2021年12月07日( 火 )
by データ・マックス

「家庭教師のトライ」を英ファンドのCVCが買収~1,000億円で売却、元女優・二谷友里恵社長は超セレブに(後)

 「家庭教師のトライ」を展開する(株)トライグループ(東京都千代田区、非上場)を英投資ファンドのCVCキャピタル・パートナーズが1,000億円ほどで買収を検討している。10月11日、報道各社が一斉に報じた。トライの社長は元女優の二谷友里恵さん。M&A(合併・買収)には縁がなかった芸能メディアが早速飛びついた。

東芝の買収騒動で名を馳せたCVC

投資 イメージ トライグループを買収する英投資ファンドのCVCキャピタル・パートナーズ(以下、CVC)は、(株)東芝の買収騒動で名を馳せた。

 CVCは米金融大手シティグループの流れを汲み、1981年に発足。未公開企業を主な投資先とするプライベート・エクイティ・ファンドとして世界最大級で、運用規模は約3.4兆円とされる。

 2017年5月、CVCは日本法人の会長兼共同代表に三井住友銀行の副頭取を退任した車谷暢昭氏を起用。同時に、LIXILグループの前社長・藤森義明氏も最高顧問に任命した。CVC日本法人代表の赤池敦史氏は、藤森氏が東大在学中に所属したアメリカンフットボール部「ウォリアーズ」の後輩である。アメフトの先輩・後輩のつながりだ。

 日本で投資ペースを拡大し、1,000億円以上投資する計画。日本市場に精通した首脳級人材を招き、弾みをつけたい考えだ。

 “3人衆”が動き出した直後の18年4月、車谷氏は東芝の会長兼CEOに招かれた。東芝は不正会計問題や原発事業の巨額損失などで経営危機に陥り、投資ファンドの6,000億円の巨額出資で債務超過転落を免れた。海外投資家の株主比率が7割に高まった。投資ファンドの対応は、東芝の生え抜き社長では無理。そこで、メインバンクの三井住友銀行は、投資業界に精通している車谷氏を送り込んだ。

 車谷は「プロ経営者」の異名を取る藤森氏を東芝の社外取締役に招いた。19年6月のことだ。「ものいう株主」対策であることはいうまでもない。

「ものいう株主」撃退を目的した東芝の買収は失敗に

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 東芝は4月7日、CVCから買収提案を受けたことを明らかにした。東芝を対象とした株式の公開買い付け(TOB)を7月に実施し、10月に上場廃止。企業価値を高めたうえで、3年後の再上場を目指す。買い付け価格は1株5,000円。この水準で全株を買えば、総額は2兆円を超える。

 買収提案の本当の狙いは何か。アクティビスト(ものいう株主)に追い込まれている車谷社長を救済するためにホワイトナイト(友好的買収者)を買って出て、うるさ型の株主たちに退場してもらうのが目的だ。車谷氏の古巣であるCVCによる救済大作戦である。仕掛けたのはCVCの最高顧問で、東芝の社外取締役・藤森氏とみられた。

 車谷救済大作戦はCVCによる買収劇だった。買収提案を受けた東芝では、車谷社長兼最高経営責任者(CEO)がこのCVCの出身だとして、社内や株主から批判が出て辞任に追い込まれた。取締役会議長の永山治社外取締役(中外製薬名誉会長)が車谷氏の解任を図る構えだったため、4月14日辞任した。事実上の解任である。CVC“3人衆”による「策士、策に溺れる」という買収劇だった。

 そのCVCが「家庭教師のトライ」を運営するトライグループを買収する。トライグループをAI企業に生まれ変わらせて、上場に漕ぎつけることができるか。東芝買収でミソをつけたCVCは、汚名返上できるかが問われる。

(了)

【森村 和男】

(中)

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