2024年03月28日( 木 )

橋下維新勢力の黒い背景

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 NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事を抜粋して紹介する。今回は、「すでに政界引退を表明した橋下徹氏と吉村大阪府知事のメディアでの過剰登場はCIAの情報工作と考えられる」と訴えた5月13日付の記事を紹介する。

「白いネコでも黒いネコでもネズミを取ってくるのが良いネコだ」
という言葉がある。

東京都の小池百合子都知事にさまざまな問題があることは事実としても、いま、東京五輪を中止するという重大案件に小池百合子氏の貢献余地があるなら、その力を活用することは悪いことでない。

日本医師会の中川俊男会長が自民党の自見英子参院議員の政治資金パーティーに参加したことが批判されているが、これも批判の矛先の中核を間違えている。
中川氏がパーティーの発起人代表だったから、中川氏が批判されるのはやむを得ない面がある。
しかし、最大の責任者は政治資金パーティーを主催した自民党議員自見英子氏であることは間違いない。

まん延防止など重点措置が発動されているなかでの政治資金パーティー開催をよしとしていたことが問われるべきだ。
本気で感染抑止を考えるなら、大規模パーティー開催を禁止すべきだ。
菅内閣が政治資金パーティー開催を禁止していなかったのではないか。

パーティー自体が問題なら、批判の矛先は中川氏ではなく自見英子氏、あるいは自民党総裁の菅義偉氏、あるいは内閣総理大臣の菅義偉氏に向けるべきだろう。

菅内閣の中途半端な政策対応に対して中川氏は常に厳しい意見を発していた。
菅内閣からすれば、中川俊男氏は政府に苦言を呈する問題人物であったはず。
このことは、菅内閣の最悪政策を批判する市民にとって、中川俊男氏の存在が有意義であることを意味する。

「敵の敵は味方」の言葉がある。
物事のベクトルの方向を正確に見極めて論評することが必要だ。

コロナ対策で最大失策の1つはコロナ病床を確保していないこと。

問題拡大から1年3カ月の時間が経過する。
日本の病床数は世界有数。

日本のコロナ被害は欧米比で極めて小さい。
だが「さざ波」ではない。
年率換算で3万人から5万人規模の死者発生を「さざ波」と表現すべきでない。

かけがえのない多くの人命が奪われている。
政府が注力すべき最重要事項の1つが病床の確保。
まずは、国公立病院、国公立大学病院の病床を確保すべきだ。

1年以上の時間が経過するができていない。
「感染研ムラ」関係者が所属する医療機関も十分な病床を提供しない。
これが最大の問題。

「さざ波」と表現する厚労省元技官が声を張り上げて
「日本医師会が悪い」
と叫ぶ。

「日本医師会」に問題がないとは言わない。
しかし、民間医療機関の場合、経営の採算性という問題がある。
病床を提供して医療機関が破綻する事態を回避しなければならない。

病床提供に対して必要十分な補償がなければ安易に病床を提供することはできない。
順序として、まずは、国公立病院、国公立大学病院の病床を確保することが優先されるべきだ。

厚労省元技官はこの問題に触れずに日本医師会攻撃だけを叫ぶ。
問題の核心は菅内閣の医療マネジメント能力。
内閣の指導力を発揮して、国公立病院、国公立大学病院のコロナ病床確保を実現すべきだ。

必要があれば予算措置も取れる。
巨大な補正予算を編成して、病床確保すらしてこなかった菅内閣の責任が問われる。

菅内閣はGoTo事業で感染拡大を全面推進した。
変異株に対する水際規制をザル対応にした。
このために、東アジア最悪のコロナ被害を生み出した。
適正な政策対応を実行していれば、余裕で五輪を開催できたはずだ。

感染を爆発させて10万人規模の外国人を入国させることは国家に対する破壊活動と言って過言でない。
破壊活動防止法の適用を検討すべきだ。

小池氏に対する批判が多数存在するのは承知するが、黒でも白でも五輪を中止することが重要であることを見落とせない。

人々の情報入手のツールとして活用されているのはテレビ、ラジオ、新聞、そしてインターネットの情報サイト。
これらのすべてにおける「維新系」人物の登場がいたずらに大きい。
インターネットのニュースサイトに橋下徹氏が登場しない日がない。

不自然に登場回数を増やすのが難しくなったのだろう。
テレビの情報番組に帯で出演させるようになった。
この仕組みをつくれば、番組内での発言をそのまま記事にして毎日発信できる。

橋下氏の言説がとりわけ優れているとはとても思えない。
別の力が働いて、現状が創出されていると考えられる。
CIAの情報工作であると考えられる。

すべての走りは2008年に観察される。

私は08年7月14日に
「偽装CHANGE」VS「真正CHANGE」
と題するブログ記事を掲載した。

https://bit.ly/3tM0T18

フジテレビが月曜9時のドラマ枠で
「CHANGE」
と題する政治ドラマを放映した。

主演は木村拓哉。
スポンサーはトヨタ。
主題歌はマドンナが歌う“Miles Away”
https://digitalcast.jp/v/28111/

目的は小沢一郎氏が代表に就任し、政権交代の可能性を高めるなかで、非自民の「隠れ自民」第三極勢力を立ち上げることにあったと思われる。
これを「偽装CHANGE」と表現した。

09年になって渡辺喜美氏が中心になって「みんなの党」が創設された。
しかし、非自民票の受け皿になり切れず、民主党を基軸とする政権樹立を阻止できなかった。

この流れの延長線上に創作されたのが「維新」勢力である。
12年、野田佳彦氏が09年総選挙での公約を破壊して消費税大増税法制定に突き進んだ。

「シロアリを退治しないで消費税上げるんですか」
と絶叫したのが野田佳彦氏だった。
シロアリを一匹も退治せずに消費税大増税に突き進んだ。
この暴挙に民主党議員が立ち上がった。

本来は増税派が民主党を離れるべきだ。
ところが、増税派はひさしを借りて母屋を占拠した。

「シロアリ退治なき消費税増税をやらない」
との政権公約を守り抜こうとした民主党議員が民主党を離党して新党を創設した。
「国民の生活が第一」
だ。

この勢力こそ、正真正銘の「第三極」勢力だった。
国会議員数は50名を超えた。

ところが、メディアが「国民の生活が第一」を一切報道しなかった。
メディアが宣伝し続けたのが「橋下維新」である。
連日連夜、維新報道一色に染め抜いた。
「維新」の設立パーティーを連日連夜放映し続けた。

これに対して、「国民の生活が第一」がホテルニューオータニで開いた設立パーティーには維新パーティーを上回る市民が押し寄せた。
ところが、このパーティーに合わせて維新勢力の石原慎太郎都知事が辞意を表明。
「国民の生活が第一」パーティー報道が皆無にされた。
報道を皆無にする大義名分をつくるための辞意表明だった。

12月2日、「国民の生活が第一」の延長線上に登場した「未来の党」の衆院選公約発表が行われた。
この日に中央高速笹子トンネル崩落事件が発生。
フジテレビ夜の報道番組は全時間をトンネル事故に充当した。
この事件が「国土強靭化」公約の素材に使われた。

トンネル崩落は「事故」でなく「事件」であった疑いが濃厚だ。

この延長線上にすでに政界引退を表明した橋下徹氏過剰登場、吉村大阪府知事過剰登場があることを見落とせない。


▼関連リンク
植草一秀の『知られざる真実』

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