2024年04月28日( 日 )

【スクープ第2弾/Kの事件簿】発電機協会詐欺事件にも「K」の影 Kと竹本直一・前大臣を繋ぐ郷鉄工所の残党(後)

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 前回報じた、三原朝彦衆院議員の元顧問「K」氏。Kの名前が登場するところ、なにかしらトラブルが発生する“令和の怪人”。「Kの事件簿」にはまだ続きがある。

参考リンク:(前編)

岡山でも発電機をめぐるトラブル~「いまだけ」「あなただけ」の言葉にうまく騙され

 2017年8月、三原朝彦衆院議員の顧問(当時)だった「K」が、岡山の会社経営者「O」氏にもちかけた非常用ガスエンジン発電機に関する商談。Kが販売代理店を募集しているという触れ込みのガスエンジン発電機には、以下のようなおいしい条件がぶらさがっていた。

 (1) この発電機は国土交通省の規格に「唯一」合致している
 (2) 全国の交差点にある信号機の災害時非常用電源としてこの発電機が設置される
 (3) 我々(Kや石川容疑者ら)はガスエンジン発電機協会の会員で、同協会から発電機の独占的製造販売許諾を受け、販売代理店の募集を行う権限を与えられている
 (4) 国交省や警察庁が災害用の非常電源を導入する際にはこの発電機の仕様が指定となり、入札業者から各都道府県の代理店へ発注される
 (5) 販売代理店契約を締結すると岡山県内の独占販売権を取得できる。国交省や警察庁などから、次期予算で多くの発注がある予定だ

左:ガスエンジン発電機の販売権を持っていると主張した「K」氏
右:詐欺容疑で逮捕された、石川歩容疑者(2017年撮影)

 岡山県内の信号機の数は3,437機(2019年末時点)。Kの話では、発電機は1台200万円弱でOに卸し、販売する際に上乗せするマージンは自由に決めていいとされていた。つまり、1台300万円で県内信号機のすべてに取り付けられたとすれば単純計算で売上は約103億円、約34億円は丸儲けという計算になる。Kの繰り広げる営業トークの内容はさらに夢の膨らむもので、いわく「国交省が管轄する河川の監視用カメラにも設置が義務づけられる」「携帯電話の基地局も当然そうなる」等々――事実だとすればリスクなしで巨額のリターンが見込める、大きな旨味のあるビジネスに思えた。

O氏がガスエンジン発電機事業について説明を受けた際に、石川容疑者とともに同席したK(東京都千代田区で)

 O氏は、信頼する知人の紹介だったこともあって半信半疑ながらも東京まで出向き、Kの息子が事務局長を務める公益財団法人が入るビルに招かれたうえで石川容疑者に引き合わされた。そこでは、議員連盟「ガスエンジン発電機の活用を促進する議員連盟」の設立総会資料と題された国交省の名前が入ったプレゼン資料や内閣官房の名が付された「国土強靭化計画」資料など、いかに国が事業を後押ししているかを強調する資料を前に、逮捕された石川容疑者も含むKらがO氏に対して強く販売代理店契約の締結を求めた。

 結果的にO氏は、「岡山県内から数社引き合いがきているが、O氏に決めた」というKの言葉に押し切られたかたちで契約金のうち1,000万円を支払ってしまう。さらに後日、Kらから事業資料の提出がなかったためにO氏は解約を申し出たものの、Kから「すでに自分が残金を建て替えた」「特別に半額の2,700万円を支払えばよいことになった」などと言葉たくみに言いくるめられ、Kに1,700万円を送金。当然、発電機事業はその後いっさい進展しなかったため、O氏は支払った2,700万円の返還を求めるとともにKを刑事告訴する準備を進めている。

ガスエンジン発電機協会とつながる「議連」の存在~二階幹事長の名前も

 O氏がKの言葉を「うさんくさい」と思いながらも信用してしまった最大の要因は、ガスエンジン発電機協会の名誉会長に自民党の竹本直一・前IT科学技術担当相(80)=衆院大阪15区=が就任していたことと、「ガスエンジン発電機の活用を促進する議員連盟」の存在だった。

 議連には二階派で元官房長官の河村健夫最高顧問のほか三原朝彦衆院議員も名を連ねており、Kが三原氏の顧問を務めていることが大きな説得力をもったという。「国土強靭化計画は二階幹事長の肝煎りなので、予算付の心配はないという説明でした」(O氏談)。

 竹本前大臣と逮捕された石川歩容疑者、そして詐欺の舞台となったガスエンジン発電機協会が密接な関係にあった「状況証拠」は簡単に見つけることができる。たとえば、自民党系の同和団体である「自由同和会」の東京都本部が運営するHPでは、同本部が平成29(2017)年に開催した賀詞交歓会の報告記事が掲載されている。この年の賀詞交歓会は「全国ガスエンジン発電機協会」()との共催で行われており、来賓と祝辞の筆頭に掲載されているのが竹本氏だった。

左:ガスエンジン発電機協会の名誉会長、竹本直一・前IT科学技術担当相(衆院大阪15区)
右:自由同和会東京都本部が2017年に開催した賀詞交歓会の報告記事より。
秘書の五味洋司氏は、当時ガスエンジン発電機協会の理事を務めていた(赤枠は編集部)

 このとき竹本事務所からは竹本氏を筆頭に秘書ら5人が出席しているが、そのなかの1人、秘書の「五味洋司」氏がガスエンジン発電機協会と竹本氏をつなぐキーパーソンだ。この人物、じつはガスエンジン発電機協会の理事を務めていた人物なのだ。同様の賀詞交歓会は令和2(2020)年にも開催され、そのときも竹本氏は五味秘書を含めた3人で出席していた(竹本事務所によると、この当時は「秘書」を辞めていたという)。この五味氏はいま竹本事務所を離れ、三重県四日市市で警備会社の代表を務めている。

 竹本事務所は取材に対し、「ガスエンジン発電機協会の名誉会長に就任したことを確認できるような書類などは確認できなかった」とし、同協会の代表理事・石川容疑者が逮捕されたことについては、「事実関係が確認できないので、現時点ではコメントできない」と回答した。石川容疑者と付き合いがあったのかについては、「過去に複数人との面談に同席していた可能性はあるが、面識・付き合いはない」とし、Kについては「存じ上げない」と回答している。

(註)(一社)ガスエンジン発電機協会の前身。石川容疑者が代表理事を務めていた。 ^

【特別取材班】

▼参考リンク
【スクープ】豊前市3セクが詐欺疑惑の取締役を解任 三原朝彦衆院議員の元「顧問」
【スクープ第2弾/Kの事件簿】発電機協会詐欺事件にも「K」の影 Kと竹本直一・前大臣を繋ぐ郷鉄工所の残党(前)

Kがガスエンジン発電機の購入を持ち掛けた際に用いた資料。
石川容疑者の名前とともに竹本氏ら国会議員の名前がある(赤枠は編集部)
ガスエンジン発電機協会の法人登記。逮捕された石川歩容疑者の名前とともに、
竹本衆院議員の秘書、五味洋司氏の名前もある(赤枠は編集部)
(前)

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