2022年05月17日( 火 )
by データ・マックス

【コロナ禍で明暗分かれるラーメン業界(1)】アフターコロナをどう進む 時代に合わせた舵取りで黒字化へ

(株)力の源ホールディングス

 変異株の流入により、予測が一層困難となった新型コロナウイルス感染拡大の波。全国の飲食店は時短営業を余儀なくされ、2020年度の全国飲食店倒産は715件。過去3番目に高い水準にとどまっているが、今後さらに増加する可能性は十分にある。福岡県民にとってなじみ深く、国内にとどまらず世界で活躍するラーメンチェーン店「一風堂」を運営する(株)力の源ホールディングスがコロナ禍とどう対峙しているのかを分析する。

全国展開する博多ラーメンの先駆け的存在

博多 一風堂 大名本店 (株)力の源ホールディングスは創業者である代表取締役社長・河原成美氏が1985年10月、福岡市中央区大名に「博多 一風堂」をオープンさせたことに始まる。BGMにジャズが流れる、シックでおしゃれな雰囲気が女性客を呼び込み、今日に至るまで支持され続けてきた。

 94年3月、関東初進出となる「一風堂 新横浜ラーメン博物館店」を出店。ここでの爆発的な人気により、95年4月に東京第1号店となる恵比寿店がオープンした。2008年3月には米国ニューヨークにも出店し、海外進出をはたした。

 14年1月、「力の源カンパニー」から「力の源ホールディングス(以下、力の源HD)」へ商号変更。同社を親会社とした持株会社制へと移行した。17年3月に東証マザーズに上場し、18年3月には東証一部に市場変更している。20年3月期には過去最高の291億695万円の売上高を計上した。

コロナ禍の影響を避けきれず

 ところが、20年2月ごろから顕著になった新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、上り調子だった流れは変貌していく。2月から国内店舗で営業時間短縮や休業を行い始め、海外店舗も各国政府の指示や情勢により、休業と時短営業を行ってきた。第1四半期にあたる4~6月の連結売上高が前年同期の46.3%にとどまり、以降も49.4%(7~9月)、65.7%(10~12月)と回復しきれないままだ。

 しかし、販管費の削減や計画的な店舗閉店などによる固定費削減、またECサイトの立ち上げなど、既存システムの“断捨離”と新たな販路の拡大を推進したことが奏功し、10~12月は国内店舗5,200万円、海外店舗1,200万円の営業黒字化を達成した。それでも上半期のマイナスをカバーしきれず、21年3月期売上高は前期比43.2%減の165億3,931万円、当期損益は23億9,296万円の赤字となった。

(株)力の源ホールディングス 業績

コロナ禍が与えたダメージへの対処

 しかし、注目すべきは、コロナ禍以前から販管費の大幅削減に取り組んでいたということである。近年、国内店舗事業における人件費・物流費の高騰が続き、同社では19年3月から販管費の削減に取り組み始めた。商物流改革やPOSシステムの変更、DX推進などを現在も継続しており、19年3月期に約187億円だった販管費を21年3月期には約124億円にまで抑えることができた。

 売上高が前期比の半分程度に落ち込んだなかでも営業黒字化を達成することができたのは、かねてより行ってきた業務効率化のおかげである。このように周到に進めてきた取り組みさえも、あっさりと飲み込んでしまうコロナ禍の影響力はやはりすさまじい。しかし、コロナ禍が収束すれば、力強さを発揮する可能性は大いにある。

 売上高の減少は経営の安全性にも影響をおよぼす。売上減少に起因する当期赤字の計上により、純資産が38億1,316万円(20年3月期)から13億1,257万円(21年3月期)へと減少した結果、自己資本比率が24.8%から8.4%に低下。これを受けて今年5月14日、力の源HDが第三者割当によって増資し、(株)麻生から約16億円を調達したと発表した。

 コロナ禍という未曽有の事態は右肩上がりの業績だった同社ですら、臨時休業などによる損失17億2,800万円、減損損失3億5,500万円などと、合計約24億円の特別損失を発生させ、短期借入金25億円の資金調達を余儀なくさせるものだった。

絶えず変容する時代に合わせた戦略

 コロナ禍が訪れる前の19年12月、力の源HDの株価は850~900円台で大きな変動もなく動いていた。しかし、年が明けると事態は一変し、急降下。20年4月6日には508円にまで下落した。以降は緊急事態宣言の発出などに影響されながら変動し、21年6月現在は600円前後に落ち着いている。

 同社は以前から都心部を中心に積極的に出店してきたものの、コロナ禍における外出自粛やリモートワークに代表される行動変容により、人の流れが変化。これらに鑑み、出店戦略を郊外やロードサイドへと切り替えた。今年に入ってから武蔵小山など2店舗をオープンし、今後九州にもロードサイド店を出店する予定。積極出店というビジネスモデルはコロナ禍でも変わらないようだ。

 コロナ禍という誰も予想できなかった事態が起きながらも一度は黒字化を達成し、同社のもつ経営力の高さを見せつけた。また、ブランド力があり、熱心なファンも多い。DX推進など経営改革を完成させることができれば、アフターコロナの世界でさらに強い体質の企業へと成長していくだろう。コロナ禍は大変だが、次の1年を大きく羽ばたくために新しい成長戦略をつくり上げられるかが問われている。

【杉町 彩紗】


<COMPANY INFORMATION>
代 表:河原 成美
所在地:福岡市中央区大名1-13-14
設 立:1986年10月
資本金:13億831万円
売上高:(21/3連結)165億3,931万円

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