2024年03月29日( 金 )

スペースワールドの閉園と跡地利用(後)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

運輸評論家 堀内 重人 氏

スペースワールド イメージ 「スペースワールド」の最終日は華やかであった。2017年12月31日には、閉園を惜しむ多くのファンが県内外から駆け付けた。「スペースワールド」は「宇宙」「宇宙開発」をテーマとしたテーマパークであったことから、アトラクションもそれに関連するものが多かった。その一方で、着ぐるみを着たキャラクターが来場者を出迎えて歓迎するなど、東京ディズニーランドのような雰囲気もあった。

 閉園を惜しんだファンは、アトラクションやキャラクターとの記念撮影を楽しんだという。そして大晦日の夜は、新年のカウントダウンの花火が打ち上げられ、有終の美を飾るかたちで営業を終了し、2018年1月1日の午前2時に閉園した。

 そうなると「スペースワールド」の跡地が課題となる。地主の新日鐵住金は、イオンモールに優先交渉権を与えた。イオンモールは近隣にイオンモール八幡東店があることから、同じような形態の商用施設では共食いになってしまう危険性がある。

 そこで18年2月19日に、同跡地に新業態の商業施設を21年に開業することを明らかにした。20年2月には、「地域創業型商業施設 THE OUTLETS」を22年春に開業させる予定である旨が発表された。既存のイオンモール八幡東店とアウトレットとでは商業施設としての形態が異なるだけでなく、顧客も異なることから、両者をうまく組み合わせれば相乗効果が図れる。

 「スペースワールド」は閉園したが、運営会社は閉園後も存続している。本社の所在地を姫路セントラルパークに移転させ、西日本地域にある加森観光グループのレジャー施設の運営を継続している。それ以外に、北九州市内で新事業を展開することも検討している。

 園内の施設や遊具の一部は、加森観光グループが関係する施設などへ移設される。人気があった大観覧車“スペースアイ”はカンボジアの観光施設へ売却された。

 土地所有者である新日鐵住金との賃貸契約は18年6月末が期限であった。売却先などが決まらなかった遊具は、同年7月以降は同社の管理下に入る。

 跡地の利活用を行うイオンモールは、遊具や施設があれば商業施設の整備に支障を来すため、更地による引き渡しを求めた。そうなると、売却先などが決まらない施設や遊具などは解体して撤去されるかたちでの処分となる。シンボルでもあったスペースシャトルの大きな模型も解体されて撤去された。

 「スペースワールド」で展示されていた「月の石」は、いったんはNASAに返還された。だが、「スペースワールド」は「宇宙」「宇宙開発」をテーマに掲げたテーマパークであったことから、北九州市はNASAと交渉を続けた。その結果、北九州市がNASAから借り受けることになった。18年12月22日からは、北九州市いのちのたび博物館で展示されている。

 「スペースワールド」は、少子化の進展や不況、レジャーの多様化などの要因もあったが、地権者である新日鐵住金と加森観光との賃貸借契約の更新交渉が不調に終わったことが原因で、閉園せざるを得なかった一面もある。

 「宇宙」「宇宙開発」をメインテーマに掲げたテーマパークであり、「月の石」が保存され、学校団体にも利用されるなど、博物館のような性格が強かった。そうなると筆者は、遊園地に相当する部分は閉園したとしても、科学教育の一端を担う部分には「博物館法」を適用させて、「博物館」として存続させる方法を模索すべきであったと考えている。

 「スペースワールド」には独自の明確なテーマ性や教育機関のような役割もあり、北九州市が鉄冷えで高度経済成長期のような勢いがないなか、存続させておれば、修学旅行を誘致して北九州市を活性化させる方法が模索できただけに、残念でならない思いがある。

 「月の石」がNASAから借り受けるかたちで北九州市の博物館に保存されていることが、せめてもの救いである。今後は、教育機関のような役割を担うテーマパークが閉園の危機にある場合は、行政は「博物館法」を適用して、“公”が役割を継承するという姿勢を強く打ち出してほしいと願っている。

(了)

(前)

関連記事