2024年04月20日( 土 )

社長請負・玉塚元一氏がロッテHD社長に~骨肉の争いの真っただ中に飛び込んで大丈夫か!?(前)

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「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングやローソンの社長を務めた玉塚元一氏(59)は、6月にロッテホールディングス(HD)の社長に就任した。菓子業界3位のロッテをはじめ、ファストフードのロッテリア、プロ野球球団の千葉ロッテマリーンズなどを抱えるロッテHDの「顏」となる。ロッテはお家騒動の渦中にある。創業家で会長の重光昭夫氏は、兄で元副会長の重光宏之氏との間で経営権をめぐって係争中だ。玉塚氏は「火中の栗を拾う」ことにならないだろうか。

ロッテ創業家の日韓にまたがるお家騒動

 韓国と日本を中心に売上高8兆円の巨大財閥ロッテグループでは、2020年1月に98歳で死去した重光武雄(辛格浩=シン・ギョクホ)氏の次男・重光昭夫(辛東彬=シン・ドンピン)氏と長男・重光宏之(辛東主=シン・ドンジュ)氏が日本法人の経営権をめぐって、激しく対立してきた。

 昨年7月1日、日本の(株)ロッテホールディングス(HD)で11年ぶりの社長交代があった。住友銀行OBの佃孝之社長は取締役特別常任顧問へと退いた。お役御免でお払い箱だ。昭夫氏は3カ月前、副会長職から長年空席だった会長の座に納まったばかり。それに続く社長兼務は、日韓にまたがる巨大財閥を統率するトップの座に就いたことを意味した。

 昭夫氏は19年10月、韓国のパク・クネ前大統領への贈賄罪に問われ、懲役2年6カ月、執行猶予4年の有罪判決が確定した。刑務所からの遠隔経営も珍しくない韓国では、有罪判決のトップの居座りにさしたる社会的批判は起こらない。だが、日本は違う。

 長男の宏之氏が巻き返しに出る。14年暮れ、昭夫氏は宏之氏を追放、以来、骨肉の争いが続く。長男の宏之氏が日本、次男の昭夫氏が韓国の事業を任されていたが、韓国と日本の一体経営を目指して、昭夫氏が宏之氏を締め出した。

 ロッテHDは宏之氏の本拠地だった。宏之氏は資産管理会社「光潤社」の株式50.0%を保有。それを通じてロッテHD株の31.5%を押さえる。個人名義(1.8%)も加えると、株主総会の重要議案に対する拒否権を事実上もつ。

 昭夫氏はロッテHDの株式を4.5%しかもっていないが、「従業員持ち株会」(出資比率31.1%)、「役員持ち株会」(同6.7%)、「関連会社3社」(同15.6%)などを実質的に傘下に置いている。

 昭夫氏と宏之氏の勝敗のカギを握るのは「従業員持ち株会」だが、これまでの宏之氏のあきれた言動で社員の信頼を失った。宏之氏は今年の株主総会でも、昭夫氏解任の株主提案を提出している。

 宏之氏が立ち上げた「ロッテの正常化を求める会」は、昭夫氏の解任を求める理由に、「2,000億円規模の特別損失が発生し、社員たちの努力でコツコツと積み上げた利益が消し飛ぶようなことが繰り返された」という経営悪化を挙げる。

 ロッテHDは未上場のため財務諸表を公開していないが、経営は厳しい。菓子市場は過去最大の落ち込みとなった。なかでもロッテが主力としているチューインガムは、マスク着用に合わないため激減している。

 昭夫氏が株主総会で、経営再建のエースとして社長に招聘したのが、玉塚元一氏である。骨肉の争いの渦中で、ロッテHDの経営を再建させることができるか。「社長請負業」の手腕が問われる。

(つづく)
【森村 和男】

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