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2021年10月05日 15:00

止まらないウォン安で忍び寄る韓国経済危機(後)

日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

ウォン安は韓国経済に危機をもたらす

 ウォン安になると、韓国の金融当局はウォン安阻止のため、保有しているドルを売ることによって為替介入をする。しかし、為替介入は韓国のドル保有高を減らすことにつながる。

 韓国のドル保有額が減少すると、いざという時に政府が適切な手を打つことができなくなり、危機に瀕する可能性が高くなる。また韓国の借金はドル建てが多いので、ドル高になってくると、借金返済の負担が重くなり、それに伴い利子の負担も増える。

 韓国は1997年のアジア通貨危機の際にそれを経験しており、そのような事態だけは避けたいという思いがある。しかし、11月から米国でテーパリングが実施されると、ドル高がさらに進み、一層ウォン安がもたらされると、韓国経済に大きな危機が訪れる可能性がある。韓国株の売り越し、ウォン安の進行、中国の不動産バブル崩壊、米国の利上げなど、韓国経済に不利な条件はいくつも揃っている。

ウォン安の原因とは

 現在進んでいるウォン安の原因を取り上げてみよう。まず、米国の量的緩和の縮小(テーパリング)であろう。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は、年内にも量的緩和の縮小に着手する方針を打ち出しており、海外に出回っていた投機資金が米国に回帰することが予想されている。

 米連邦準備制度理事会が早ければ今年11月にテーパリングを実施することが予想され、米国債10年物の金利が年1.516%まで跳ね上がった。米連邦準備制度理事会(FRB)が債権の購入額を減らすテーパリングを実施すると、市場の流動性は減少する。ドルの供給量が減少すると、国債を始め、市場金利は上がることになる。米国の金利が上がると、ドル高が進むことになる。ドル高になると、逆にウォンなど新興国の通貨は安くなり、ウォン安が進行する。それに、中国不動産開発の最大手である恒大グループの流動性危機が市場に不安感を与え、ドル高のもう1つの要因となっている。

 恒大グループの破産説は世界経済の主な懸念材料となっている。恒大グループは中国不動産業界で資産規模では1位、世界500大企業のなかでは122位にランクされている企業である。恒大グループが破産すると、他国に影響が出るのは必至なので、動向に注目が集まっている。

 恒大グループの破産説はウォン安の進行だけでなく、世界の株式市場にも影響を与えている。 恒大グループの破産をきっかけに、中国不動産バブルが崩壊するのではないかという警戒心が高まっており、恒大グループの破産が連鎖反応をおこすことが最も危惧されている。

 恒大グループの危機は昨年中国政府が不動産業界に各種規制を導入することによって始まった。同社は政府との政経癒着で、金融機関から資金を借り、それで事業を拡大させてきた。しかし、中国政府の規制で拡大政策に綻びが出たわけだ。恒大グループの負債総額は33兆円という莫大な金額で、同社の破産は、中国だけでなく、同社に資金を投資した欧米の金融機関にも影響が出てくるのは間違いない。1年以内の支払い債務だけでも16兆円に上るというので、同社の対応と中国政府の対応に世界が注目している。

 このようにいくつかの要因が重なり、韓国ではウォン安が急激に進んでいる。問題は、テーパリングはまだ始まっていないので、テーパリングが進むと、ウォン安がもっと進むのではないかということだ。さらに、韓国経済に危機が訪れることを憂慮するもう1つの理由は韓国の家計負債である。韓国の6月末時点の家計債務は約1,805兆ウォン(約170兆円)で過去最高を更新した。投機ブームとコロナ禍で家計債務が膨張しており、ウォン安を阻止するために韓国銀行が利上げすると、家計の負担が重くなり、それが経済危機の引き金を引く要因になるかもしれない。

(了)

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