2022年05月24日( 火 )
by データ・マックス

新生銀行はどうなる?SBIは買収可能か?~米ファンドに食い物にされた20年(前)

 (株)新生銀行とネット金融大手SBIホールディングス(HD)(株)の攻防が、連日メディアの紙面に躍る。SBIが新生銀にTOB(株式公開買い付け)を仕掛けると、新生銀は買収防衛策の導入を決めた。銀行界初の敵対的TOBに発展した。混迷が続く新生銀の足跡を振り返る。

筆頭株主JCフラワーズの新生銀株を売却

銀行 イメージ 新生銀は2019年8月8日、筆頭株主の米ファンド・JCフラワーズが保有する株の大半を売却すると発表した。JCフラワーズは経営破綻した旧(株)日本長期信用銀行の受け皿となり、約20年にわたり新生銀の株式を保有、実質的に経営を専横してきた。

 JCフラワーズは米投資家のクリストファー・フラワーズ氏が運営する投資ファンド。フラワーズ氏本人や関連ファンドなどの保有分を含めて、19年3月末時点で新生銀の発行済株式の21.37%を保有している。

 売り出し価格は1株1,387円。売却総額は約630億円。代わって、預金保険機構と(株)整理回収機構を合わせて18.11%の株を持つ政府が筆頭株主となった。

 新生銀は大手銀行のなかで、公的資金を返済できていない唯一の銀行だ。金融庁は新生銀をカードに、地銀再編のシナリオを描く。

 フラワーズ氏にとっては2度、株式を売るタイミングがあった。1度目は、新生銀と(株)あおぞら銀行(旧・(株)日本債券信用銀行)の合併を金融庁主導で進めたとき。10年10月に合併を発表したが、あおぞら銀が嫌がって頓挫した。その後、他行が公的資金を返済するなか、新生銀は返せなかった。

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 2度目のタイミングはここ2、3年。このころから、フラワーズ氏は新生銀から本気で足抜けをしたがっていた。ファンドなので投資家の意向もあり、新生銀から離れて、資金をほかに振り向けたがっていた。

 そこで、中国の複合保険グループ・安邦保険集団とも交渉を進めたが、価格の折り合いがつかなかった。SBIにも売却をもちかけていた。20年というタイミングで縁を切った。フラワーズ氏が手を引いたことが引き金となり、SBIによる買収劇の幕が上がった。

第4のメガバンク構想の中核へ、新生銀にTOB提案

 SBIの北尾吉孝社長は直ちに行動を起こした。19年9月、新生銀を「SBIグループの中核的企業に位置付けるため」として、TOBと株式取得を提案した。

 北尾社長は「第4のメガバンク」構想を掲げ、地銀との連携を矢継ぎ早に進めてきた。(株)島根銀行や(株)福島銀行、(株)仙台銀行など8地銀と資本・業務提携を結んでいる。第4のメガバンク構想の真ん中に新生銀行を据えて、周辺に出資した地銀を置き、さらに出資がなくてもSBIの金融サービスを利用する地域金融機関を増やして、総合金融グループを目指す。新生銀は「第4のメガバンク構想」に欠かせない最重要のパーツだ。

 新生銀は賛同しなかった。両社は、地方金融機関の支援を目的に共同設立した新会社、地方創生パートナーズ(株)に出資する関係にとどまった。

 状況が変化したのは、今年1月に新生銀が(株)SBI証券のライバルであるマネックス証券(株)と業務提携したことによる。話し合いだけでは新生銀を取り込むのは不可能と判断。以降、SBIは2カ月間で新生銀株を約7%買い増して保有比率を高めた。

 新生銀の6月23日の株主総会で出た会社提案の取締役人事案に反対票を投じた。工藤英之社長CEO(最高経営責任者)の賛成率76.643%をはじめ、全取締役の賛成率は70%台にとどまった。「新生銀の工藤社長とSBIの北尾社長の対立」が決定的になった。

(つづく)

【森村 和男】

(中)

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