2021年12月09日( 木 )
by データ・マックス

長谷部采配ズバリ、アビスパ逆転で6連勝 福岡2-1湘南

 サッカーJ1リーグのアビスパ福岡は5月22日、ホームのベスト電器スタジアムに湘南ベルマーレを迎えて第15節の試合を行った。アビスパはここまでクラブ記録となるJ1リーグ戦5連勝をしており、さらに勝利を積み重ねられるかに注目が集まる。

 湘南ベルマーレには、かつてアビスパのエースストライカーとして活躍したFWウェリントン、2019年に期限付き移籍としてアビスパでプレーしたDF石原広教が在籍。2人とも湘南の中心選手として活躍しており、この試合はいわば里帰りというかたちになる。とくにFWウェリントンは、コンディションの関係から途中交代での出場にとどまっていたが。

 梅雨の合間の好天のなかで迎えた今節の試合は、まるでジェットコースターのように目まぐるしく展開が変わる一戦となった。

 今期のアビスパは、前線からプレスをかけて相手に自由なパス回しをさせないプレースタイルが成果を出している。この試合でもFWブルーノ・メンデス、FW渡大生が前からプレスをかけるが、湘南の1.5列目にあたるMF山田直輝、MF名古新太郎をなかなかつかまえ切れない。湘南はMF山田、MF中村駿からボールを両サイドに散らし、中央で待ち構えるFWウェリントンにボールを集める作戦であるが、アビスパDFドウグラス・グローリ、DF奈良竜樹の両センターバックがウェリントンに肉弾戦を挑み、有利な状況をつくらせない。湘南が押し気味ながら、一進一退の攻防が続く。

 思わぬかたちでゲームが動いたのは、前半31分。アビスパのコーナーキックを湘南DFがクリアし、そのボールを拾った湘南MF中村が前線に大きく蹴り出す。そのパスを受ける位置にいたMF名古に対し、アビスパMF前寛之は最終ラインを上げてオフサイドトラップを仕掛ける。スタジアムのサポーター、DAZNの中継アナウンサー、加えてアビスパの選手らも完全なオフサイドだと判断したが、MF名古はプレーを続行。ドリブルで持ち上がり、アビスパGK村上昌謙との一対一を制してゴールに流し込んだ。笠原寛貴主審はVAR(ビデオアシスタントレフリー)の確認を経て、ゴール成立の判定を下した。思わぬかたちで湘南が先制する。

 そして42分、またもVARの機会が訪れる。アビスパDF志知孝明がペナルティエリア内に鋭いクロスを上げるが、これを湘南MF岡本拓也がブロック。この際岡本の左腕がボールにあたったとして、VARの結果ハンドの判定。アビスパにPKが与えられる。

 PKを蹴るのはFWメンデス。VARの判定待ちのあいだにボールをセットして集中を高めていたが、ここでは湘南GK谷晃生(U-24代表選出)の集中力が上回った。完璧な読みとセービングを披露して、メンデスのPKをストップ。試合は湘南1点リードの状況で前半を終えた。

 納得しがたい失点、そしてエースのPK失敗。普通に考えればムードは最悪、というところだが、自分たちのスタイルを貫いて連勝を続けているアビスパはそうはならなかった。長谷部茂利監督が、素早く手を打ったのだ。

 後半開始時に、MF金森健志に代えてMFジョルディ・クルークス、FW渡に代えてFWフアンマ・デルガドをピッチに送り込む。MF金森、FW渡ともに労を惜しまず攻守に奔走していただけに、プレー内容に問題があったわけではない。クルークスには右サイドからの精密な左足クロス、フアンマには前線で体を張ってボールを収めるポストプレーが期待される。

 57分にはMFクルークスのゴールに向かって鋭く曲がるクロスボールにFWフアンマが飛び込むシーンが生まれ、交代カードがアビスパに新しいリズムを刻んでいく。

 試合が再度動いたのは64分。DFエミル・サロモンソンが蹴ったフリーキックを、ニアサイドにいたFWメンデスがヘディングで競り勝って見事なゴール。先ほどのPK失敗を帳消しにする値千金の一発だ。

 さらに70分、これもDFサロモンソンのコーナーキック。FWメンデスがニアサイドでヘディングシュートを叩きつけるが、これは湘南GK谷がセーブ。しかしそのこぼれ球に向かって、DFグローリが矢のように走り込み、そのままゴールネットに突き刺す。絶対不利の状況を覆す逆転ゴールだ。

 この後、湘南は元日本代表MF梅崎司らを投入して逆襲を試みるが、メンデスに代わってピッチに入ったFW山岸祐也らが前線から厳しいプレスをかけ続け、湘南に攻撃の組み立てを許さない。80分過ぎにはDF湯澤聖人、DF宮大樹をピッチに送り込むことで、長谷部監督はチームに「このまま守り切れ」と明確なメッセージを伝える。

 試合は2-1、アビスパ福岡の逆転勝利に終わった。前半と後半でまるで鏡の裏表のように局面が入れ替わる難しい試合だったが、これをひっくり返したのはハーフタイムでの長谷部監督の交代策だ。同じポジションでも特徴の違う選手を投入することで、試合のリズムを変える。まさに采配の妙といえるだろう。

 これでJ1リーグ戦6連勝。もちろんアビスパのクラブ史上最高の記録だ。16試合を消化して8勝4分4敗、勝ち点は28。順位は変わらず5位だ。次に対戦する横浜FC、大分トリニータは現在降格圏に沈み、どうしても勝ち点が欲しい状況だ。とはいえアビスパもさらに上を目指し、連勝を続けていくために勝利を狙う。両試合ともアウェー開催のため、DAZNでアビスパの雄姿に声援を送ろう。

【深水 央】

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