2024年04月24日( 水 )

【縄文道通信第66号】「縄魂弥才」「縄魂漢才」「縄魂洋才」「縄魂汎才」

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 Net-IB Newsでは、(一社)縄文道研究所の「縄文道通信」を掲載していく。
 今回は第66号の記事を紹介。

「縄魂弥才」から「縄魂汎才」への系譜

 哲学者の梅原猛氏は縄文時代の文化が約1万4,000年と人類史のなかでも稀に見る長期の文化であり、この縄文文化が日本人の文化の源流で基層を形成していることを、早くから見抜いた慧眼の歴史学者であり哲学者でもあった。

 この縄文文化の後に朝鮮半島と中国大陸から高度な文化が伝わってきた。鉄器、青銅器、稲作、工具、土器製作技術など弥生人が日本に渡来して多くの先端技術を縄文人にもたらした。

 梅原猛氏は、この縄文人たちが弥生文化の先端技術を受け入れたことを「縄魂弥才」と命名した。この言葉はその後「和魂洋才」という言葉にもつながっていった。要するに大和の魂をもちながら外来文化を吸収し日本化する才覚の最初の言葉が「縄魂弥才」であった。

 縄文道の立場から見ると日本の歴史は以下のように「縄魂弥才」から現代の「縄魂汎才」の系譜になると思う。

「縄魂弥才」

 BC800~AD300、弥生時代の渡来人の到来と縄文人との融合の時代。人口学者の説では飛鳥時代までに約100万人が到来したといわれる。

「縄魂漢才」

 AD300~AD 900、古墳時代から飛鳥時代の中国大陸との交流と倭の国の遣隋使(600~618年)と日本国が派遣した遣唐使(630年~894年)の時代。菅原道真の建議で終了までの時代。

「縄魂洋才」

 第1期:1543年~鉄砲伝来、1549年キリスト教伝来、1639年南蛮船入港禁止令までの約100年間の開国。
 第2期:1854年~日米和親条約締結~欧化政策、1933年~国連脱退まで、日本軍部台頭でナショナリズムに強く傾斜してゆく。
 第3期: 45年~第2次世界大戦、敗戦~開国、国際化、2019年グローバル化、インターネット化、国連とアメリカとヨーロッパの影響、国際化時代。

「縄魂汎才」

 19年、令和元年、コロナ危機、DX時代の到来。

・日本文化の価値の根底的見直しと評価
 クールジャパンの伝搬、柔道のオリンピック種目採用、和食の世界伝搬、日本ウイスキーはスコッチを抜いた(世界のトップ3は和製ウイスキー)、合気道人口世界で約140万人、座禅人口の増大(カトリック司祭も含め、アップル創業者の故スティ―ブ・ジョブズをはじめ)、日本アニメーション文化の世界的影響。

・日本の科学技術力の世界的浸透
 戦後のノーベル賞受賞者26人のうち22人は科学技術関係者。「ハヤブサ」の世界的偉業。世界最速の世界最大のコンピューター「富岳」の存在、特許出願数は世界第3位(20年28万3,926件で中国、アメリカにつぐ)。

・縄文文化の普遍性、世界性
 とくにSDGsの価値観を縄文時代に実現していた。その主たる価値観とは、自然との共存、共生と平和思想である。

 以上が系譜だが、最も重要な歴史的側面は弥才、漢才、洋才の後に日本人が縄文人の文化的遺伝子を継いで和風化、日本化する、すなわち日本化する力を内包していることだ。この点、梅原猛氏は縄文文化が基層にあったので日本化できたと喝破している。

 具体的には、弥生時代の後300年~600年、主に古墳時代は弥生人との融合で文化を倭国化していった。遣唐使の後、平安時代に平仮名、カタカナを使用し和風文化を形成。紫式部の源氏物語は代表である。

 鎌倉時代には武士階級の出現により武士道の基盤ができ、さらに室町文化でわび・さびの茶道、座禅文化も完成させた。鎖国後の江戸時代は過去の日本文化を集約して、多くの絢爛豪華なる江戸文化を形成した。

 1933年国際連合を脱退して軍部が台頭しナショナリズムを煽った結果は、鬼畜米英という悪しき排外主義を生み出した。45年の敗戦後、平和国家として再出発し約75年が経過した。この間の世界レベルでの飛躍と発展は説明した通りである。

 令和に入って、世界が大変革期に突入し、併せてコロナという世界的危機に直面している。梅原猛氏は、日本の歴史を俯瞰すれば縄文時代に形成された文化的遺伝子には復元力と合わせて環境適応力を備えていると指摘されている。未曽有の歴史的な大転換期でかつコロナ危機に日本は「縄魂汎才」で艱難辛苦を乗り切れると確信する。

 汎才とは、日本人が過去営々として形成してきた弥才、漢才、洋才を総合化した和才である。また、先に説明してきた国連が宣言した持続可能な成長をすでに実現してきた縄文文化という、世界に発信できる普遍的価値観のある汎才を有しているからである。

 縄文道を当初から支援していただいている、日本の最高の考古学者といわれる国学院大学教授の小林達雄博士は、最近「縄文文化が日本人の未来を拓く」という著書を徳間書店ら出版されている。この書籍の趣旨も、まさに「縄魂弥才」から今こそ「縄魂汎才」への転換を示唆されていることと思う。

 日本はこれから想定される気候変動、天災地変、米中対立による政治・軍事・経済危機、コロナ後の経済の混乱など、多くの問題に直面するであろう。これら艱難辛苦は、「縄魂汎才」で乗り切れると確信する。


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