長補佐、米国ニチメン・ニューヨーク開発担当副社長、愛知学院大学商学部教授、東京経済大学経営学部教授、同大学院教授、国際貿易、ビジネスコミュニケーション論、グローバルマーケティング研究。2006年4月より日本大学国際関係学部講師(国際マーケティング論、国際経営論入門、経営学原論)、2007年4月より日本大学大学院グローバルビジネス研究科講師(競争と情報、テクノロジーインテリジェンス)

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