2021年12月03日( 金 )
by データ・マックス

百貨店以外すべて改善 20年度損益分岐点25社調査(後)

 巣ごもり消費で百貨店を除く全社が改善―データ・マックスが主要流通企業25社の前期の損益分岐点比率を調べたところ、百貨店以外の21社がすべて前年度から比率を切り下げた。コロナ下で売上高が増える一方、固定費の伸びが低水準だったことによる。逆風下の百貨店4社は100%を超えた。今期は巣ごもりの反動で売上が苦戦しているのに対し、最低賃金の引き上げなどで固定費が増加傾向にある。固定費削減に向けた取り組みが欠かせない。

前期好調は一過性

 上場企業の平均損益分岐点はコロナ禍前で80%台後半とされた。流通企業は労働集約産業で生産性が低いため、製造業に比べ損益分岐点比率が高い。19年度は旧マックスバリュ九州を含めた26社中、70%台が3社、80%台5社、90%前半6社、同後半8社、100%超4社と、90%未満は3割にすぎなかった。

 コロナ景気で前期は25社中、70%台が6社、80%台7社、90%台前半5社、同後半3社、100%超4社と90%未満が5割を超えるまでに改善された。とはいえ、前期の好業績は一過性で、実力とは言い難い。

ダイレックス72.2%

損益分岐点が最も低いダイレックス
損益分岐点が最も低いダイレックス

 損益分岐点比率が最も低いのは昨年に続きダイレックスで、72.2%と4.9ポイント切り下げた。売上高が11.2%増だったのに比べ、固定費は21店を出店したうえで6.2%増にとどめた。固定費増に直結しない既存店売上増が5.3%だったことが大きい。

 生鮮4品はテナント委託で、スーパーと違い固定費負担がかからない。テナントから使用面積に応じて家賃を徴収し固定費軽減に充てている。売上高に占める固定費比率(販管費率)は12.52%と一般的な食品スーパーより10ポイント低い。

 2位で76.6%のハンズマンも固定費比率が24.20%とホームセンターでは低い。過去9年間出店を見送っているせいもある。前期は主に従業員の待遇改善で固定費が9.2%増えたが、増収率も9.3%で損益分岐点は1.4ポイント低下した。

 コスモス薬品とともに3位となったのはアスタラビスタの77.7%で、6.1ポイント改善した。店舗が福岡県筑後地方と佐賀県南東部に集中し販促・物流効率が高い。生鮮は青果と精肉を除きテナント委託。前期は固定費の伸びが3.8%だったのに対し売上が7.0%増えた。

 5位タイヨーは12.6%の大幅増収の一方で固定費を2.5%削減し、ダブル効果で損益分岐点は77.9%と3.0ポイント下がった。固定費減の理由は不明だが、退職者の不補充で人員が減っている。

 78.0%と6位のナフコはコロナ特需で売上が7.7%増と4期ぶりに増収に転換。一方で、店舗閉鎖で固定費を1.5%減らしたことにより損益分岐点比率を11.1ポイント切り下げた。固定費比率は26.84%と2.50ポイント低下した。

マルキョウ、大幅改善

 7位トライアルカンパニーは80.5%と表面上は8.6ポイント改善した。ただ、同社は子会社に商品を供給する卸で、増収にもかかわらず粗利益が31億円と前年度から16億円減り、一方で子会社から徴収する家賃・手数料を大幅に増やすなど、決算は恣意性が疑われ、業績を正確に反映しているとはいえない。

 スーパーセンターを運営する子会社トライアルオペレーションズは売上高3,670億円に対し変動費3,024億円、固定費606億円で、損益分岐点比率93.7%だった。トライアルグループの業績は持株会社トライアルホールディングスの連結決算でないとわからない。

 11位で84.9%のマルキョウは前年度の93.3%から大幅に切り下げた。増収率は3.6%だったが、特売や見切り処分が減り営業収益から変動費を引いた限界利益(営業総利益)が13.7%増加、限界利益率は25.21%と1.98%上昇した。一方で固定費の伸びは3.5%と増収率並みだった。

今期、固定費増目白押し

 百貨店以外では97.5%と最高だったのがイオン九州。前年の旧イオン九州から2.1ポイント改善したものの、改善幅は同業他社に比べ見劣りする。損益分岐点比率が高いのは売上に比べ固定費の負担が大きいためだ。営業収益に占める固定費比率は合併で33.63%から29.92%に低下したものの、百貨店では最高の山形屋の29.43%を上回る。

 今期は巣ごもり消費の収束で売上は苦戦している。既存店は百貨店など一部を除き前年割れが続いている。一方で、コスト増要因は目白押しだ。10月から最低賃金が全国平均で3%強改訂され、九州の流通企業もこれに準じてパート・アルバイトの時給を引き上げた。昨年自粛していたチラシやテレビCMも再開しており、固定費増になる。作業の改善や人員配置の見直しで固定費を減らし損益分岐点を引き下げることが重要になる。

【表2】損益分岐点比率ランキング
【表2】損益分岐点比率ランキング

(了)

【工藤 勝広】

(前)

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