2022年01月24日( 月 )
by データ・マックス

百貨店以外すべて改善 20年度損益分岐点25社調査(前)

 巣ごもり消費で百貨店を除く全社が改善―データ・マックスが主要流通企業25社の前期の損益分岐点比率を調べたところ、百貨店以外の21社がすべて前年度から比率を切り下げた。コロナ下で売上高が増える一方、固定費の伸びが低水準だったことによる。逆風下の百貨店4社は100%を超えた。今期は巣ごもりの反動で売上が苦戦しているのに対し、最低賃金の引き上げなどで固定費が増加傾向にある。固定費削減に向けた取り組みが欠かせない。

不況抵抗力示す

巣ごもり収束で環境一変
巣ごもり収束で環境一変

 損益分岐点売上高は売上と費用の一致する金額で、売上がこれを超えると利益が出て、届かないと赤字になる。損益分岐点比率は損益分岐点売上高を売上(営業収益)で割ったもの。100%が収支トントンで、95%だと売上が5%以上減ると赤字になり、100%を超えるのは赤字であることを意味する。

 損益分岐点は企業の不況抵抗力を示すバロメータでもある。比率70%の企業は売上が3割落ち込んでもトントンで、99%だとわずかな減収で赤字に転落する。

 費用には売上の増減に応じて上下する変動費と、売上に関係なく出ていく固定費がある。前者は仕入れ原価で、後者は販管費と支払い利息。流通企業では販管費はすべて固定費と見なして差し支えない。本誌では固定費を販管費と営業外費用の合計とした。この計算方法では損益分岐点が100%を超えると経常赤字に転落する。

 費用分類で問題になるのは物流費で、固定費に計上している場合、売上が同じとすると変動費に計上している企業に比べ損益分岐点は高くなる。トライアルカンパニーは物流を子会社「ティー・エル・エス」に委託し、取扱量に応じて費用を子会社に支払っている。単体では変動費扱いだが、連結決算では固定費になる。

 自社で物流を行っているマルキョウの場合、物流費は基本的に全額固定費になる。エフコープは調達物流をコープ九州事業連合に委託し調達物流費は変動費だが、自社の職員で行っている組合員宅への仕分け・配送業務の費用は固定費になる。

 大半の食品スーパーは物流を外部委託し、委託業者に支払う費用とベンダーから徴収するセンターフィーとの差額を差益として計上しているため、物流費自体が発生しない。イオン九州はグループのイオングローバルSCMに支払う委託費用は変動費として処理し、センターフィーもSCMが受け取る。

売上増で引き下げ

 損益分岐点を下げるには売上を伸ばすのと固定費を下げる2つの方法がある。固定費の伸びを抑えながら売上を伸ばすのが理想的なかたちだ。

 前期は【表1】の25社中、百貨店を除く21社が損益分岐点比率を下げた。巣ごもり消費で売上が好調だった一方、チラシの自粛などで固定費の伸びが低水準にとどまったのが理由だ。コスモス薬品は売上が6.1%増に対し、固定費の増加率は5.7%で、損益分岐点比率を77.7%と1.3ポイント下げた。ミスターマックス・ホールディングスは増収率7.7%に対し、固定費増は1.2%とほぼ横ばいで、損益分岐点比率は83.3%と一挙に9.5ポイント低下した。ホームインプルーブメント(HI)ひろせは出店で売上を6.4%伸ばす一方、固定費の増加率を0.7%にとどめたことで、損益分岐点を84.3%と6.5ポイント改善した。

 増収効果で19年度は100%を超えていたトキハインダストリー、Aコープ九州、アレスは90%台に下がった。

【表1】主要25社の損益分岐点
【表1】主要25社の損益分岐点

イズミなど固定費削減

 売上は減ったが、固定費を削減することで損益分岐点を改善したのがイズミ、サンリブ、西鉄ストア。イズミはコロナ禍のあおりで8.7%の減収だったが、人件費を筆頭に固定費を8.2%削減し損益分岐点比率を81.2%と2.8ポイント引き下げた。大幅減収にもかかわらず12.8%もの経常増益を確保したのは損益分岐点比率が低く環境悪化への適応力が強いためだ。

 サンリブは店舗閉鎖もあって1.7%の売上減になったが、固定費を3.9%減らし損益分岐点を92.2%と6.6ポイント改善した。同様に西鉄ストアも佐賀県店舗の閉鎖で4.1%の減収を計上したが、固定費も6.4%減り損益分岐点は93.1%と3.4ポイント下がった。

 コロナ禍の影響が最も大きかった百貨店は大幅減収で損益分岐点が上昇し軒並み100%を超えた。19年度は90.8%と九州の百貨店では最も不況抵抗力の強かった博多大丸は、減収に固定費削減が追い付かず117.5%に悪化した。岩田屋三越は前期の損益計算書を開示していないが、赤字で100%を超えた。

(つづく)

【工藤 勝広】

(後)

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