2024年05月15日( 水 )

我が国の再生、「鍵」は人事評価制度改善と給与格差縮小にあり(後)

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 この状況を変える方法はただ1つ、"加点主義"へと戻し、"敗者復活戦"を導入することだ。これは以前から話されていることであるが、現実には実行されていない。政治家は勇気をもって、この仕組みを早期に整えることが肝要である。優秀な人もそうでない人も、人は必ずどこかで失敗する。それを棚に挙げて、人を責めるのは愚の骨頂ではないか。これは野党も与党同様に人気がない理由の1つにも思える。

 全ての人に再生と復活のチャンスを与えることが肝要である。失敗は成功のもととなるのは古今東西変わるものではない。

 とくに、加点主義に反対すると思われる管理型組織の代表である金融機関から始めることが重要である。新型コロナウイルス感染拡大により、多くの中小企業とその経営者、労働者、派遣切りに遭った低所得者などは、政府の"義侠心"のない自己保全型方針に基づいて金融機関から借りたお金を今後返せないと判断され、不良債権者が多発するのは必定だ。

 政府のいうことを素直に聞き入れた飲食業や宿泊業など"正直者が馬鹿を見る"ことがあってはならない。彼らはこの国の財産であり、実際には敗者ではない!敗者復活戦の戦略と知恵が必要だ。しかし、"十把一絡げ"で返済不能の烙印を押され、金融機関のブラックリストに登録されてしまうであろう。各々の金融機関の規則に従い、世の中から抹殺されるようなものだ。理由の如何を問わず、コロナに関係なく実行される。

 これを恐れるために人々は"借入"をしようとせず、また銀行も貸出を渋るのである。政府のいう"返済期日の延長"などは、ほとんど役に立っていない。返済に関する規則を別の施策によって速やかに改定すべきである。

 安倍前政権および菅政権は、政治を官僚主導から内閣主導に戻したと自負している。一方では、菅首相を含めた現政権では、忖度ばかりの"金魚の糞政治家"とその官僚組織が、堕ちた政治行政の有り様を晒し続けている。今のままでは、この国は間違いなく衰退の一途をたどるだろう。

 解決策は、政府の行政機関から始め、あらゆる組織内の人事評価制度を改めて加点主義の制度へと切り替えることだ。この制度変更が民間企業にも波及し、それぞれの組織が人の良い所を見つけ、生かす評価制度の構築につながるものと確信する。

 このことにより、多くの人々が今までよりも楽に生きて行けるようになるはずだ。教育機関においても同様に加点主義の人事評価制度と敗者復活制度を導入すれば、すべての先生たちがストレスなく生き生きと子ども達に接して指導できるようになるだろう。もっとも、何事もゆるくしろと言っている訳ではない、人の一度や二度の失敗を責めることなく、良い所を伸ばしていくことが肝要だと言っているのだ。

我が国の民間給与水準は先進国では最悪

 さらに、国民のための"公僕"であるべき公務員(598万円、総務省2019年調査)と民間との給与(436万円、国税庁2019年調査)の差は年間約160万円となっている。政治はこの不公平さを速やかに正すべきだ。民間についていえば、年間所得200万円以下の国民が就業人口の約20%にものぼっている。こんな環境では、コロナ収束後に消費が伸びることは見込めず、GDPは減少することが予想される。

 NHK等の特殊法人を含め、国民が納める税収で食べている人が、税を納めている立場の人よりも、高額な所得を得るのでは辻褄が合わない。各種法人税を下げて、投資を促し、民間の平均所得を速やかに上げるべきで、政治には、公務員給与はそれが実行され成果をもたらすまで凍結するくらいの戦略と実行力が求められる。民間所得が増えない国に未来はない。この所得格差が国民の政治への信頼性を失わせ、国民と政府との間に大きな乖離を招いている。

 政治には、子どもも大人も、男も女も、伸び伸びと公平な条件の下で育つよう環境を整備することが求められる。公平のなかの不公平は止むを得ないとしても、首相および政権に「本音がいえない」「反論ができない」現政権はまったくもって論外だ。何事にも遅く決断ができない。これでは世界から見て、我が国の国民レベルも同様に低いものと勘違いされてしまう。先ずは金融機関と現政権の足下の組織から、速やかに人事評価制度を改めることを始めるべきだ。

 何事にもリスクを恐れない、胆力あるリーダーを育てるには、失敗を責めず、敗者復活戦を導入し、懐を深くし、人の長点を伸ばすことに重きをおくことだ。現在の減点主義は、組織内の自己保全ばかりを招き、人の胆力は育たない。そんな国に未来はない。

 "わんぱくでもいい、たくましく育ってほしい"と我が子に思いを馳せた親心を映し出した昔のある有名なテレビコマーシャルが今となっては懐かしい。失敗も含めた経験をさせることこそが人を育てる要となる。

(了)

【青木 義彦】

(前)

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