2024年04月20日( 土 )

工業都市からスーパーシティへ、九州2位・北九州市の栄枯盛衰(4)

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市の中心地・小倉北区、ベッドタウン・小倉南区

 前述の通り五市が合併して誕生した北九州市は、規模は異なるものの旧五市それぞれに中心市街地をもち、合併から半世紀以上経って今なお、それぞれの地域性が大きく異なるという特徴をもっている。ここからは、エリアごとの地域特性を見ていこう。

北九州市民球場
北九州市民球場

 名実ともに北九州市の政治・経済・文化の中心地といえるのが、小倉北区だ。JR、新幹線、モノレールなどが乗り入れるターミナル駅である小倉駅のほか、小倉城に隣接する北九州市役所およびその南側の小倉北区役所などの行政関連施設などを中心に、主に紫川に沿うかたちで中心市街地が形成。リバーウォーク北九州やチャチャタウン小倉、セントシティ(旧・小倉駅前アイム)などの大型商業施設から、「北九州の台所」である旦過市場や、魚町銀天街をはじめとする各商店街などの商業機能が集積している。また、小倉駅北側の臨海部には西日本総合展示場や北九州国際会議場などのMICE・コンベンション施設や、サブカルの聖地・あるあるCity、サッカーJ2チームのギラヴァンツ北九州の本拠地・ミクニワールドスタジアム北九州などの各種施設が立地。区中央部の三萩野エリアには、北九州メディアドームや北九州市民球場などのスポーツ・娯楽関連施設が集積するほか、区西部には到津の森公園などもある。

 北九州市内における花形エリアだけあって、区内ではマンションを中心とした開発が多く進んでいる。代表的なものとしては、第一交通産業(株)が進める「グランドパレス小倉小文字通り」(総戸数51戸、22年11月末竣工予定)や「(仮称)グランドパレス下到津」(総戸数99戸、竣工未定)のほか、大手町NT共同企業体(東宝住宅(株)・(株)なかやしき)による「ライブスクエア大手町」(総戸数131戸、20年10月竣工)、東宝ホーム(株)による「シティガーデンBONJONOテラス」(総戸数71戸、20年11月竣工)などだ。

城野駅北地区
城野駅北地区

 市域の約35%を占めるなど、市内で最も広い面積をもつ小倉南区は、区内をJR日豊本線や日田彦山線、モノレールなどが通るほか、九州自動車道や東九州自動車道、北九州都市高速、国道10号、国道322号などの大動脈も走っており、その交通利便性に優れた立地から、主に小倉の中心市街地に対するベッドタウンとしての発展を遂げてきたエリアだ。区北部の城野や下曽根の周辺を中心に住宅街が広がる一方で、区南部の平尾台や、区東部の曽根干潟、日本有数の竹林面積を誇る区西部の合馬地区など、自然豊かな地域も数多く残されている。なお城野では、城野駅の北側にあたる小倉北区東城野町で、陸上自衛隊・城野分屯地跡地を再開発したゼロ・カーボン先進街区のまちづくり「みんなの未来区 BONJONO(ボン・ジョーノ)」が進む一方で、「城野駅南地区都市再生整備計画」として駅南側の小倉南区エリアでも都市開発が進行。一帯が魅力あるエリアへと生まれ変わりつつある。ほかに区内では、(株)タイヘイの「サンライフ企救丘駅南」(総戸数53戸、20年5月竣工)、東宝住宅の「グランドキャッスル葛原グランツ」(総戸数39戸、21年6月下旬竣工予定)、南協商事(株)の「アメニティ葉山ラミアカーサ」(総戸数28戸、22年7月竣工予定)などのマンション開発が進んでいる。

 今回、新たなプロ野球団として「福岡北九州フェニックス」が設立されることは、北九州市の地域社会および地域経済の活性化において、良い効果をもたらしてくれるのではないかと、大いに期待しています。やはり、こうしたプロスポーツチームが地域で活動してくれることで、地域に新たなコミュニティができ、そのコミュニティを軸に新たなビジネスの展開も期待できますし、人と人とがつながることで、さまざまな相乗効果も生まれてくるでしょう。また、北九州という地域に対する外からの関心が高まるとともに、市民の地域への愛着やシビックプライドの醸成にもつながってくると思います。

 ただ、参入予定の九州アジアリーグは独立リーグですから、観客数はおそらく当初は1試合500~1,000人程度で、経済効果は限定的かもしれません。また、堀江貴文氏は将来的にスタジアムで多様な楽しみ方ができる「ボールパーク」づくりを指向し、野球場の指定管理者への関心も示していますが、本拠地候補とされる北九州市民球場については、現状では一利用者に止まり、主体的な管理運営は難しいでしょう。北九州市内には他にも野球場がありますが、野球をコンテンツとして提供しつつ、飲食や物販、各種サービスを展開し、野球以外の楽しみ方も可能な仕組みをどうつくり出していけるか――。それによって、ビジネス展開や地域への効果も変わってくると思います。

南教授 やはりスポーツが地域社会に与える影響というものは非常に大きいですし、新たなプロ野球団に対する市民の関心も高いです。全国に先駆けて高齢化が進んでいる北九州市ですが、若者も含めた皆が楽しめるコンテンツが増えることで、新たな活気が生まれてくる可能性は十分あります。福岡北九州フェニックスにはこれから10年先、20年先もずっと、北九州市に活気を与えてくれる存在となってくれることを期待しています。

北九州市立大学 地域戦略研究所 副所長/教授 南 博 氏

(つづく)

【坂田 憲治】

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